特異地蔵譚

わらやま

募集 番外編 マイナーリーグ地蔵(脚本)

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〇中世の野球場
  さぁ、9回裏2アウト、あと1人でゲームセットの場面
  迎えるバッターは日系アメリカ人のゾウジ・ヤマモト!!
  昨年3Aの打撃三冠も獲得し、今年もノリにノッているグッドガイ!!
  ホームランでサヨナラの場面ですが・・・
  行ったァァァァ!!
  ホームラン!!
  ライナーズサヨナラでの勝利!!
  まさに”伝説のサヨナラ男”・・・!!
  それにしても不思議です・・・
  何故こんな活躍を見せているヤマモトが・・・
  一度もメジャリーグに上がれていないのでしょうか・・・
  マイナーリーグ地蔵

〇シックなリビング
ゾウジ・ヤマモト「今日の試合も活躍できたよ!!」
ゾウジ・ヤマモト「いつも見守ってくれてありがとうな」
ゾウジ・ヤマモト「次の試合は、ニューヨークだから・・・」
ゾウジ・ヤマモト「ペンシルバニアを離れる事になるんだけど・・・」
ゾウジ・ヤマモト「おいおい、そんな顔するなよ」
ゾウジ・ヤマモト「勿論一緒に行くに決まってんだろ!!」
ゾウジ・ヤマモト「ニューヨークでも打ちまくって・・・」
ゾウジ・ヤマモト「念願のメジャー・・・ 一緒に行こうな!!」

〇更衣室
ゾウジ・ヤマモト「よし、今日からの3連戦、気合い入れていくぞ!!」
ライナーズ監督「ヤマモト、ちょっといいか」
ゾウジ・ヤマモト「監督!!なんでしょう!?」
ライナーズ監督「上に欠員が出そうなんだ。 GMからはこの3連戦の活躍で判断しろと言われている」
ゾウジ・ヤマモト「ほ、本当ですか!?」
ライナーズ監督「ヤマモト・・・ 俺はお前に期待しているんだ」
ライナーズ監督「いつまでもこんなところで燻ってないで、上で大暴れしてこい!!」
ゾウジ・ヤマモト「は、はいっ!!」
ゾウジ・ヤマモト「ヨシッ!!またチャンスが巡ってきたぞ!!」
ゾウジ・ヤマモト(今回こそは・・・)
ゾウジ・ヤマモト(君も見守っていてくれ)

〇中世の野球場
  さあ、ライナーズ!!
  2点ビハインドのまま9回2アウト
  ランナー1塁2塁、HRでサヨナラのチャンスですが崖っぷちです
  ここで迎えるバッターは強打がウリのヤマモト!!
  ですが、今日は3三振といいところがありません!!

〇野球場の座席
おじいさん「ヤマモト!!ここじゃ!! ここで打ってくれー!!」

〇中世の野球場
  スタンドからも熱烈な応援が届いております
ゾウジ・ヤマモト(ココで決める!!)
ゾウジ・ヤマモト(来た!!絶好球!!)
ゾウジ・ヤマモト(なっ、力が・・・)
  ヤマモト敢えなく三振!!ゲームセット!!
ゾウジ・ヤマモト「くそっ」
ゾウジ・ヤマモト(折角のチャンスだったのに・・・)
ゾウジ・ヤマモト(でも、なんなんだ・・・今日の感覚は・・・)
ゾウジ・ヤマモト(たまにあるんだよな・・・打てると思っても打てない時が・・・)

〇更衣室
ライナーズ監督「ヤマモト・・・ 分かっているとは思うが・・・」
ライナーズ監督「今日の結果でお前は評価を大きく落とした」
ゾウジ・ヤマモト「はい・・・」
ライナーズ監督「この3連戦はレギュラーで使うから、明日のダブルヘッダーは名誉挽回出来るよう頑張れよ」
ゾウジ・ヤマモト「ありがとうございます・・・」
ゾウジ・ヤマモト(くそっ、監督の思いに応えられなかった・・・)
ライナーズ監督「おいヤマモト」
ゾウジ・ヤマモト「はい、まだ何か!?」
ライナーズ監督「お前宛に来客だ」
ゾウジ・ヤマモト「来客!?」
ZIA捜査官 ノーマン「あなたがヤマモトさん!?」
ゾウジ・ヤマモト「そうだけど・・・アンタは・・・!?」
ZIA捜査官 ノーマン「私はZizou Intelligence Agency(ZIA)のノーマンという者です」
ゾウジ・ヤマモト「なんだって・・・? ZIZ・・・!?」
ZIA捜査官 ノーマン「Zizou Intelligence Agency・・・です。 まぁ、馴染みのない組織だと思うんで、かいつまんでいうと」
ZIA捜査官 ノーマン「CIAのような組織だと思ってください」
ゾウジ・ヤマモト「はぁ・・・」
ゾウジ・ヤマモト「それで? そのZIAとやらが一体何のようだ!?」
ZIA捜査官 ノーマン「率直に申し上げます」
ZIA捜査官 ノーマン「あなたは特異地蔵の影響下にあります」
ゾウジ・ヤマモト「特異・・・なんだって!?」
ZIA捜査官 ノーマン「特異地蔵です。地蔵とは・・・仏教における偶像の一つの事です」
ゾウジ・ヤマモト「何の話かサッパリわからないんだが・・・」
ZIA捜査官 ノーマン「この世には特異地蔵という不思議な力を持った地蔵がいるんですが・・・」
ZIA捜査官 ノーマン「ここ2年くらいの間で地蔵に接触したことはありますか!?」
ゾウジ・ヤマモト「・・・スピリチュアルな話だったらよそでやってくれないか」
ZIA捜査官 ノーマン「では質問を変えて、今日の試合や、今までの試合でも、重要な局面で急に力を発揮できない・・・といった経験に心当たりは!?」
ゾウジ・ヤマモト「なんでソレを・・・」
ZIA捜査官 ノーマン「それはズバリ特異地蔵の力のせいです」
ゾウジ・ヤマモト「・・・」
ゾウジ・ヤマモト「ばかばかしいっ!!そんなのオレの経歴を知っていれば分かることだ!!」
ゾウジ・ヤマモト「メジャーリーグに一度もあがれていないマイナーリーガーとして、色んなゴシップ紙に好き放題書かれてるからな」
ゾウジ・ヤマモト「今日打てなかったのも、オレ自身のせいだし、アンタの言う地蔵なんてもんにオレは心当たりもない!!そこをどいてくれ!!」
ZIA捜査官 ノーマン「やれやれ・・・ 少し唐突すぎましたかね・・・」
ZIA捜査官 ノーマン「だが、あの反応・・・ たしかに地蔵には心当たりはなさそうだ・・・」

〇ホテルの部屋
ゾウジ・ヤマモト「ごめん、折角のチャンスだったのに今日の試合活躍できなかったよ」
ゾウジ・ヤマモト「でも、まだ2試合あるし、監督もチャンスはくれるって話だから」
ゾウジ・ヤマモト「明日は絶対に打つ!!」
ゾウジ・ヤマモト「スタジアムで見守っていてくれ」

〇中世の野球場
  ヤマモト三振!!
  これで今日もヒットなし!!
  昨日に引き続き・・・
  全くいいところがありませんっ!!!!
ゾウジ・ヤマモト「くそっ」
ゾウジ・ヤマモト(また、あの違和感が・・・)

〇更衣室
ゾウジ・ヤマモト「もう、後がないな・・・」
ZIA捜査官 ノーマン「ヤマモトさん・・・ 落ち込んでいるところすみません」
ゾウジ・ヤマモト「ああ・・・またアンタらか・・・」
ゾウジ・ヤマモト「何回来られても心当たりは・・・」
ゾウジ・ヤマモト「いや・・・」
ゾウジ・ヤマモト「正直俺もおかしいと思うんだ。去年も今も昇格がかかっている試合になると・・・」
ゾウジ・ヤマモト「いつもはしないミスをしたり、三振や凡打の山を築いたりするんだ・・・」
ゾウジ・ヤマモト「だが、俺は本当にアンタが言うような地蔵とやらには心当たりがないんだ!!」
ZIA捜査官 ノーマン「その事ですが・・・」
ZIA捜査官 ノーマン「おそらく今回のケースは他偶像の特異地蔵化だと思います」
ZIA捜査官 ノーマン「ま、まぁ、意味はわからないと思いますが」
ZIA捜査官 ノーマン「あなた、ずっと大事にしていたり身につけていたりするもの何かありませんか!?」
ゾウジ・ヤマモト「・・・あるぜ」
ゾウジ・ヤマモト「今日も一緒にいる」
ゾウジ・ヤマモト「ケニーがな・・・」
ZIA捜査官 ノーマン「ケニー!?」
ゾウジ・ヤマモト「こいつだ」
ZIA捜査官 ノーマン「犬のぬいぐるみ・・・」
ゾウジ・ヤマモト「笑いたきゃ笑えよ。 こいつは、ケニーは俺が入団した時にグランマがくれたんだ」
ゾウジ・ヤマモト「メジャーで活躍出来るようにって・・・」
ゾウジ・ヤマモト「グランマが亡くなった今は形見みたいなもんで、いつも一緒にいるんだ」
ゾウジ・ヤマモト「こいつが、ケニーが原因だってアンタは言いたいのか!?」
ZIA捜査官 ノーマン「ちょっと拝見」
ZIA捜査官 ノーマン「大変申し上げづらいですが、間違いなく特異地蔵化しています・・・」
ゾウジ・ヤマモト「そんな・・・」
ZIA捜査官 ノーマン「特異地蔵の多くは負の能力を持ちます。その謎は解明されていないですが、とにかく・・・」
ZIA捜査官 ノーマン「込められた思いや性質とは必ずしも相関関係はありません。今回は皮肉にも思いとは真逆の能力を発動しているのでしょう」
ZIA捜査官 ノーマン「言うなれば、『マイナーリーグ地蔵』ですかね」
ゾウジ・ヤマモト「そんな、俺は・・・ どうすれば・・・ その特異地蔵化?を戻せたりしないんですか!?」
ZIA捜査官 ノーマン「残念ながら・・・ 基本的に能力を発動している地蔵は・・・」
ZIA捜査官 ノーマン「破壊しない限りは能力が続きます」
ゾウジ・ヤマモト「そんな・・・」
ZIA捜査官 ノーマン「どうしますか? 我々としては、他者に有害な地蔵でなければ破壊は義務ではないので、見逃す事も出来ますが」
ゾウジ・ヤマモト「・・・俺は」
ゾウジ・ヤマモト「俺はそんな特異地蔵の力には負けない!! 次は絶対打つ!!グランマの思いに、ケニーの思いに報いるんだ!!」
ゾウジ・ヤマモト「今日はダブルヘッダーだから、この後すぐ試合だ」
ゾウジ・ヤマモト「アンタらも見届けてくれ!!」
ZIA捜査官 ノーマン「・・・」

〇中世の野球場
  さあ、ライナーズ、9回裏2アウトまで追い込まれました。
ゾウジ・ヤマモト(結局ここまで打ててない・・・)
ゾウジ・ヤマモト(このままじゃやっぱりケニーのせいってことになっちまう)
ゾウジ・ヤマモト「そんな事させるかよ!!」
ゾウジ・ヤマモト「うぉぉぉぉ!!」
ゾウジ・ヤマモト「今だ!!」
  打ったー!!
  打球はレフトスタンドに向かってぐんぐん伸びてー

〇野球場の座席
おじいさん「うぉーー、ヤマモト!! 来い来い!!」
おじいさん「ぎゃーーー」

〇中世の野球場
  ホームラン!!
  ライナーズサヨナラーーー!!
  立役者はこの男!!
  ゾウジ・ヤマモト!!
  やはりこの男は”伝説のサヨナラ男”!!!!
ゾウジ・ヤマモト(やったぞ!!ケニー!!)

〇更衣室
ゾウジ・ヤマモト「ケニー!!オレはやったぞ!! お前の力だかなんだか知らないが跳ね除けて活躍したぞ!!」
ゾウジ・ヤマモト「ケニー・・・!?」
ゾウジ・ヤマモト「ケニーがいない!?」
ZIA捜査官 ノーマン「ヤマモトさん・・・」
ゾウジ・ヤマモト「ア、アンタ!! ケニーを知らないか!?確かにロッカーに入れていたはずなんだが!?」
ZIA捜査官 ノーマン「その件なんですが・・・ そのぉ・・・」
イエス・キリスト地蔵「ノーマン・・・ 俺から伝える」
ZIA捜査官 ノーマン「イエス・・・」
イエス・キリスト地蔵「ヤマモトさん、アンタにゃあ信じがたいと思うが・・・ 俺も地蔵だ・・・」
ゾウジ・ヤマモト「はっ!?」
イエス・キリスト地蔵「ケニーは俺が破壊した」
ゾウジ・ヤマモト「そ、そんな!! どうして!!どうしてそんな勝手なマネを!?」
イエス・キリスト地蔵「ケニーに・・・頼まれたんだよ」
ゾウジ・ヤマモト「頼まれたって・・・ 嘘をつくな!!」
イエス・キリスト地蔵「嘘じゃねぇ」
イエス・キリスト地蔵「特異地蔵同士は地蔵念話で意思疎通が出来るんだよ」
イエス・キリスト地蔵「さっきアンタが試合に行く前・・・」

〇更衣室
「・・・してください」
イエス・キリスト地蔵「こりゃぁ・・・地蔵念話・・・ ケニー・・・アンタかい?」
「はい」
「私を壊してください」
イエス・キリスト地蔵「あのにいちゃんは自分の力でなんとかしようと必死にやってるぜ」
「あなたも地蔵なら分かるでしょう。特異地蔵の能力は、努力や気合いで何とかできるものではないと・・・」
「私には分かるんです。私がいる限り、ゾウジはいつまでもマイナーリーグのまま」
「私を贈ってくれたグランマの思いを裏切り続けることになる・・・」
「そんなのは・・・耐えられないんです・・・」
イエス・キリスト地蔵「そうか・・・」
イエス・キリスト地蔵「分かったよ。一瞬で・・・やってやる」
「・・・ありがとうございます」
イエス・キリスト地蔵「・・・アーメン」

〇更衣室
イエス・キリスト地蔵「あいつは・・・ケニーは・・・ お前のためを思って自分が壊される事を望んだんだ・・・」
ゾウジ・ヤマモト「ケニー・・・」
イエス・キリスト地蔵「報いたいと思うのなら・・・」
イエス・キリスト地蔵「メジャーで大暴れしてやれ」
ゾウジ・ヤマモト「・・・」
ゾウジ・ヤマモト「はい、その通りですね」
ゾウジ・ヤマモト「オレは、メジャーで活躍して」
ゾウジ・ヤマモト「グランマに・・・ケニーに・・・」
ゾウジ・ヤマモト「その活躍を届けます!!」
ZIA捜査官 ノーマン「ヤマモトさん応援していますよ」
イエス・キリスト地蔵「にいちゃんならきっと活躍出来るさ」
ゾウジ・ヤマモト(ケニー・・・)
ゾウジ・ヤマモト(”サヨナラ”・・・だな)

〇中世の野球場
キャスター「本日のヒーローは見事なサヨナラホームランを放ったゾウジ・ヤマモト選手です!!」
キャスター「ヤマモト選手!!昇格直後の試合で早速代名詞のサヨナラホームランお見事でした!!」
ゾウジ・ヤマモト「ありがとうございます」
キャスター「この喜びを誰に伝えたいですか!?」
ゾウジ・ヤマモト「天国のグランマに・・・」
ゾウジ・ヤマモト「そして・・・」
ゾウジ・ヤマモト「永遠の友人であるケニーに」

次のエピソード:募集 酒盛り地蔵 オムニバス

コメント

  • ちょ、まさか『マイナーリーグ地蔵』でこんな切ない気持ちになるとは😂
    お見事です👏

  • なんて切なく爽やかなお話…😭
    そして、え!こんな地蔵有りなの?!
    楽しかったです☺️
    いやーほんと話の膨らませ方がお上手👏

  • 地蔵を巡る悲劇…悲しい😭
    そしてしれっと最強格の地蔵出てませんか??
    そういえば偶像繋がり…?妄想が捗りますねぇ😊

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