エピソード12 カート(脚本)
〇薄暗い谷底
?????
カートの隠れ家
カートは苦しみに耐えていた。
暗く広い空間で、魔術と闘っていた。
誰にも気付かれず、誰にも邪魔されない空間。
ひとたび誰かと関わってしまえば、それだけで魔術を抑えられなくなり、魔術の支配が進んでしまう。
暗く湿ったこの空間に、カートは望んでその身を寄せた。
苦しみのあまり酒が進み、抑えても抑えきれない欲望が、カートの身体を支配する。
カート「くっ・・・・・・!!」
握り締めたグラスが音を立てて砕け、テーブルのシーツを掴みながら、カートは床に倒れる。
???「カート様っ!」
ティサ「もう、もうお止めくださいっ! 楽にしていいのですっ! なにをそんなに耐えるのですか!?」
ティサ「あなたは望んで魔術の力を手に入れた・・・。なのに、何故そんなに苦しむまで耐えるのですか!?」
カート「・・・まだ、だ・・・・・・。 まだ、駄目だ・・・・・・」
ティサ「なにを言っているのですか! このままでは、先にあなたの身体のほうが駄目になってしまいます!」
ティサ「どうか、どうかもう・・・、お止めになってください・・・。私はもう、あなたの苦しむ姿は見たくないのです・・・」
カート「ティサ・・・」
ティサは唯一カートに仕える魔族の女性であった。魔術の封印を解いたときから、ずっとカートの傍にいる。
魔術の封印を解いた人物を守る・・・。
それがティサに与えられた、生まれたときからの使命だった。
そしてカートが魔術に支配されてからも、
その右腕となり仕えていくのだ。
カート「俺はまだ、死ぬわけにはいかない・・・。 魔術に支配されるわけにもいかない・・・。あいつが、来るまでっ・・・」
ティサ「・・・・・・」
ティサ「風華、ですか・・・?」
カート「何故知っている・・・?」
ティサ「私に知らない事など・・・ ありません・・・」
カート「・・・そうか・・・」
ティサ「何故・・・そんなにまでして・・・」
カート「・・・ん?」
ティサ「・・・いえ。 なんでもありません」
ティサ(問うたところで・・・ 答えは決まっている)
ティサ(私も・・・ 誰も彼もが、皆、同じ・・・)
ティサ「あなたは、私が守ります・・・」
カート「ああ、頼りにしている」
ティサ「・・・・・・」
風華から奪った宝玉を取り出して握り締めると、不思議と落ち着いていられた。
元々魔術を封印する力を持っているためか、効果は短時間だが何もせずに苦しんでいるよりはマシだった。
カート「もう、大丈夫だ・・・。 独りにしてくれ」
ティサ「・・・はい」
散らばった破片もそのままに、カートはぐったりと寝台に身を預けた。
カート(この宝玉を持っていれば、 風華は必ず俺の前に現れる)
カート(8人のアイ=リーンの子孫と、 8つの神具を手にして・・・)
カート(その時に、この宝玉を渡せば・・・。 すべて終わるんだ・・・。 俺の、過ちも・・・。俺の・・・)
カート(風華・・・すまない・・・ 俺は、約束を守れそうにない・・・)
カートは、
緑色の宝玉を握りしめたまま眠った。
魔族の女の子……魔術を封印したらどうなるのかちょっと心配です。
カート…。
あまり悪い人には思えないのに、何故、魔術を解放させたのか。謎は風華ちゃんと会えるまで解明されないのかな。
おおぉおお!?
カート、やっぱりただの敵じゃなかった! 思惑が明らかにされるのが楽しみです(^^