DetectiveAlchemist −錬金術師の推理−

在ミグ

EP8 番外編 ヴァンの事件(脚本)

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〇古書店
ヴァン「むむむ・・・・・・」
ヘルメス「ご主人、夜遅くまでご苦労さまだ」
ヴァン「おや、なんだい? 変わったお茶だねぇ」
ヘルメス「ジパングに伝わるグリーンティーだ」
ヘルメス「美味しいし、疲れも吹っ飛ぶぞ」
ヴァン「やれやれ。ヘルメスは本当にジパングが好きだねぇ」
ヘルメス「うむ。いつか行ってみたいな」
ヘルメス「サムライ・ファイターや、ムラマサ・ブレードの実物を見てみたい」
ヴァン「私はゲイシャ・ガールと遊びたいねぇ」
ヘルメス「仕事も良いが、そろそろ寝てくれ。もうお疲れだろう?」
ヴァン「ふむ。研究をしているとつい時間を忘れてしまうな」
ヘルメス「仕事ではないのか?」
ヴァン「こいつの研究と開発をしていた」
ヘルメス「パピルス?」
ヴァン「魔法を吸収するパピルスなんだが、どうもうまくいかない」
ヘルメス「どんな風に?」
ヴァン「ふむ。実際に見せた方が早いか」
ヴァン「ちょいと持っててくれ」
ヘルメス「うむ」
ヴァン「↓↙←+P」
ヘルメス「え? 何?」
ヘルメス「うわ!」
ヴァン「ひゃ〜最低出力なのにすっげぇ威力」
ヘルメス「何でそれで魔法が出るのだ!?」
ヴァン「そんな事はどうでも良い」
ヘルメス「いや。良くないだろ」
ヴァン「それよりパピルスを見てくれ」
ヘルメス「んん?」
ヘルメス「確かにキレイさっぱり吸収している。成功ではないか」
ヴァン「うんにゃ。パピルスには何の痕跡も残っていないだろう?」
ヘルメス「ああ。それではダメなのか?」
ヴァン「魔法の痕跡が残る様にしたいんだ。事件捜査の為にね」
ヘルメス「成程。事件が起きた時、犯人がどんな魔法を使ったのかわかれば・・・・・・」
ヴァン「そう。解決に繋がるだろう?」
ヘルメス「流石ご主人だ」
ヴァン「もう少し吸収率を落とさないと。これじゃ使い物にならない」
ヘルメス「おお! 魔法以外にも反応するではないか!」
ヘルメス「イリスが汚した土埃がこんなにごっそり!」
ヘルメス「もしかして鍋の油汚れも!?」
ヴァン「お前、ムチャクチャ家庭的だな・・・・・・」
ヘルメス「これなら全世界の奥様方にも大好評! ご主人、商品化すれば一攫千金のチャンスだ!」
ヘルメス「まさしく錬金術!」
ヘルメス「そうか・・・・・・ これが錬金術の最高峰。王者の秘法(アルス・マグナ)・・・・・・」
ヴァン「違う。そうじゃない・・・・・・」
ヴァン「確かに錬金術の発祥は台所と言われているが・・・・・・」
ヴァン「まあ、何かには使えそうだし、生産しておく・・・・・・ か?」

〇中東の街
  中央都市ラガシュ

〇可愛らしいホテルの一室
ヴァン「ふむ・・・・・・ こりゃまた随分見事なもんだねぇ」
ヘルメス「死亡したのはフリン・ウワキスキー。28歳」
ヘルメス「死因は見たままだ」
ヴァン「成程、心臓を鋭利な刃物で一突きにされている・・・・・・」
ヴァン「犯人は手練のアサシンかな?」
ヘルメス「暗殺者だったら痕跡は残さんだろう」
ヴァン「状況はどんなだい?」
ヘルメス「昨晩、宿の貸し切って、昔の学友と親睦会をしていたらしい」
ヴァン「乱痴気騒ぎかい? 若いねぇ」
ヴァン「それでこんなに散らかっているのか」
ヘルメス「死亡したフリンは相当なプレイボーイだったらしい」
ヘルメス「そこら中から恨みを買っていたとか」
ヴァン「あらま。んじゃ容疑者は多いのかな?」
ヘルメス「一応、被害者との関連、アリバイなどから3人まで絞ってある」
ヴァン「ふむ。流石ヘルメス。優秀だね」
ヴァン「一応聞いておくけど、自殺や事故じゃないよな?」
ヘルメス「ああ。被害者は最近、婚約が決まっていた。相手は資産家の令嬢」
ヘルメス「自殺する理由など皆無だろう」
ヘルメス「事故でないのも一目瞭然だ」
ヴァン「成程ね・・・・・・」
ヘルメス「容疑者を待たせてある。先ずは事情聴取といこう」

〇英国風の部屋
ヘルメス「まずは一人目。エリスさんというのだが、実は・・・・・・」
ヴァン「知り合いか?」
ヘルメス「イリスを預けていた先の保母さんなのだ」
ヴァン「ベビーシッター? イリスをそんな所に?」
ヘルメス「仕方あるまい? 儂もご主人も、育児などという特殊なスキルは持ち合わせていないのだから」
ヴァン「む・・・・・・ まあ良い」
エリス「どうも」
ヘルメス「お久しぶりです」
エリス「イリスさんはお元気ですか?」
ヘルメス「ええ、まあ」
エリス「親子で事件の捜査とは驚きました」
ヴァン「親子?」
ヴァン「おいヘルメス。お前どういう説明を・・・・・・」
ヘルメス「一般の人にホムンクルスなどと言っても伝わらんだろう? だから・・・・・・」
ヘルメス「・・・・・・何で嬉しそうなのだ?」
ヴァン「亡くなったフリン氏についてお伺いしたい」
エリス「彼とは学生時代に付き合っていました」
ヴァン「浮気癖はその時から?」
エリス「ええ。まあ、そういう人でしたから」
ヴァン「でした。過去形ですか」
エリス「未練はありません。よく言うでしょ? 女は上書き保存なんです」
ヴァン「では今は良い人が?」
エリス「仕事が恋人ですね」
エリス「イリスちゃんも含めて、子供と接するのが楽しいんです」
ヴァン「・・・・・・ふむ」
ヴァン(武器を使った可能性もあるが、スマートにやるなら攻撃魔法かな?)
ヴァン「魔法は使えますか?」
エリス「簡単な治癒魔法なら。子供がよく怪我をしますので」
ヴァン「・・・・・・」
ヴァン「・・・・・・随分淡白な人だったな」
ヴァン「未練がないとはいえ、昔の恋人が死んだっていうのに・・・・・・」
ヘルメス「おかしいな。イリスと遊んでいる時は、もっと朗らかで、楽しそうな人なのに」
ヴァン「まあ事件現場で楽しそうにされても困るが・・・・・・」

〇貴族の部屋
ヘルメス「次はアドラステアさんだ」
ヘルメス「つい最近まで被害者と付き合っていたらしい」
アドラステア「はじめまして」
ヴァン「その子は? フリンさんとの?」
アドラステア「いえ。今の主人との子です」
ヴァン「う〜ん・・・・・・」
赤ちゃん「・・・・・・」
ヴァン「あれ? ノーリアクション?」
アドラステア「あの、事件と関係ない事は・・・・・・」
ヘルメス「ご主人」
ヴァン「ああ、申し訳ない・・・・・・」
ヴァン「えぇっと・・・・・・ 魔法は使えますか?」
アドラステア「あの・・・・・・ 私、疑われているんですか?」
ヴァン「いえ、その、関係者全員に聞いていますので・・・・・・」
アドラステア「魔法なんて使えません」
アドラステア「私は犯人ではありません」
ヴァン「では・・・・・・」
アドラステア「あの、子供のオムツを替えたいので・・・・・・ 宜しいですか?」
ヴァン「え? あ、はい。どうぞ・・・・・・」
ヴァン「・・・・・・」
ヘルメス「やっちまったな。ご主人」
ヘルメス「あれじゃ心象は最悪だ」
ヴァン「だって子供見ると構いたくなるんだもん・・・・・・」
ヘルメス「だってじゃない。少々過保護かも知れんが、我が子を護るのは親として当然だろう」
ヘルメス「一旦次行って、改めて話を聞くとしよう」

〇宮殿の部屋
ヘルメス「三人目はヒュブリスだ」
ヘルメス「被害者とは友人だったそうだが、女を取られた事があるらしい」
ヴァン「ドロドロしてんなぁ・・・・・・」
ヒュブリス「あんな奴は殺されて当然だ」
ヒュブリス「俺の他にも恨んでいる人間は幾らでもいるだろう」
ヴァン(動機は十分。だがそれでは余りに短絡的だ)
ヴァン(こいつなら魔法でなくてもやれるか?)
ヴァン「ご職業は?」
ヒュブリス「商人だよ。因みに強力な武器なんて使えないぞ」
ヴァン(ありゃま。見透かされてる?)
ヒュブリス「どうせ俺を疑っているんだろう?」
ヒュブリス「だが無実だ。俺はやっていない」
ヴァン「いえ。関係者全員に聞いていますので」
ヒュブリス「フリンは碌でもない奴だが、結構な戦闘能力を持っていた」
ヒュブリス「殺すのは簡単じゃなかったと思うぜ?」
ヴァン(・・・・・・複数犯である事を示唆している、のか?)

〇可愛らしいホテルの一室
ヴァン「・・・・・・何とも言えん聴取だったな」
ヘルメス「遅れてしまったが現場検証もしなくては」
ヴァン「改めて見ても、見事だね」
ヘルメス「うむ。心臓を一突きにされている」
ヘルメス「他に外傷は見当たらない」
ヘルメス「凶器は何だろうか?」
ヘルメス「攻撃力の高い剣か槍、或いは魔法か・・・・・・」
ヴァン「うんにゃ。寧ろ攻撃力の低いものだろう」
ヘルメス「何故?」
ヴァン「出血量が少なすぎる」
ヴァン「一発で致死に至る傷だ。犯人は相当な返り血を浴びている筈だよ」
ヴァン「あれ?」
ヘルメス「ご主人、矛盾しているぞ」
ヘルメス「返り血を浴びる程の出血があったにも関わらず、現場はこの通りキレイなのだぞ?」
ヴァン「おかしいな・・・・・・」
ヘルメス「まあ被害者は人間だから、油断さえしていれば、攻撃力の低い武器でも殺害は可能だっただろう」
ヘルメス「しかし現場の状況の説明がつかない」
ヴァン「確かに。散らかってはいるが、説明されなきゃ、ここが殺害現場とはわからない」
ヘルメス「別の場所で殺害して、その後ここに運んだ?」
ヴァン「う〜ん・・・・・・」
イリス「おにいちゃ〜ん!」
ヘルメス「イリス!?」
ヘルメス「こんな所に来ては駄目だろう。今は仕事の最中だ」
ヴァン「それよりどうやって来たんだ?」
イリス「ふたりをびこうしてきた」
イリス「ねぇイリスえらい?」
ヴァン「探偵のスキルが振り切れている・・・・・・」
ヴァン「ヘルメス、お前どういう教育をしたんだ?」
ヘルメス「いや、別に普通に・・・・・・」
イリス「ねぇ、えらい? イリスえらい?」
ヘルメス「ああ、そうだな。偉いし、凄いぞ」
イリス「でゅふふふふ・・・・・・ ほめられた❤」
ヴァン「・・・・・・ん? どうした?」
イリス「ぶえぇええええぇぇぇぇっん!!!!」
ヴァン「今度は何だ!?」
ヘルメス「ああ、アレだ。嬉しさの余り、放尿してしまったらしい」
ヴァン「嬉ションすんの!?」
ヴァン「図体はでかいが、中身はまだ子供・・・・・・ というか動物に近いのか・・・・・・」
ヘルメス「よしよし。下着を変えよう」
ヴァン「兄弟というより親子だなぁ・・・・・・」
ヴァン「・・・・・・」
ヴァン「・・・・・・そうか。そういう事か」

〇貴族の部屋
ヴァン「犯人は貴方ですね・・・・・・」
ヴァン「アドラステアさん」
アドラステア「何故私が? どうやって?」
ヴァン「何て事はない」
ヴァン「凶器は極普通のナイフか包丁でしょう」
ヴァン「被害者は酔って寝ていた。一度でも身体を許した貴女の前でなら油断もしていたでしょう」
ヴァン「その隙に殺害した。それだけです」
ヘルメス「しかしご主人、それでは大量の返り血を浴びる事になる」
ヘルメス「事件が起きたのは昨日の夜だ。血液を洗い流すのは簡単ではないし、」
ヘルメス「現場に血痕は殆どなかったのだぞ?」
ヴァン「使ったのはコレさ・・・・・・」
ヘルメス「パンツ!? いやオムツか?」
ヴァン「或いは生理用品か。兎に角、吸水率の高い物なら何でも良い」
ヴァン「子供用のオムツでも代用可能だろう」
ヴァン「貴女ならいつも持ち歩いている筈だ」
ヴァン「被害者の胸に押し当てれば、心臓を刺しても返り血を浴びずに済むだろう」
アドラステア「・・・・・・」
アドラステア「その通りです」
アドラステア「私がフリンを殺しました」
ヴァン「子供は・・・・・・ フリンとの子だね?」
アドラステア「はい。認知してほしかったんです・・・・・・」
アドラステア「結婚なんてどうでも良かった・・・・・・」
アドラステア「でもあの人は自分の婚約が解消されるのを恐れて・・・・・・」
ヴァン「・・・・・・復讐、仇討ちだったのだね?」
アドラステア「はい・・・・・・」
ヘルメス「復讐? 一体どういう・・・・・・」
ヴァン「気が付かなかったか? ヘルメス」
ヴァン「その子供・・・・・・」
ヴァン「もう死んでいるよ・・・・・・」
ヘルメス「なっ・・・・・・!?」
アドラステア「あの人は、間違いだって・・・・・・」
アドラステア「私との関係も・・・・・・ この子が産まれてきた事も間違いだって・・・・・・」
アドラステア「それでこの子を・・・・・・」
アドラステア「だから・・・・・・」
アドラステア「だからっ!!」
ヴァン「・・・・・・」
ヴァン「アドラステアさん。貴女を逮捕する」
ヴァン「探偵としても女としても、私は軽率な貴女を赦せない・・・・・・」
ヴァン「だが・・・・・・」
ヴァン「母親としては、尊敬する」
ヴァン「赦す事は出来ないが、我が子の為に自分の手を汚す事を厭わなかった貴女を尊敬する・・・・・・」
アドラステア「・・・・・・」
ヴァン「世の中には、子供を産みたくても産めない女もいる・・・・・・」
ヴァン「・・・・・・少しだけ、貴女が羨ましい」

〇古書店
ヴァン「やれやれ。後味の悪い事件だったな」
ヘルメス「すっきり爽快という訳にもいかんだろう」
ヴァン「ああ、そーかい」
ヴァン「お、今日は呑んでいいのかい?」
ヘルメス「事件が解決した祝いだ」
ヴァン「おいおい。私を酔わせてどうする気だぁ〜?❤」
ヘルメス「いや、どうもしないが・・・・・・」
ヴァン「いや〜ん❤ ヘルメスに襲われるぅ❤」
ヘルメス「いや、襲わんし、毎晩儂のベッドに入ってくるのはご主人の方だろう・・・・・・」
ヘルメス「というか、もう酔っとるのか?」
イリス「おさけくさい〜!!」
ヘルメス「ああ、済まない。あっちでポーションでも飲もう」
ヴァン「・・・・・・」
ヴァン(悪くないねぇ・・・・・・)
ヴァン(願わくばずっと続いて欲しい・・・・・・)
ヴァン(私はあの子達よりは、先に死んでしまうけれど・・・・・・)
「出来れば、その時が来るまでは・・・・・・」

次のエピソード:EP9 超番外編 勇者ああああの事件

コメント

  • ヴァン探偵の優しさが染み渡る回でした。
    そして、オムツとかフリンスキーとか、要所要所は笑えるのに、内容はしっかりミステリー&サスペンスしていて、スゴい。

  • ファンタジーなのでオムツだろうがなんだろうが、なんでもアリです!w
    しかし、フリン・ウワキスキー……
    すごいネーミングなうえに違和感がないところがいいですw

  • 本編でキャラに愛着湧きまくってるからこういう過去編嬉しい😊いつも通りコンパクトにまとまってるのにしっかり謎解きしてて面白かったです!
    しかし嬉ションヒントから流れるように事件解決とはお見事。「絶対おしっこさせたいだけだろ」とか思ってごめんなさい😭

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