エピソード21(脚本)
〇ファンタジーの学園
思い返して見ると、なかなか濃い一日と少しだった。もう何週間か経っている気さえしている。
ロク「ふぅ」
僕は一息つく。先ほど、アカデミー内にあった焼死体を確認した後、僕とジョマは二人で周辺に聞き込みをして、情報を集めた。
事件が起こって、まだそれほど時間が経っていなかったおかげで、事件現場にいた人からも話を聞く事が出来た。
ただ、もっとも早く駆けつけたハウンドが聞き込みまでやってくれたら、もっと多くの人から話が聞けただろう。
初動が決定的に遅かった。
ジョマ「まだ聞き込みしますか?」
明らかに嫌そうな顔をして、ジョマが聞いてきた。
アカデミーの授業はすべて休講、生徒は帰されているみたいだから、もう終わりにするしかなさそう。
ロク「とりあえず、一定の情報は得られたから、終わりかな」
僕の言葉を聞いて、嫌そうな顔から、嬉しそうな顔に変わるジョマ。
慣れない事をしているせいで、疲れていたのだろう。僕も聞き込みは初めてだから、実は疲れた。
ジョマ「それにしても」
ジョマがため息まじりで、口を開く。
ジョマ「完璧超人は羨ましいですね」
ロク「あんな風に焼かれてでも?」
僕は少し茶化して問いかける。ジョマは苦笑した。
ジョマ「それは羨ましくないですけど」
被害者は、リドル・ネリアル氏。二十六歳。彼は完璧超人という言葉がふさわしい人物だった。若き天才魔法使い。
最年少でアカデミーの教授に就任したばかり。おまけに超がつくほどの好青年。
人に恨まれるような人間ではなかったらしいし、教授になってこれからという時に、自殺もありえない。
僕たちは事件現場に戻ってきて、周りを見渡す。
目撃者の証言によると、ネリアル氏が突然発火したのは、朝に出勤してきたタイミングらしい。
発火の瞬間をみんなが見ていた。そして、助ける暇もなく、黒焦げになって、息を引き取った。
証言から、ほとんど時間を要する事なく黒焦げになったらしいから、かなりの火力だったと考えられる。
そして、不審者や不審な物の情報はなし、通り魔的な犯行は低そうだ。
ロク「ただの事故か・・・・・・顔見知りの殺人か」
僕は遺体があった場所を見つめる。遺体はすでに、アカデミーがどこかに移動させたらしい。もう焼け焦げた地面がそこにあるのみ。
ジョマ「事故ですかねぇ・・・・・・知らんけど」
ジョマの言葉に、僕は苦笑しつつ、返す。
ロク「恨まれるような人物ではなかったから・・・・・・殺される要素は、ないかも」
ネリアル氏の話は、好意的な物しか出てこなかった。性格よし、顔よし、才能あり。
証言を聞く限り、完璧超人という印象しか抱きようがない。
ロク「事故が濃厚」
僕はそう呟くけど、違和感は拭えない。こういう場合は、想定べき事がある訳だ。