エピソード20(脚本)
〇洋館の一室
ハウンド。猟犬という意味だ。犯人を追跡する。それは確かにハウンドっぽい。
ジョマ「はっ、どこがハウンドですか、猟犬の役目を果せていないです、訳の分からない物は私に押し付けてくるんですからね!」
ジョマはレストルアに向かって、それこそ犬が唸る様に口を開く。レストルアは少し呆れた様子で、言葉を返した。
レストルア「私達は追うのが専門、発見はあなたの専門、適材適所と言ってください」
ジョマ「そんなの、いい言い訳ですね!」
ジョマは鼻を鳴らして体を背ける。レストルアがため息をついた。
何かが起こった時、ハウンドが駆けつけて、魔力紋がない、原因が分からないとなると、こちらにその案件を持ってくるという事か。
ロク「ごめんね」
僕はレストルアに謝っておく。一応、僕はこの特殊捜査室の一員になったのだから、それもやらないといけないだろう。
レストルアは僕に苦笑を見せる。それに対して僕も苦笑を返した。妙な一体感を感じる。
同じ苦労を共有しているという、妙な一体感。
レストルア「あなたが入ってくれて助かります・・・・・・いつもこの調子で、スムーズな引継ぎができません」
レストルアが悪いわけではないのに、こんなに敵意を向けられるのは、大変だなと思う。
レストルアの人物像的に、ジョマに甘ったるい声で、適任と言い放った人物でもないだろう。本当にただのとばっちり状態。
レストルア「そろそろ、本題に入りましょう」
苦笑を浮かべていたレストルアが、空気を変える様に一度言葉を切ると、凛とした表情になる。
僕はそれを見て、背筋を伸ばし少し緊張した。
レストルア「ふふ、緊張しなくても良いですよ」
一度、凛とした表情を崩して微笑んだ後、レストルアは表情を引き締めて、言葉を続けた。
レストルア「本日の朝、事件は起こりました、被害者が出勤した時、突然、その人物が発火したという事でした」
ロク「突然発火した?」
僕の疑問にレストルアは頷いて返す。普通に考えれば、誰かに魔法で焼かれたという事だけど、それなら魔力紋が残っているはず。
ハウンドが追いかけて、こちらに話は来ないはずだ。という事は。
レストルア「一報を受けたハウンドが出動、被害者を検分したところ、魔力紋が残っておらず、発火の原因が分かりませんでした」
僕の予想通り、魔力紋は残っていなかったらしい。原因も不明。
ロク「それで特殊捜査室に」
僕の言葉に、レストルアは頷いてから口を開く。
レストルア「特殊捜査室には、この被害者の発火の原因の調査を依頼します、」
レストルア「犯人がいる場合、速やかにハウンドへ連絡を・・・・・・よろしいですか?」
レストルアの確認に僕は「わかった」と返す。ジョマは相変わらず、鼻を鳴らすだけで、何も言わない。
レストルア「場所は、アカデミーです・・・・・・ハウンドで調べた限りの詳細はこちらに」
レストルアが小さいメモを渡してくる。こんな小さい紙に書ききれる程度しか、調べていないらしい。
僕は苦笑しつつ、ジョマに体を向ける。
ロク「さぁ行こう、ジョマ」