エピソード16(脚本)
〇西洋の街並み
ジョマ「うぃぃぃ」
泥酔状態のジョマが謎の声を発する。僕はジョマを支えて、暗くなった王都を歩いていた。
もうだいぶ遅くなってしまっていて、昼間の喧騒とは逆の静かな王都。人はいるけど、みんな酔っ払いだ。
ロク「ジョマ、しっかりして」
ジョマ「うぃぃぃ」
飲み始めた当初は、ありとあらゆる愚痴をまき散らしていた。
後半を過ぎたあたりから、ほとんどこの反応しか返ってこなくなって、
それでも飲もうとしていたから、何とか終わりにして出てきたのだ。
〇ヨーロッパの街並み
ロク「やっと戻ってきた」
特殊捜査室のある建物を見つめて、僕は呟いた。ほとんど、自分の力で歩けない人を連れて歩くのは、予想以上に時間がかかる。
ジョマは体重が重いわけではないと思う。でも力が入っていないと、やっぱり重く感じる。
ロク「もうちょっとで寄宿舎だよ」
ジョマ「うぃぃぃ」
先ほど何とかして、ジョマの住んでいる所を聞き出した。
特殊捜査室に併設されている寄宿舎に、住んでいるらしいとわかったので、連れてきたのだ。
ロク「寄宿舎か」
どうも、特殊捜査室メンバー用らしいから、ジョマしか住んでいないだろう。誰かに助けを求める事もできない。
普段はどうしているのだろう。ここまでは飲まないのだろうか。それとも道で寝てしまうのか。
僕は少しジョマのその姿を想像してしまう。似合っている気がして苦笑した。
ロク「あともうちょっと」
特殊捜査室には入らず、建物の裏側に移動して、部屋が並んでいるのを確認する。
それぞれの部屋に番号がふってあって、一番がジョマの部屋という事だ。
ロク「寄宿舎という事は、僕も入れるのかな」
住む場所がないから、そうなら助かるけど、手続きとかそういう物をしていないのだから、どのみち今日は無理だ。
ジョマが正気の時にちゃんと聞かなければ。
僕とジョマは、一番の部屋の前にたどり着く。一応僕はドアノブを掴んでみるけど、鍵が閉まっていた。
開いても、それはそれで困るけど。
ロク「ジョマ、着いたよ、部屋の鍵は?」
ジョマ「うぃぃぃ」
ロク「うぃぃぃ、じゃなくて! しっかりして!」
ジョマ「うぃぃぃ」
そのジョマの返事に、僕が諦めかけて、どうしようか考え始めた時、ジョマは右手をゆっくりとドアにかざした。
すると、その右手が仄かに光って、鍵が開く音がする。
誰でも開けられる訳じゃないだろうから、本人が魔法を使わないといけないだろう。
鍵がない分、セキュリティーが少し高そうな気がする。