エピソード23(脚本)
〇ファンタジーの学園
僕が声のした方を見ると、そこには五十代ほどの男性が立っていた。
ロク「まだぜんぜん・・・・・・えーと」
男は僕の様子を見て、思いついたように口を開く。
ハルソン「あぁ、失礼、申し遅れました、ハルソン・ゼプファンと申します、アカデミーで準教授をやっております」
ロク「あぁ」
まだ話を聞けてなかったけど、聞き込みで名前があがっていた人物だ。ネリアル氏の同僚。交流はそれなりにあったという話だった。
強化魔法スペシャリスト。
強化魔法は自分以外にかけると、使い物にならないくらいの強化しかできないのに、彼はそれを物ともしない。
おかげで今の地位にいる。
逆に言えば、それしか取り柄が無いから、今の地位より上にいけない。
ハルソン「・・・・・・おしい人間を亡くした、リドル君はとても優秀で、これからの魔法技術を飛躍させる存在だったのに」
ハルソンは目頭を押さえて、苦しそうにする。身近な人が、寿命や病気以外で、突然亡くなるのは、予想以上にショックが大きい。
心の準備ができないまま、突然、そこにいつもいるはずだった人が、居なくなるのだ。当たり前の事だった。
ジョマ「えー、でも、追い越されたと聞いてますけど、本当に惜しいと思っています? 邪魔者がいなくなって、嬉しいんじゃないですか?」
笑顔でジョマが挑発的な言葉を、ハルソンに投げかける。僕は急いでジョマを咎める。
ロク「ちょ、何言ってるの! 失礼だよ!」
ジョマ「でも、妬みって怖いですよ?」
妬み。先ほど考えていた事を思い出す。
被害者が火の打ち所の無い完璧超人の場合、想定すべきことが二つある。
まずは、隠すのが上手い悪人だったかもしれないという事、あとは、妬まれていたかもしれないという事。
才能があって、性格、顔も良いとなると、人気と同じくらいに、妬みも受ける。
ハルソン「ははは」
ハルソンはジョマの言葉を受けて、力無く笑った後、少し寂しそうに言葉を続けた。
ハルソン「私の様な、強化魔法だけの男では、太刀打ちできなかったのは、確かだよ」
聞き込みでは、できる人ではないと聞いていたけど、その通りらしい。
話している感じ、何でも器用にこなす感じでもなければ、誰にでも好かれる感じでもない。
ネリアル氏に敵う部分は、強化魔法だけだったという感じだ。
ハルソン「ただ、リドル君に追い越されたのは、私だけではないよ、アカデミーで働く職員のすべての人が追い越されている」
ハルソンが言う様に、最年少で教授になった彼は、確かにすべての職員を追い越したと言える。
ジョマ「あぁ、確かにですね、じゃあハルソンさんを含め、妬みという、動機はあった訳ですね」
ジョマがやっぱり、挑発的に笑って言う。
そろそろキレられないかと、僕はヒヤヒヤしながら「失礼だから」とジョマを制した後、ハルソンの様子を伺う。