エピソード17(脚本)
〇英国風の部屋
ロク「よかった」
とりあえず一安心した僕はドアに手をかけて、中に入る。
部屋の中はいい匂いがして、心臓が高鳴る。
酔っ払いとしか見ていなかったけど、よく考えたら女の子の部屋だ。
僕が戸惑っていると、閉まったドアへ、ジョマは入った時と同じように右手をかざして、鍵を閉める。
酔っているのにしっかりしている。
僕はジョマを部屋の奥まで連れて行き、ベッドに寝かせた。
ロク「はぁ、疲れた」
僕は一息つくと、あまり部屋の中を見ない様にして、すぐに入ってきたドアに戻る。長居は無用だ。
ロク「あれ?」
ドアに手をかけると、鍵がかかっていた。
いや、当然だ。さっきジョマがカギをかけていたのだから。
ロク「まって、どうやって開けるの」
ドアには、ドアノブしかなく、錠がない。住人の魔法でしか開かないのか。
つまりはピッキングの様な、錠を鍵無しで開けるような手法は使えないのだ。
いやなぜか冷静にそんな事を考えた頭を、僕は左右に振る。僕は急いでベッドまで戻ると、ジョマを揺すった。
ロク「鍵開けて! 僕が出れないよ!」
ジョマ「うぃぃぃ・・・・・・逃げる気でしょー、そうはいきませんよー」
僕の声に反応したジョマは、トロンとした目を僕に向けて、そう言いながら微笑む。
酔っていたのに鍵をしっかりかけたのは、僕が逃げるかもしれないと考えたからだろうか。
ロク「逃げないから! さすがに一晩一緒に過ごすのは!」
ジョマ「そうやって逃げる気ですー、わかってますよー」
そこまで言うと、ジョマは僕の腕を掴んで、引っ張る。
とっさの事で踏ん張れなかった僕は、ジョマの上に覆いかぶさるように、倒れ込んでしまった。そのままジョマは僕を抱きしめる。
ロク「ちょっ、ちょっと!」
ジョマは力が強い。僕の抵抗は全く意味を成さない。
ジョマ「逃がしませんー」
そのまま目をつぶって、ジョマは寝息を立て始めた。
胸が思いっきり当たっている。顔が目の前にある。寝息が口に当たる距離。
ロク「ふぁぁぁ!」
僕は何とか抜け出そうとしても、全く動けない。なんという力だろうか。どうにもならない。
ロク「どどどどうすれば」
いや、さすがに寝ているのだから、そのうち力は抜けるはず。
部屋から出るのは、諦めるしかなさそうだけど、それで、この状況だけは抜け出せる。
とりあえず耐えるのだ。何とか耐えるのだ。