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エピソード23-菫色の刻・2-(脚本)

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〇城の会議室
物部トキ「これ、美味しい。あ、この焼売も手が込んでる!!」
明石青刻「ははは、トキさん、そんなに急がなくても、焼売は逃げないですよ」
  トキと青刻さん、どちらが年上だか分からなくなるが、
  私達は遅めの朝食と早めの昼食を兼ねて、
  食事を終えると、
  これからどうしようかと言う話になった。
明石青刻「さっき、警察の人に聞いた話なのですが、胡蝶庵はまた封鎖されてしまったようです」
明石青刻「なので、今日はもう近づかないに越したことはないでしょうね」
黒野すみれ「・・・・・・」
明石青刻「あと、言いにくいのですが・・・・・・」
明石青刻「黒野さんには完全に容疑が晴れるまで明石家にいてもらうということでした」
物部トキ「そんな! すみれちゃんが昔、春刻君の住んでいた家に火をつけるなんてしないのに!」
  トキの真っ直ぐな言葉に、私は少なからず傷つく。
黒野すみれ「(私も・・・・・・もし、こんな状況でなかったら、トキを信じ続けられたのに)」

〇貴族の部屋

〇風流な庭園

〇城の会議室

〇黒
黒野すみれ「(1回だけじゃない。何度も疑って、違ってたら良いって思ってた)」

〇城の会議室
黒野すみれ「仕方ないよ。なんで、あの刑事が引き上げたのかは分からないけど、」
黒野すみれ「放火された時刻に近い時間に、建物の方から帰ってきてたらさ」
黒野すみれ「あと、あんな写真もあったし」

〇黒
  そう、それは私が南田さんにナイフを向けている写真だ。

〇城の会議室
物部トキ「写真って?」
  私は少し説明を端折って、
  トキに例の庭の写真について話した。
物部トキ「でも、なんで、そんな写真が?」
明石青刻「そのことなんですが、おそらく、」
明石青刻「朝兄さんに言われて、僕がとりつけたカメラの写真ではないかと」
黒野すみれ「朝兄さん・・・・・・朝刻さんですか?」

〇山の展望台

〇城の会議室
明石青刻「実は前々から朝兄さんには相談を受けていたんですよ」
明石青刻「そろそろ新当主が決定するからセキュリティーを強化する為にも防犯カメラを」
明石青刻「良いものにしたいんだけど、力を貸してくれないか、と」
黒野すみれ「ということは、元々、防犯カメラはついていたんですか?」
  私は食い気味に聞きそうになるのを抑えると、
  青刻さんに聞く。
  もし、防犯カメラの映像さえあれば、あの庭に
  毒針を仕掛けた人物が映っている可能性がある。
黒野すみれ「(おそらく、仕掛けたのは春刻が本邸に一時的に行っていた日)」
黒野すみれ「(その日の、映像が残っていれば・・・・・・)」

〇風流な庭園

〇城の会議室
物部トキ「すみれちゃん?」
黒野すみれ「あ、いや・・・・・・防犯カメラだなんてさすが、明石家だなって・・・・・・」
  私は何とか、取り繕うと、青刻さんの言葉を待つ。
  だが、彼の言葉は私の期待を打ち砕くものだった。
明石青刻「・・・・・・。確かに、以前も防犯カメラはありました。でも、運悪くと言いますか、」
明石青刻「機能しなくなりましてね。有体に言えば、壊れてしまって。ある時期の映像は」

〇風流な庭園

〇風流な庭園

〇黒

〇城の会議室
明石青刻「原因は不明ですが、」
明石青刻「春刻君が本邸に一時的にいた日の夕方から秋川さんが発見された日の翌朝までの映像は」
明石青刻「ダメでした。警察にも情報提供ということで提出しましたが、やはり無駄だったようで」
  私は何となく、彼の言葉に違和感を覚える。
  ただ、些細なことでそれが何を意味しているのか、
  分からない。
黒野すみれ「あの、些細なことなんですけど、春刻のことは春兄さんとは呼ばないんですか?」
明石青刻「え?」
黒野すみれ「あ、朝刻さんのことは朝兄さんと呼んでいたので・・・・・・」
  私はそこまで言うと、彼らの父親が違っているのを
  思い出した。
黒野すみれ「(あぁ、もしかして、異父兄弟だからってこと?)」
  私は聞いてしまったことに後悔すると、青刻さんは
  私の後悔に反して、カラリとした様子で言った。
明石青刻「ああ、別に意図がある訳じゃないんですよ」
明石青刻「ほら、朝兄さんと僕とは10歳くらい離れているし、」
明石青刻「春刻君とは年が近いのもあって・・・・・・」
明石青刻「しかも、あの人、そんなことで怒りそうもないでしょ?」

〇新緑

〇城の会議室
黒野すみれ「確かに・・・・・・そう、ですね」
  私は春刻の顔を思い浮かべると、
  青刻さんはさらに続けた。
明石青刻「なんだったら、僕、玄田さんも玄人君って呼んでますし、黒野さんもいかがですか?」
黒野すみれ「いかがですかって?」
明石青刻「勿論、名前ですよ」
  黒野さんじゃ硬いと思っていたんです、と
  青刻さんは言うと、考え出す。
  そんな様子にトキはやめた方が良いよ、と言ってきた。
物部トキ「だって、青刻君」
物部トキ「私のこと、宇治金時ちゃんやら栗きんとんさんとか散々な名前で呼んできたんだから」
明石青刻「いや、だって、あんなにご飯、食べておいて、今日の晩ご飯、何かな♪ ですよ?」
明石青刻「脳も胃袋になってるんじゃないって思いますよね」
物部トキ「もう、青刻君!! 青刻君は少食すぎなんですー、私は普通ですー」
  確かに、トキは中学校の時からよく食べていたし、
  高校生の頃も凄かった。

〇教室の教壇
物部トキ「あ、すみれちゃん」
「遅くなってごめん。ってまたそんなに食べて、よく太らないね」
物部トキ「うん、まぁ、甘いのは別腹だよ」
「・・・・・・」
物部トキ「じゃあ、帰ろっか。あ、すみれちゃん、ポテト、食べて帰らない?」
物部トキ「劇の練習、疲れたでしょ! もうすぐ、コンテストだもんね。飲み物とかも奢るよ」
「うん、じゃあ、何か、飲んで帰ろうか」
物部トキ「うんうん、やっぱり、放課後は真っ直ぐおうちへ、なんて健全な学生じゃないよね」
「・・・・・・全国の補導の先生が聞いたら、ヤバそうな台詞だよ。それ」
物部トキ「えー、でも、社会人になっても、そんな人、いないじゃない」
物部トキ「この国って何か、どうでも良いことが息苦しいって思うんだよね」
物部トキ「それより、今度の劇って上手く行きそう? 何か、難しそうな役だよね」
「うん、確か、未来から過去を変えようとしてやってきた未来人の役? らしい」
「ミステリーであり、恋愛ドラマであり、SFであり・・・・・・あと、何だっけ?」
「ヒューマンドラマであり、コメディにして、シリアスだったっけ?」
物部トキ「あぁ、それって三觜(みつはし)先輩の脚本だっけ?」
「うん、こう言っちゃなんだけど、かなり変わり者だよ。あの人」
「役と対話すると、その人が見えてくる」
「その人がしようとすることが分かるって言われてもさ」
物部トキ「まぁまぁ、でも、きっと上手くいくと思うなぁ。すみれちゃん、凄く堂々としてるし」
物部トキ「1年生の時の、ロミオとジュリエットも良かったなぁ〜」
物部トキ「本当にキャピュレット家まで見えてたもん。ロミオならぬスミオだったし、」
物部トキ「中学生の子から手紙とかももらったとか? 私もやっぱり書けば良かったなー」
「トキさん? それ以上、言うと、置いていきますよ?」
物部トキ「わぁ、すみれちゃん、待ってー!!」

〇城の会議室
黒野すみれ「(あの時は思いもしなかった。劇の内容そのままに、過去に戻るなんて)」
黒野すみれ「(そう言えば、先生からはこの脚本は却下って言われてたけど、)」
黒野すみれ「(先輩は何だか、預言者っぽいところがあったっけ?)」

〇銀行
黒野すみれ「銀行強盗の話を書いたら、」

〇コンビニの店内
黒野すみれ「近くのコンビニでATMが狙われるって事件が起こるし」

〇火山の噴火
黒野すみれ「火山の噴火した場面から始まるファンタジーを書いたら、」

〇島
黒野すみれ「今は死火山になっている筈の、無人島にある火山が噴火したり」

〇城の会議室
黒野すみれ「(そんなことがあって、できるだけ大事件を書かないでくださいって)」
黒野すみれ「(みんなで言ったっけ。でも、)」

〇装飾された生徒会室
三觜先輩「それでも、私は書くのをやめられない・・・・・・」

〇城の会議室
黒野すみれ「(って言ったっけ・・・・・・)」
明石青刻「やっぱり、神様っぽいのが良いかな。なんて言ったって、クロノス様だし」
明石青刻「やっぱり、ここはクロノス様まみれ!! かな?」
黒野すみれ「いやー、フルネームより長くなってません? それ」
明石青刻「そうじゃあ、すみれさんにしましょうか。もしかしたら、家族になるかも知れませんし」
物部トキ「え、え・・・・・・家族って、ずるい! 私もすみれちゃんと家族になりたいのに」
明石青刻「じゃあ、トキさんがすみれさんの第1配偶者で、」
明石青刻「僕がすみれさんの第2配偶者というのは?」
物部トキ「あ、それは最高だね!! 皆、学生だからあと4年したら、結婚ってことで!!」
明石青刻「えぇ、結婚式に、新婚旅行も考えておかなきゃですね」
物部トキ「ねぇ〜♪」
黒野すみれ「ねぇ〜♪って。はぁ・・・・・・この人達、この国の法律、分かってるのかな?」
黒野すみれ「同性婚に、重婚は現在は無理だし・・・・・・」
明石青刻「そこは高澤先生と」
物部トキ「安谷さんと、すみれちゃんのお父さんにも頑張ってもらってさ」
「何とかしてもらって」
黒野すみれ「・・・・・・」
黒野すみれ「いや、それも無理だから!!」

次のエピソード:エピソード24-青色の刻-

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