間違えて好きな人の親友に告白しちゃった私の運命は…?

法橋アンナ

第一話 痛恨のミス、私の運命、どうなっちゃうの!?(脚本)

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法橋アンナ

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〇体育館の舞台
  無事に入学試験を突破し、憧れの高校に入学することができた。
  夢見心地の入学式で、私、樋渡花音(ひわたしかのん)は文字通り運命の出逢いを果たしてしまったのだ──!
校長「では、在校生を代表して、生徒会長、由比一真(ゆひかずま)君」
由比一真「はいっ!」
  凛々しい声に、真っすぐに伸びた背筋。立ち上がると同時に、ゆるやかなパーマヘアが揺れた。
樋渡花音(はわわ、すっごいカッコいい・・・まるで王子様みたい。ううん、間違いない。 きっとあの人は私の運命の王子様!)
  壇上でスピーチを始めた彼を、私はただうっとりと見つめ続けていた。

〇教室
樋渡花音「だ~か~ら、先輩を見た瞬間、恋に落ちちゃったんだってば!!」
霜月百合「わかったわかった、その話は何回も聞いたよ」
  呆れたように笑う霜月百合(しもつきゆり)は、高校に入学してすぐにできた親友だ。
樋渡花音「一真先輩マジカッコいい。まさか私の理想通りの王子様がこの世に存在していたなんて」
霜月百合「はいはい。でも、会長目当てに生徒会にまで入るとはね。 アンタの行動力には恐れ入るわ」
霜月百合「で? 仲良くなれたの?」
樋渡花音「まだそこまでは・・・」
樋渡花音「でも、名前覚えてもらえたし、笑顔で挨拶もしてもらえてるんだよ!」
霜月百合「へーえ。会長、彼女いないみたいだし今がチャンスなんじゃない?」
樋渡花音「やっぱそう思う!?」
霜月百合「うん。でも会長と言えば、ちょっと妙な噂あるよね」
樋渡花音「噂?」
霜月百合「ほら、会長といつも一緒にいるあの・・・」
樋渡花音「相楽宗吾(さがらそうご)?」
霜月百合「そうそう。会長とは正反対の校内一の不良」
霜月百合「会長を狙う女が出てくるたび、その相楽先輩が邪魔してるとか」
樋渡花音「どういうこと?」
霜月百合「だからさ、あの二人、デキてるんじゃないかって」
樋渡花音「え!?」
霜月百合「ただの噂だよ。けど、意外よね~。相楽先輩ってヤクザの息子なんじゃなかった?」
霜月百合「・・・他校の生徒をボコボコにして病院送りにしたって話もあるし」
樋渡花音「なにそれ! ヤバすぎじゃない!? そんな人とあの一真先輩ができてるなんて、たとえ噂でも許せないっ」
霜月百合「花音ってばほんと会長好きよね・・・」
樋渡花音「よし、百合ちゃん私決めた! 今から一真先輩呼び出して告白する」
霜月百合「は?」
樋渡花音「善は急げって言うでしょ。とにかくまずはアピールよ!」
樋渡花音「彼女ができれば、そんな変な噂だって打ち消せるわけだし」
霜月百合「それはそうかもだけど・・・」
  私は携帯端末を取り出すと、先輩にメッセージを送った。
樋渡花音「お話ししたいことがあるので、今日のお昼休みに校舎裏に来てもらえませんか・・・? っと」
樋渡花音「送信完了!」
霜月百合「嘘でしょ?」
樋渡花音「本日お昼休み、私、樋渡花音は先輩に告白しちゃいます!」
霜月百合「マジ・・・?」
  百合ちゃんは明らかに引いていたが、私は気にせず校舎裏での告白劇を妄想し始めていた。
樋渡花音「・・・一真先輩と二人っきり。うふ、うふふふ」

〇体育館裏
  ドキドキ。
  心臓がうるさいぐらいに高鳴っている。
樋渡花音(勢いでここまで来ちゃったけど・・・いざとなったら緊張しすぎて逃げ出したい~)
樋渡花音「どうしよう・・・そもそも告白ってなんて言うのが正解?」
樋渡花音「ストレートに好きだって言うべきかな・・・」
樋渡花音「でもでもでも、『好きです!』って言って『いや、僕は好きじゃないんで』とか返されたらどうするの!?」
樋渡花音「そんなの辛すぎて立ち直れないっ!」
樋渡花音「やっぱりもうちょっとしっかり考えてからにすればよかった! 私のバカバカ!」
???「・・・・・・」
樋渡花音「でもでも、もう呼び出しちゃったし後には引けない!! ここはもう、女らしく!! 当たってくだけろだ!」
???「おい」
樋渡花音「せせせせ、先輩!?」
樋渡花音(しまった、先輩、もう来てた!?)
  あれこれ妄想していたせいで、全然気がつかなかった。
  恥ずかしくて顔が上げられない。先輩の靴先が見えた。私は勇気を振り絞る。
樋渡花音「先輩、好きですっ! 私とつきあってくださいっ!!」
  自分でも声が震えているのがわかる。それでもハキハキと大きな声で・・・我ながら頑張ったと思う。
  でも、数秒待っても先輩からの返答はなかった。
樋渡花音「すみません、いきなり彼女にしてくださいとか、図々しすぎますよね!? 違うんです!」
樋渡花音「その、まずは彼女候補として前向きに考えて頂ければって感じで・・・! そう、友達以上恋人未満的な!?」
???「ぷっ・・・」
樋渡花音(今、笑った・・・? え? あれ? スニーカー・・・? 先輩ってスニーカーなんて履いてたっけ?)
  ゆっくりと顔を上げる。
  そこに立っていたのは私が想像していた人物ではなかった。
樋渡花音「え・・・なんで? 相楽宗吾(さがらそうご)?」
相楽宗吾「呼び捨てかよ」
樋渡花音「ひいっ、すすすすみません、さ、相楽先輩!」
  見上げるほどの長身に、ド派手な金髪頭。制服は着崩され、鋭い眼光には殺気さえ宿っているように見えた。
樋渡花音(校内一の不良! やくざの息子だって噂のヤンキーだ!!)
  私が呼び出したのは、品行方正、眉目秀麗、誰もが憧れるわが校の生徒会長、由比一真先輩のはずなのに・・・!
相楽宗吾「いいぜ」
樋渡花音「は!?」
相楽宗吾「そこまで熱烈に告白されちゃしょうがねえ。前向きに検討してやるよ、樋渡花音」
樋渡花音(終わった、私の・・・バラ色の高校生活・・・)
  憧れの生徒会長とラブラブな毎日・・・そんな私の甘い妄想が、音を立てて崩れ去っていくのを感じていた。

〇教室
樋渡花音「死にたい・・・」
  放課後、百合ちゃんに顛末を話した後、私は机に突っ伏した。
霜月百合「超展開過ぎてついていけないわ」
霜月百合「普通間違える? どうせアンタのことだから妄想に夢中になってたんだろうけどさ」
樋渡花音「うっ・・・」
霜月百合「それにしても、なんで待ち合わせ場所に相楽先輩が? 会長はどうしたの?」
樋渡花音「それが・・・」
  私は携帯画面を百合ちゃんに見せる。私がメッセージを送ってすぐ、一真先輩から
  『ごめん、先約があって・・・話はまた今度きくね』と返信が届いてたのだ。
霜月百合「舞い上がってて、気づかなかったのね。で、偶然通りがかった相楽先輩に告白しちゃったと」
樋渡花音「うん・・・」
霜月百合「どうすんのよ。間違いでしたって言う?」
樋渡花音「言えるわけないじゃん!! 殺されちゃう」
霜月百合「じゃあ、このままつき合うの?」
樋渡花音「・・・それもヤダ。どうしよう、百合ちゃん」
霜月百合「・・・フラれればいいんじゃない?」
樋渡花音「え?」
霜月百合「相楽先輩も、別に花音が好きだったからオッケーしたってわけじゃなさそうなんでしょ?」
樋渡花音「うん」
霜月百合「嫌がるようなことして、さっさとフラれちゃえばいいじゃん」
樋渡花音「そっか、そうよね! その手があった!!」
樋渡花音「ありがとう、百合ちゃん! 私、頑張る!」
  その時、ガラリ、と教室のドアが開き、騒がしかった放課後の教室がしんと静まり返った。
霜月百合「・・・か、花音」
樋渡花音「え?」
  ドアの方を向いている百合ちゃんの頬が引きつっている。
  振り返るとそこに立っていたのは──。
相楽宗吾「帰るぞ、樋渡」
樋渡花音「さ、さがら・・・せんぱい」
  改めて見ても、すごい迫力だ。
樋渡花音(なんで誘いに来るの!? しかもなんか怒ってるし・・・私、こここ、殺される!?)
  鋭い眼光に、後ずさりしそうになる。
樋渡花音(負けちゃだめ、花音!! 無事にフラれて、穏やかな高校生活を取り戻さなくちゃ!)
相楽宗吾「ジロジロ見てんじゃねえ」
  相楽宗吾の低い声が響くと、興味本位でチラチラ見ていたクラスの皆は、慌てて逃げるように 教室を出て行く。
  助けを求めようと百合ちゃんを見たが、要領のいい彼女の姿はもうそこにはなかった。
樋渡花音(うわあん、百合ちゃんの薄情者!)
相楽宗吾「おい、早くしろ」
樋渡花音「は、はひっ!!」
  私は逃げ出すこともできず、身を守るようにカバンを胸の前で抱え持つと、相楽宗吾の後に続いた。

次のエピソード:第二話 フラれる方法

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