〇森の中
冒険者 マーベリック「はぁ・・・はぁ・・・」
冒険者 マーベリック「くそ・・・」

〇おしゃれな居間
村長 ゴードン「・・・お主も村の惨劇を見たか？」
冒険者 マーベリック「あぁ・・・」
村長 ゴードン「村の者は皆、頭を割られていたり、喉を裂かれていたり・・・中には焼死体もあった」
冒険者 マーベリック「一体誰がこんなことを・・・」
村長 ゴードン「人狼・・・」
冒険者 マーベリック「・・・」
村長 ゴードン「・・・の仕業、ということになるじゃろうな」
村長 ゴードン「昨夜は満月。人狼が暴れたと見るのが、村の目線では妥当じゃ」
冒険者 マーベリック「俺たちはそんなことしてねえってのに」
村長 ゴードン「じゃが仕方ない。人狼には悪い噂が付き物。我々が言い出さずとも、誰かが声を上げるじゃろう」
村長 ゴードン「人狼の仕業・・・までは良い」
冒険者 マーベリック「良いのかよ」
村長 ゴードン「我々以外にも人狼がいる、かもしれんしな」
村長 ゴードン「大事なのは、その我々以外の脅威を村から排除することじゃ」
冒険者 マーベリック「じゃあ・・・」
村長 ゴードン「龍神様は予定通り呼ぶ」
冒険者 マーベリック「大丈夫かよ。そいつ、マニュアル通りのことしかしねえんじゃねえの」
村長 ゴードン「かもしれんな。じゃが我々には、いや、この村に打てる手はこれしかない」

〇森の中
冒険者 マーベリック「何が龍神だよ」
冒険者 マーベリック「・・・結局役に立たなかったじゃねえかよ」

〇貴族の応接間
村長 ゴードン「龍神様の言っていた「うんこ」とやらが、我々の討つべき相手かもしれぬな」
冒険者 マーベリック「そうか？ 俺は俺たち以外の人狼・・・真の人狼がいると思うけどな」
村長 ゴードン「いや、龍神様の仰っていた人狼とは我々のことじゃ・・・」
村長 ゴードン「我々は本来の儀式と同じように、村の陣営と戦わなくてはならない・・・」
冒険者 マーベリック「んだよ。踏んだり蹴ったりじゃねえか」
村長 ゴードン「これでいいのじゃ。元々、生き残った者たちにろくな者はおらん」
村長 ゴードン「人狼は人狼らしく、村を滅ぼす」
村長 ゴードン「この村と心中するんじゃ」
村長 ゴードン「全員殺せば、その中に「うんこ」もおるじゃろう」
冒険者 マーベリック「・・・俺はうんこは違うと思うけどな」
冒険者 マーベリック「まあ、俺は村人らしく、自分以外の人狼を殺すことにするわ」
村長 ゴードン「・・・そうか。わしは村と心中する」
村長 ゴードン「介錯は・・・お前に任せるぞい」
冒険者 マーベリック「・・・」

〇森の中
冒険者 マーベリック「・・・」
冒険者 マーベリック「まさか・・・村に吸血鬼が潜んでいたとはな・・・」
冒険者 マーベリック「吸血鬼・・・永遠の刻を生きる怪物」
冒険者 マーベリック「確か、十字架が弱点と聞いたが・・・」
冒険者 マーベリック「かつて俺が人間だった頃に・・・仲間から貰ったこいつで・・・」
冒険者 マーベリック「もしかしたら・・・」

〇洋館の廊下
村娘 アリス「・・・懐かしいな」
村娘 アリス「この館も大昔に、私が人間たちに作らせたものだった」
村娘 アリス「欲しいものは何でも手に入った。その上、時間だって永遠にあった」
村娘 アリス「・・・なのに、何をしても満たされない」

〇貴族の応接間
村娘 アリス「この部屋だって」
村娘 アリス「無駄に広いだけで、使い道がない」
村娘 アリス「まるで私に与えられた時間のように」
村娘 アリス「無意味にそこに広がってる」

〇貴族の部屋
村娘 アリス「ふかふかのベッドに、フリフリのドレス」
村娘 アリス「綺麗な内装に、高級感のあるアンティーク」
村娘 アリス「私はこのお城のお姫様」
村娘 アリス「永遠に枯れない薔薇の花」

〇おしゃれな居間
村娘 アリス「・・・くだらない」
村娘 アリス「全てが無駄。無意味の産物」
村娘 アリス「永遠とは、時間の価値を無にしてしまう」

〇古い洋館
村娘 アリス「私はまるで、ドライフラワーだな」
村娘 アリス「いつしか心まで枯れてしまった」
踊り子 フォクシー「──────」
格闘家 バロン「──────」
踊り子 フォクシー「──────」
格闘家 バロン「──────」
村娘 アリス「何してるの？」
格闘家 バロン「あ、ご主人様・・・」
踊り子 フォクシー「わっ、アリスちゃん・・・」
踊り子 フォクシー「人狼に殺されたんじゃ・・・」
村娘 アリス「愚民の分際で、私の眷属に何してるの？」
格闘家 バロン「あ、あの・・・これはですね・・・」
踊り子 フォクシー「眷属・・・？」
踊り子 フォクシー「ってことはアリスちゃんも吸血鬼・・・」
村娘 アリス「くんくん」
村娘 アリス「匂う。バロンの身体から卑しい女狐の匂いがする」
格闘家 バロン「・・・」
村娘 アリス「・・・なるほどね。汚されてしまった、というわけか」
村娘 アリス「なら、浄化しないとね」
村娘 アリス「んっ」
格闘家 バロン「うっ・・・」
踊り子 フォクシー「血、血を吸ってる・・・!?」
村娘 アリス「・・・これでよし」
格闘家 バロン「はぁ・・・はぁ・・・」
格闘家 バロン「ご主人様・・・」
村娘 アリス「フォクシーさん、だっけ？」
村娘 アリス「私の所有物に手を出すなんて、良い度胸してるね」
踊り子 フォクシー「えっ、ちょっ」
村娘 アリス「バロン、命令」
村娘 アリス「そこの女狐の四肢を引きちぎって、肉だるまにして川に沈めちゃって」
格闘家 バロン「仰せのままに・・・」
踊り子 フォクシー「わ、え・・・」
踊り子 フォクシー「目がやばいって・・・どうしちゃったの？」
格闘家 バロン「ご主人様の命令は絶対です」
格闘家 バロン「何故なら、彼女を中心に世界は回っているのですから」
踊り子 フォクシー「だめだこりゃ」

〇けもの道
踊り子 フォクシー「はぁ・・・はぁ・・・」
踊り子 フォクシー「なんか、逃げてばっかだな、私・・・」
踊り子 フォクシー「息は切れるし、胸はどくんどくんするし、人間の身体って不便すぎる」
踊り子 フォクシー「天界にいた頃のように、魔法が使えたら」
踊り子 フォクシー「人狼だろうが、吸血鬼だろうが」
踊り子 フォクシー「返り討ちにできるのに・・・」

〇森の中
踊り子 フォクシー「はぁ・・・はぁ・・・」
踊り子 フォクシー「もういっそこのまま、どこか遠くへ・・・」
冒険者 マーベリック「・・・」
踊り子 フォクシー「うわっ」
冒険者 マーベリック「おい女、どうせ死ぬなら、最期は派手に散りたいと思わないか？」
踊り子 フォクシー「べ、別に思わんが・・・」
冒険者 マーベリック「そうか。俺もな、安い心中なんてするつもりはねえ」
冒険者 マーベリック「腹にダイナマイト巻き付けて、辺り一面を木端微塵にしねえと気が済まねえよ」
冒険者 マーベリック「お前も協力しろ」
踊り子 フォクシー「何で？」
踊り子 フォクシー「君は私を襲ったり、神父さんを殺したり、人の話も聞かずにやりたい放題だったじゃん」
踊り子 フォクシー「そんなやつのお願いなんて聞けるわけない」
冒険者 マーベリック「そうか。ならこの場で死んでもらおう」
踊り子 フォクシー「・・・だからさ、そういうとこが話通じないんだよ」
踊り子 フォクシー「勝手に要求だけ押し付けて、逆らったら力付くでなんとかしようとする」
踊り子 フォクシー「そんな自分勝手なやつには誰も協力しませーん」
冒険者 マーベリック「・・・」
冒険者 マーベリック「自分勝手で何が悪い」
冒険者 マーベリック「自分勝手にすら生きられないやつに、何も成すことはできないんだよ」
踊り子 フォクシー「・・・」
踊り子 フォクシー「私だって、これまで自分勝手にしてきたつもりだけど、何も成せなかったよ」
踊り子 フォクシー「行動は全部、裏目に出て・・・」
踊り子 フォクシー「結局、どうしようもないんだよ・・・」

〇けもの道
格闘家 バロン「逃げ足の速い小娘ですね。隠れても無駄ですよ。すぐに私が捕まえて──」
冒険者 マーベリック「よぉ」
格闘家 バロン「これはこれは人狼さん。尻尾を巻いて逃げたのではなかったのですか？」
冒険者 マーベリック「てめーに冥土の土産がある」
格闘家 バロン「それは・・・!?」