《エデン》

草加奈呼

エピソード13 神具の在処(脚本)

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草加奈呼

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〇レンガ造りの家
  ハンスの町
影利「ごめんね、風華 買い物に付き合わせちゃって」
風華「いいのよ、私も行きたかったし。 それに、いろんな物が見られて 楽しかったわ」
影利「あー。そういえば、風華ってモステアの お姫様なのよね。こんな庶民の買い物で 大丈夫?」
風華「旅に出てから、毎日が新鮮よ。 お買い物もそうだけど、宿に泊まったり、 脱獄したり・・・」
影利「波瀾万丈だったのね・・・」
風華「それに、こんなに打ち解けて話せる 女の子の友達も初めてよ」
影利「ええっ? 照れるなー」
???「そこの、美しいお嬢さん方」
ジェルバーン「俺と甘い一時を過ごしませんか?」
「・・・・・・・・・・・・」
影利「ハッ! あまりのストレートさに 一瞬わけがわからなかったわ」
影利「行きましょ、風華」
ジェルバーン「風華! なんて素敵な名前なんだ。 そちらのお嬢さんの名前は?」
影利「あんたねー。 朝っぱらから恥ずかしくないの?」
ジェルバーン「出逢いに時間は関係ないさ。 それに、今君たちと俺が出逢ったのは運命なんだよ」
ジェルバーン「さあっ、この俺と一時の時間を・・・!」
影利「あー・・・。 これは何言ってもダメなやつだ。 風華、ほっといて行こう」
ジェルバーン「やれやれ。 短気は損気ってね・・・」
ジェルバーン「君たちが探している“神具”は、 ガイアに続く森の中にある湖にあるよ」
「・・・・・・!」
影利「あんた・・・何者・・・?」
ジェルバーン「そうだなぁ・・・。 君たちの味方・・・とでも言っておこうかな。『今は』」
影利「でも、アイ=リーン様の子孫・・・ というわけではなさそうね?」
ジェルバーン「俺の名はジェルバーン。 君たちとお茶できなくて残念だよ。 機会があったら、また会おう。では」
  ちゅっ
  ジェルバーンは、影利の手に口づけをして去っていった。
風華「だ、大丈夫、影利!?」
影利「薬用石鹸で10回くらい手を洗っておくわ・・・」

〇可愛らしいホテルの一室
  ハンスの町 宿屋内
  風華は、事の経緯を紅蓮と吹雪に話した。
吹雪「・・・そいつ、セ=シルの子孫じゃねえだろうな・・・。だとしたら、こっちの行動はすべて見られているってことだ」
紅蓮「セ=シルの子孫だって!? 風華、大丈夫だったか!?」
風華「ええ、私は大丈夫・・・ でも、影利が・・・」
吹雪「影利がどうかしたか?」
影利「あーっ! もう、腹立つ!! 洗っても洗っても落ちた気がしない!!」
風華「・・・とまあ、こんな感じで・・・」
吹雪「なんだ、大丈夫そうだな」
影利「全然大丈夫じゃない!!」
影利「あーん、もうお嫁に行けないー」
吹雪「大げさだな・・・」
吹雪「もし嫁に行けなかったら、俺がもらって やるから」
影利「・・・・・・」
影利「もし、冗談じゃなかったとしても、 そんなプロポーズの仕方があるかアホー!」
吹雪「ぐ、グフっ・・・」
紅蓮「出発前に怪我させないでくれよ・・・」

〇可愛らしいホテルの一室
紅蓮「しかし、なんでセ=シルの子孫が神具の ありかを教えてくれるんだ?」
風華「セ=シルの子孫も、魔術を封印しようと しているんじゃないかしら?」
風華「だって、そうしなければ《エデン》は 滅びちゃうのよ? だから、協力してくれるんじゃ・・・」
影利「ありえないわね」
影利「カートの存在が魔術ごと封印されたら、 セ=シルの子孫は生きていられなくなるわ」
影利「それは私たちだって同じ。誰か一人でも 欠けたら・・・私たちは今ここにいないわ」
風華「私たち・・・。今まで漠然とアイ=リーン様とセ=シルの対立を理解してきたつもりだったけど・・・」
風華「私たち子孫が一人でも欠けたら生きていけないなんて・・・。だったら、今までの対立って一体なんだったの?」
風華「みんな仲良く、暮らしていけないのかしら・・・」
吹雪「暮らしていけるさ」
吹雪「少なくとも、今までは冷戦状態だったはずだ。でなければ、俺たちやセ=シルの子孫が生きているはずがない」
吹雪「それなりに平和に暮らしていたんだろうよ。でも、今は事情が違う」
風華「そう、ね・・・」
紅蓮「とにかく! 魔術を封印しなければ何も 始まらないんだろう? だったら、そのジェルバーンって奴の話を信じるか信じないかだ」
影利「信じる・・・しかないじゃない・・・。 他に情報がないんだもの」
吹雪「ワナ、だったら・・・?」
紅蓮「やるしかないだろ・・・」
  その時、扉がノックされた。
地季「すみません、遅くなりました」
地季「・・・あれ? どうかしたんですか?」
吹雪「おい、 こいつもその湖に連れて行くのか?」
風華「地季は、ガイアまでは急ぐの?」
地季「え? まあ、急ぐと言えば急ぐけど、 一体どうしたんですか?」
吹雪「途中で寄るところができちまってな。 ガイアまで行ってから引き返している 時間がないんだ」
吹雪「まあ、おまえはいつもガイアまで一人で 行っているらしいから、俺たちに付き合うかどうかは自由だ」
吹雪「護衛は途中までになっちまうけどな」
地季「はあ・・・」

〇けもの道
  ハンスの町
  
  北の森
  一行は、地季の用意した薬を分けて持ち、ガイアへと向かっていた。
紅蓮「おっかしいなー。湖はここから東のはず なのに、そこへ行く道が見当たらない」
吹雪「もっと、先にあるんじゃないのか?」
地季「いや・・・。俺、毎月この道を通ってる けど、そんな道は見た事がない」
地季「たしかに、この湖にはどうやって 行くんだろう・・・?」
風華「ねえ、地季。 あなたは先にガイアへ行っていいのよ?  この分じゃ時間がかかりそうだし・・・」
風華「それに、 危険じゃない保証はどこにもないしね」
地季「そうしたいのは山々なんですが、 今回、みなさんが協力してくれるという 事で、荷物を多めにしてしまったんですよ」
地季「だから、最後まで付き合いますよ」
吹雪「この荷物の量は、 そういう事だったか・・・」
紅蓮「うわっ!?」
  同じように荷物持ちさせられている紅蓮が、何かに躓いて転んだ。
紅蓮「いってぇ〜・・・」
地季「わあああっ、薬が!!」
地季「良かったー。薬は無事だ!」
紅蓮「おまえなぁ、 生身の人間の心配をしろよ!」
紅蓮「・・・ん?」
  転んで四つん這いになった紅蓮の目の前に、人一人が屈んでやっと通れるような穴があった。
  それを木切れで広げると、小さな道が見つかった。
紅蓮「獣道! ・・・まさか、ここを通って行くのか!?」
吹雪「怪我の功名だなぁ、紅蓮」
影利「服が汚れちゃうけど、 仕方ないわね」
風華「紅蓮、先に顔の手当てをっ!」
  風華が焦って包帯を取り出した。
  風華の介抱を受け、紅蓮を先頭に一行は獣道を進んで行った。

次のエピソード:エピソード14 緑の守り神

コメント

  • 地季、意外にちゃっかりしてるw
    紅蓮不憫ですね。こんなに優しいのが風華だけなのに、脈がない……

  • だんだんジェルバーンの節操のなさが快感になってきましたw

  • ジェルバーン、何時如何なる時でもぶれない人w
    あの飄々さが真剣になった時が怖い気がします。
    果たして湖にたどり着いて探し物は見つかるのか。ワクワク🎵

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