逃げ切れ!妖狐ちゃん

戸羽らい

#10 真実(脚本)

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戸羽らい

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〇病院の診察室
村人「最近、身体の調子が悪くてのう・・・」
村人「つい先日も、立ち上がった拍子に腰を痛めて・・・」
医師 クランツ「仕方ないですよ。それが加齢というものですから」
村人「わしだって若い頃は・・・」
医師 クランツ「分かります。どうしても、若い頃の自分と比較してしまいますよね」
村人「あぁ・・・」
村人「若ささえ・・・あれば」
村人「先生・・・わしにも若返りの薬を・・・」
医師 クランツ「保険適用外なので、少々値は張りますけどね」
村人「かまわん! 金ならいくらでも払う!」
医師 クランツ「すぐに効果は得られませんよ。半年ほどかけて──」
村人「かまわん!」
医師 クランツ「分かりました。ではこちらの契約書にサインを」
村人「うむ」
医師 クランツ「・・・」
商人 ルドルフ「若返りの薬な〜」
医師 クランツ「そんなもの存在するわけないが、老人たちにとっては藁をもすがる気持ちなのだろう」
商人 ルドルフ「若さに執着しても何もええことないのにな」
医師 クランツ「しかし、我々の懐は暖まる」
商人 ルドルフ「良いカモ見つけたな〜。ここなら競合おらんもんな〜」
医師 クランツ「はっはっはっ。我々の独占市場だ」
医師 クランツ「若返りの薬(笑)でひと財産築いてやろう」
商人 ルドルフ「最高やな〜」

〇おしゃれな居間
人狼「最近、若返りの薬とやらが流通してるらしいのう」
人狼「ふざけた真似を」
村長 ゴードン「困るのう。勝手なことをされては・・・」
冒険者 マーベリック「ふん。人間っつーのは人狼より人狼らしいな」
村長 ゴードン「医師が絡んでるらしいの。近いうちに村から追放するべきじゃな」
冒険者 マーベリック「ああ・・・」

〇寂れた村
村人「あぁ・・・」
「・・・」
村人「この村に足りないのは若さじゃ・・・」
村人「若ささえあれば・・・」
村人「若返りの薬も効いてる気がしないわ」
村人「あれは偽物じゃ。嘘っぱちじゃ」
村人「じゃあどうすれば・・・」
村人「・・・吸血鬼」
村人「・・・」
村人「吸血鬼に頼んで、眷属にしてもらいましょう」
村人「吸血鬼! 吸血鬼に噛まれれば、若さを取り戻せるのか?」
村人「なんじゃと!」
村人「ほう。確かに・・・吸血鬼は永遠の若さを持つと言います」
村人「吸血鬼に噛まれた者は、永遠の命と全盛期の若さを取り戻せる代わりに、眷属となるのです」
村人「構わない。若さが手に入るのなら、眷属でも何でもなってやろうではないか」
村人「おぉ・・・。若さを、ついに若さを取り戻せるのか」

〇田舎の教会
神父 ランド「・・・おや? 皆さん、お揃いで」
神父 ランド「教会に何か御用ですか?」
村人「若さじゃ・・・」
村人「永遠の若さを手に入れるんじゃ・・・」
神父 ランド「・・・?」

〇教会の中
村人「吸血鬼様・・・いらっしゃいますか?」
村人「我々をどうか、眷属に・・・」
村人「若さを・・・永遠の若さを、我々に・・・」
村人「このまま年老いて死んでいくのは嫌なのです」
村人「どうかわしらを噛んでくれ・・・」
???「若さ・・・ね。確かに若さは大事だね」
???「でもさ、花って枯れるからこそ、咲くことが美しいと思わない?」
「吸血鬼様!?」
村人「そこにおられるのですか?」
???「吸血鬼って呼び方は好きじゃないな〜」
???「うちの眷属も吸血鬼って呼ぶけど、本当はこう呼んでほしい」
???「ヴァンパイア♪ってね」
村人「ヴァンパイア・・・」
村人「ヴァンパイア様・・・」
村娘 アリス「呼んだ〜?」
村人「なんと!」
村人「あ、貴方がヴァンパイア様ですか?」
村娘 アリス「いかにも、私がかのヴァンパイア・ロード」
村娘 アリス「ヴァイオレット・ジギタリス・アリスである」
村人「おぉ・・・」
村人「お若い・・・。さすが、ヴァンパイア様」
村人「かわええのう。わしの若い頃そっくりじゃ」
村人「あぁ、我々にもその若さを・・・」
村人「ぜ、是非、貴方様の眷属に・・・」
村娘 アリス「いいよー。でもねー、私の力にも限度があってねー」
村娘 アリス「一人だけしか眷属にできないんだー」
村人「ひ、一人だけですか・・・?」
村人「村には老人が大勢おります」
村人「どうか、私たち全員に若さを・・・」
村娘 アリス「無理〜♪」
村人「一人だけ・・・」
村人「・・・」
村娘 アリス「ごめんね〜。力になれなくて」
村娘 アリス「でもさ、こうすれば良いんじゃない?」
村娘 アリス「全員で殺し合って、最後に残った一人が若さを手に入れる」
村人「えっ・・・」
村娘 アリス「・・・うん、これが良いね。君たちには殺し合ってもらおう♪」
村人「こ、殺し合い!?」
村人「そんな・・・」
村娘 アリス「えー、いらないの? 若さ」
村娘 アリス「せっかく一人に永遠の若さをプレゼントしてあげるってのに、いらないならいいや」
村人「いや、いる!」
村人「わしはやるぞぉ・・・」
村人「殺し合いだなんて・・・」
村人「・・・私はやりますよ」
村人「わしだって・・・若さのためなら何だってやる」
村人「そうと決まれば・・・今からお前らは全員敵・・・」
村人「う、う・・・」
村娘 アリス「あ、今ここでおっ始めないでね」
村娘 アリス「今日は満月の夜。月がはっきりと姿を見せたら、それが始まりの合図」
村娘 アリス「血は夜に映えるんだよ。一夜限りの若さ争奪戦、いやあ胸が熱くなるね」
村娘 アリス「さぁ、明日の朝日を拝めるのは一体誰だろう。小鳥の囀りを聞きながら、若さを噛み締められる“勝者”は・・・!」
村人「・・・私だ」
村人「いや、わしじゃあ! わしが勝つんじゃあ」
村人「ふん。貴方たちなんかに負ける気がしませんわ」
村人「最後に笑うのはわしじゃ」
村人「全員・・・殺す・・・」
村娘 アリス「あはは! みんな気合い十分だね!」
村娘 アリス「他の村人たちにもちゃんと伝えてね・・・って言わなくても、勝手に噂は広まるか」
村娘 アリス「あー、ちなみに殺しの手段は問わないよ。夜の間なら何をしてもオッケー」
村娘 アリス「てなわけで、グッドラック〜♪」

〇岩山の中腹
格闘家 バロン「・・・また例の暇潰しですか。貴女の悪い癖ですね」
格闘家 バロン「眷属にする気なんて最初からないのでしょう」
村娘 アリス「当たり前じゃん」
村娘 アリス「私はね、健全なる精神と健全なる肉体を持つ者にしか口付けをしない」
村娘 アリス「あんなよぼよぼのジジババの血を吸ったらお腹壊しちゃうよ」
格闘家 バロン「病んでいますからね、この村の住人は」
村娘 アリス「うん、病気。きっとその血はヘドロみたいな味がするんだろうね」
格闘家 バロン「ところで、満月の夜に大量の死体を贈る──というのは人狼への当て付けですか」
村娘 アリス「そうだね。元々はこの村も私の縄張りなんだけど、どうやら人狼が我が物顔で住み着いてるらしいからね」
格闘家 バロン「・・・私が始末しましょうか」
村娘 アリス「え〜殺すのは勿体ないよ。あいつらには汚名を着せた上で、屈辱を味わって貰わないと」
村娘 アリス「犬っころ如きがこのヴァイオレット・ジギタリス・アリスの土地にマーキングするなんて、その命だけじゃ償えないからね」
格闘家 バロン「では、今夜の惨劇は“人狼の仕業”ということで・・・」
村娘 アリス「あははっ。悪い人狼さんは退治しないとね〜」
村娘 アリス「私も一人の村娘として、人狼の悪行は見過ごせないよ」

次のエピソード:#11 永遠

コメント

  • 過去の出来事が明かされ、世界が一気にひっくり返りました!
    そして垣間見えるあさましさ…人間はやはり怖い。
    全17話ぐらいとのこと、この先の展開も楽しみです^^

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