エピソード2(脚本)
〇屋敷の大広間
高天神家で起こった殺人事件の捜査のため
当主の鷹王から事情聴取することになった
私たちだったが・・
驚くべきことに
彼の心の中は、完全な空白だった・・
天上美月「心が空白では、何も読み取れない」
高天神鷹王(今回のことでは)
高天神鷹王「今回のことでは」
高天神鷹王(警察の皆さんにご迷惑をおかけする)
高天神鷹王「警察の皆さんにご迷惑をおかけする」
天上美月「考えと言葉が、完全に一致している!」
天上美月(もちろん、それは当たり前だけど・・)
天上美月「問題は「思考のステップを完全に すっ飛ばして結論を話してる」ってコト!」
天上美月(人はふつう、迷いや思惑があって 考えた末に言葉を発する)
天上美月(衝動的にしゃべってるように見える人でも)
天上美月(実際には空気を読んで 話す内容を微調整してる)
天上美月「でも、この人には、そのステップがない! いきなり結論を話している」
天上美月「こんな人間、あり得ない! ロボットか、あやつり人形以外!」
天上美月(でも、ロボットや人形に心はない)
天上美月(読み取れる心があるってコトは そうじゃない証拠)
天上美月(わからない。 このひとの正体がまったくわからない)
田滝上敬司「ぶしつけですが、単刀直入にお尋ねしたい」
田滝上敬司「ご子息の多聞さんの殺害動機について お心当たりは?」
高天神鷹王「まったくない!」
高天神鷹王「・・と言ったら嘘になる」
高天神鷹王「当家の事件を担当するにあたって あなた方も聞き及んでいるでしょう」
〇原っぱ
高天神鷹王「我が高天神家は 戦国時代から続く忍者の家系」
高天神鷹王「江戸時代に主家が転封されたあとも 我が先祖はこの地に残り 徳川譜代の藩主に仕えることになった」
〇城下町
菊梁善意「それがきっかけで 幕府御庭番の配下になったんですよね?」
高天神鷹王「左様! よくご存知ですな」
菊梁善意「幕府隠密として大活躍されたとか? スゴいッスよね!」
天上美月(誰に対しても、すかさず ゴマすってくるヤツだなコイツ)
天上美月「でも幕末にはアッサリ 幕府を裏切って薩長に鞍替え」
天上美月「以後は明治新政府のために 様々な謀略を行ったとか」
高天神鷹王「これは手厳しい」
〇屋敷の大広間
高天神鷹王「おっしゃるとおり」
高天神鷹王「時の権力に寄り添って 生き延びてきたのが、我が高天神家」
天上美月「その後も、ごく最近まで」
天上美月「日本政府のため、様々な謀略を担ってきた というのは事実ですか?」
高天神鷹王「・・・」
高天神鷹王(・・・)
天上美月(この質問にも、心は空白・・)
天上美月(動揺すらしないの?)
天上美月(心を空白にするための特殊なトレーニングでも積んでる、っていうの?)
田滝上敬司「それが「心当たり」ですか?」
高天神鷹王「左様」
高天神鷹王「「昔のコト」で当家を恨む者がいない とは言い切れない」
田滝上敬司「しかし犯行当時、こちらのお屋敷は 外界からは隔絶されていたはず」
高天神鷹王「いかにも」
高天神鷹王「二日前の豪雨で県道は通行止めとなり 神稲線のみが当家への唯一の道となった」
田滝上敬司「神稲線の高天神駅から こちらのお屋敷までは一本道」
天上美月「しかも駅にも、お屋敷までの道沿いにも」
天上美月「二十数台の監視カメラが 設置されてますよね?」
高天神鷹王「そのどれにも 我が家の者以外は映っていなかった」
高天神鷹王「さあ、この謎 どのように解かれますかな?」
田滝上敬司「ま、とりあえずは、ご家族はじめ 使用人の皆さんにもお話を伺いたいですな」
高天神鷹王「不在の者もおりますゆえ」
高天神鷹王「事情聴取は夕刻 皆が戻ってからでよろしいですかな?」
田滝上敬司「わかりました」
天上美月「もうひとつ教えてください」
天上美月「ご家族と働かれている方たちの中で」
天上美月「女性は何人いらっしゃいますか?」
高天神鷹王「確か・・・8人かと」
〇暗い廊下
菊梁善意「「この謎、どのように解かれますかな?」 って、ふざけてんですかね?」
天上美月(ゴマすりまくってた、おまえが言うか?)
天上美月「素直に考えれば、内部の犯行」
菊梁善意「その場合は遺産相続目的とか、 家庭内の愛憎とかが動機ですかね」
田滝上敬司「だが、高天神家が関与してきたっていう 謀略の話、こっちもあり得るな」
菊梁善意「謀略の被害者からの怨恨、の線ですか?」
田滝上敬司「だけじゃなくて、謀略で利益を得た側 からの口封じだってあり得るさ」
田滝上敬司「だからこそ、N県警の事件に」
田滝上敬司「「警視総監の諮問探偵」であるアンタが 送り込まれてきたんだろう?」
天上美月「警視総監が心配してるのは」
天上美月「事件の動機や真相のことじゃないわ」
天上美月「高天神家に注目が集まるのを避けたいのよ」
田滝上敬司「世間が気づく前にこっそり 目立たないように解決したいってコトか」
天上美月「目立っちゃって、根掘り葉掘り マスコミに探られるのがイヤなのよ」
田滝上敬司「ところで探偵さんよ」
田滝上敬司「訊いてたよな、女の人数?」
天上美月「ええ」
田滝上敬司「例の女が、屋敷の人間じゃないか って疑ってるのか?」
菊梁善意「列車の乗客たちに催眠術をかけた とかいう、あの謎の女のことですか?」
天上美月(催眠術じゃないけどね・・)
天上美月「可能性はすべて確認しておかないと」
天上美月「ですよね、刑事さん?」
田滝上敬司「だな」
田滝上敬司「とりあえず、いまは犯行現場を見ておくか」
〇荒廃した国会議事堂の広間
音楽堂は邸内の庭の一角に
離れとして建てられていた
当然、現場検証は既に終わっている・・
但し、同時には
「ひとりずつしか入れない」ため
かなり面倒だったらしい
田滝上敬司「さて、じゃあ探偵さんよ」
田滝上敬司「入ってみるかい?」
天上美月「その場で説明をお願いしたいけど 無理ですものね」
天上美月「ひとりで入らせてもらうわ」
と、足を踏み入れかけて気づいた!
中に、誰かいる!
天上美月(って、マズイ状況じゃ?)
矢で首を射抜かれた!
・・未来が見えた
天上美月「って、もう遅い! 足を踏み入れちゃってるじゃん!」
天上美月「しゃがみ込んでやりすごすか?」
床下から突き出された槍が身体を貫く!
・・未来が見えた
天上美月「じゃ、右に飛びのいて・・」
旋回してきた刀で首を切断される!!
・・未来が見えた
天上美月「となると左に飛んでも・・」
今度は斧で真っ二つ!!
・・の未来が
天上美月「どうすんのよ!? この状況! 絶体絶命じゃん!!」
~ 次回へ ~