エピソード19(脚本)
〇洋館の一室
ロク「疲れた」
朝から、というより昨日からずっと休めていない。
僕は特殊捜査室に出勤してきたと同時に、ため息まじりで、そんな言葉が出てきてしまった。
ジョマ「そう言って、こんな可愛いエルフと一夜を過ごせた事を嬉しく思っているくせに」
ジョマはニヤニヤとする。僕はそんなジョマを睨みつけるけど、結局否定できずに、そのまま睨むのをやめる。
ジョマ「ふぅう、図星ぃ」
ジョマがちょっとうざいテンションで、茶化してきた。僕はジョマに背中を向ける。
ジョマの事は確かに、可愛いと思ってしまっている。色々されて、意識してしまっている結果かもしれないけど。
結局僕はチョロいのだ。
ロク「はぁ」
頭を抱えてため息をつく僕。その後ろで、ジョマが小さく笑って「思った通り、チョロい」と囁いた。否定できない。
頭を別の事で一杯にしたい気分だった僕は、振り返ってジョマに向かって、口を開く。
ロク「仕事しよう・・・・・・何すればいいの?」
ジョマ「あぁ、仕事」
悩むようにジョマが呟く。
ロク「今抱えている物があれば、まずはそれをやろうか」
ジョマ「あぁ・・・・・・そういうのは何です・・・・・・というか」
そこまで言ってジョマは言葉を切る。少し放心状態の様な表情になって、続ける。
ジョマ「訳が分からなくて、どれから手をつけていいか、もう」
ロク「・・・・・・なるほど」
そういえば、訳が分からな過ぎて発狂しそうと言っていた。
そういう状況だから、きっと追いつかなくて、諦めてしまったんだろうな。
ロク「じゃあ、まずは優先順位をつけて・・・・・・」
「ではまず、こちらからお願いします」
僕の言葉を遮る様に、どこからともなく声がする。入口の方からだった。その声に反応してジョマが振り返る。
ジョマ「げっ、本部の奴が何の用です?! また厄介事を押し付けに来ましたか!」
明らかに敵意を持った声色で、声の主へ威嚇するジョマ。
入口のドアに手をかけて、開いたまま立って居た声の主は、気にしていない様子で中に入ってくる。
レストルア「お邪魔します」
凛とした声を発したその人物は、とても背筋が伸びた綺麗な姿勢で、歩いてくる。
黒髪でクールな印象の彼女は、一度僕を見てから、ジョマに問いかけた。
レストルア「・・・・・・この方は、新しく入った方でしょうか?」
ジョマ「そうですよ! 何度本部に要請しても、人を寄こしてくれないから! 自分で捕まえてきたんです!」
ジョマの言葉に、僕はどう反応していいか困る。捕まえてきたって。まぁ捕まったと言えなくもないけど。
レストルア「・・・・・・なるほど」
ジョマの言動はいつもの事なんだろう。特に気にしていない風に、彼女は呟く。
ジョマ「何か文句ありますか?! あぁん?! 自分で何とかしてくれって言ったのは、本部ですよ?!」
レストルア「・・・・・・文句はありません、給金と寄宿舎の使用権利を用意しましょう」
そう言った彼女が、僕に視線を向けて問いかけてくる。
レストルア「名前は?」
少し冷たい印象に、僕は少し緊張気味に答えた。
ロク「ロク・ホウムヤだよ」
レストルア「わかりました、私はレストルア・グレスト、王国騎士団ハウンド所属です」