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きせき

エピソード22-菫色の刻・2-(脚本)

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〇城の会議室
黒野すみれ「この写真は・・・・・・」
  刑事が見せてきた写真にはあの胡蝶庵の庭が写っていて、
  写真の中の庭には南田さんにナイフを向けている
  私自身もいた。
刑事「そうなんです。現在、こちらの南田さんと南田さんの主人である東刻さんに」
刑事「連絡をしているのですが、未だに連絡がない状態です」
刑事「そして、この紫のドレスに、ナイフを持っている女性は貴方ですよね?」
  刑事は写真は1枚だけではないと言うと、
  白状しろとばかりに質問を重ねてくる。
黒野すみれ「(確かに、私の写真だ。だが、誰がこんな写真を?)」
  言い方を間違えてしまえば、即、任意同行だ。
  そして、任意同行されると、仮に後で釈放されても、
  タイムロスになる。
黒野すみれ「確かに、私のようですが・・・・・・最近では、簡単に写真加工ができますよね?」
  そう、昔から程度の低いものなら、
  写真のコラージュも作れるし、現在では、本人と
  見紛うほど精巧なものも作れると聞く。
黒野すみれ「出処がはっきりしない写真を見て、私がやりましたって言う訳はないですよね?」
  私は何とか、切り返そうと、写真の提供者を聞く。
  だが、刑事もそんなに簡単に提供者を明かす訳はない。
刑事「あぁ、違法に盗撮されたものではないですよ? 提供者名は差し控えますが、」
刑事「防犯の為につけていたカメラからそのまま、プリントアウトしてもらったものです」
黒野すみれ「・・・・・・」
  私は少し言葉に詰まるも、疑いを逸らそうと、
  彼の名前を出す。
黒野すみれ「では、南田さんが火をつけたのでは? そのナイフも護身用に持っていただけで、」
黒野すみれ「彼に危害を加えるつもりはなかったですし、不審者でないと分かって、」
黒野すみれ「少し話をして、南田さんとは別れましたし・・・・・・」
黒野すみれ「彼なら私と別れた後、火をつけられたのでは?」
  私はボロが出ないように、言葉を重ねていく。
  だが、私も知っている。

〇風流な庭園
南田「今でも、火が死ぬほどこわいものですから・・・・・・」

〇城の会議室
黒野すみれ「(表面的に考えれば、彼が火をつけられた訳がない)」
  そして、それは刑事にも知られていた。
刑事「貴方はご存知なかったかも知れませんが、彼は極度の火恐怖症だったようです」
刑事「15年程前にカウンセラー歴があり、最近も何度か通院されているようでした」
  おそらくだが、南田さんが
  春刻を火事に見せかけて殺そうとでもしたのだろう。
黒野すみれ「(もし、火が克服できれば焼殺も可能だし、仮に克服できなくても今回のように)」
黒野すみれ「(自分にだけはできなかった、と言えるのだから)」
刑事「気の毒に。そんな方を放火犯だなんて、貴方には余程、人の心がないようだ」
  刑事の辛辣な言葉は多分、私を怒らせる為か、
  動揺を誘う為に言っているのだろう。
  だが、ここで感情を剥き出してしまえば、
  刑事の思うつぼだった。
黒野すみれ「では、南田さんより後から月見櫓に来た人がいて、その人がつけたのでは?」
黒野すみれ「それに、仮に私が放火・・・・・・そんなことをしたとしましょうか?」
黒野すみれ「そんなことをする必要、私にあるのですか?」
  私は一応、言質をとられないように、
  「私は放火をした」という言葉を避けると
  刑事は言う。
刑事「だから、貴方には署に来ていただきたいんですよ」
刑事「話す場所が変われば、貴方にも話せることもあるかも知れませんよ?」
  任意とは名ばかりで、連行されるような雰囲気。
  エマさんが口を開き、
  ドアが開いて、弁護士の人が入ってきて、

〇魔法陣2
  あの現在に戻る感覚が僅かにした、その時、

〇城の会議室
  食堂に奇妙な音楽が鳴り響く。
弁護士A「・・・・・・」
エマ「・・・・・・」
黒野すみれ「・・・・・・」
  いかにも戦闘開始というような着信メロディに
  一同無言だったが、
  刑事は苦虫を噛み潰したような顔をし、通話に応じた。
刑事「ちょっと失礼いたします。はい、こちら川西。あぁ、あぁ・・・・・・」
  どうやら、戦闘開始・・・・・・ではなく、
  戦闘終了の着信メロディ、だったらしい。
  私達はそのまま5分程、
  刑事が戻ってくるのを待っていたが、
  別の警官が任意同行の件は一旦、白紙にする、と
  伝達を伝えて、終わった。
弁護士A「別室で少しお話を聞いていて、雲行きが怪しかったので、」
弁護士A「来てみたんですが、良かったですね」
黒野すみれ「えぇ、ありがとうございます。えーと・・・・・・」
弁護士A「これは紹介が遅れました。私は高澤と申しまして」
弁護士A「明石家の第1顧問弁護士を務めております」
  明石家の第1顧問弁護士の高澤信和さんは
  また何かありましたら、と部屋を去っていく。
  高澤さんと入れ替わるように、私の知り合いの
  弁護士の安谷(やすたに)さんも来てくれ、
  トキも来てくれた。
物部トキ「すみれちゃん、大丈夫? ひどいこととかされなかった?」
黒野すみれ「うん、色々、危なかったけど、なんか帰っていったよ」
  何故、帰って行ったかは分からないが、もしかすると、
  私の犯行が不可能である証拠でも
  見つかったのかも知れない。
黒野すみれ「(まぁ、犯行も何も私は放火なんかしてないんだけど・・・・・・)」
  ただ、疑われてしまったら、意外と無実を証明するのは
  難しい。
  それに対して、誰かの犯行を立証するのも
  簡単にいかない。
黒野すみれ「(南田さんもしぶとかったし・・・・・・東刻さんはあっさり認めてたけど)」
黒野すみれ「(そう、あれはたまたま東刻さんが庇ってくれたから追い詰められたんだ)」
黒野すみれ「・・・・・・」
  私は一頻り考えると、安谷さんに謝った。
黒野すみれ「すみません、安谷さんも忙しいのに来てもらって・・・・・・」
弁護士B「いや、まさかあの明石家の方から電話があったからいよいよ俺も明石家の顧問弁護士に?」
弁護士B「なんて思ったけど、別の意味で驚いちゃったよ。このこと、先輩には・・・・・・」
黒野すみれ「あ、できれば、内密にしてもらえると・・・・・・心配、かけたくないので」
弁護士B「分かりました。依頼人の希望なら遵守しなきゃね。じゃあ、すみれちゃん、また!!」
  そう言うと、安谷さんも帰っていき、
  彼と入れ替わるようにエマさんが戻ってきた。
エマ「安谷様もお帰りになられたんでございますね」
  フレンチが続いていることもあり、エマさんが
  飲茶のセットを持ってきてくれる。
物部トキ「わぁ、飲茶だ〜私、好きなんだ。焼売、餃子、春巻、胡麻団子に、桃饅頭!!」
エマ「ふふ、もうお昼時でございますので、お2人さえよろしければ、」
エマ「シェフがミニ餡かけ焼きそばか天津飯もお作りいたしますとのことでございましたが、」
エマ「いかがいたしましょうか?」
物部トキ「うーん、悩むなぁ・・・・・・すみれちゃんはどうする?」
黒野すみれ「・・・・・・」
  よく見ると、飲茶だけでも3人前ありそうに見える。
  その上、小さなサイズとは言え、焼きそばや天津飯が
  食べられるのだろうか。と思うが、トキは乗り気だ。
「そんなに悩むなら、焼きそばも天津飯も作ってもらったら?」
物部トキ「あ、青刻君!!」
明石青刻「やぁ、トキさんに黒野さん。僕もまだ朝、食べてなくて、またご一緒にしても良いかな?」
黒野すみれ「(えっ、青刻さん?)」
  まるで、自分の家のような気軽さで
  彼は食堂へ入ってくると、トキは勿論、と言う。
物部トキ「すみれちゃんも良いかな?」
黒野すみれ「あ、うん。こんなに沢山、食べられるかなって思ってたところだったし・・・・・・」

〇配信部屋
  明石青刻。
  明石家の4男・・・・・・らしいのだが、
  マリさんの真理の封筒が存在しない人物。

〇城の会議室
黒野すみれ「(確か、玄人さんの主人。ゲーマーで、トキとはいとこ同士で、仲も良い)」
黒野すみれ「(あとは指先が器用で、何かの修理とかも得意)」
明石青刻「ん? どうかしましたか? 黒野さん」
黒野すみれ「あ、いや・・・・・・頭巾してる割には食べるの上手だなって・・・・・・」
  本当はそんなことを考えていた訳ではないが、
  青刻さんは納得してくれたようだ。
明石青刻「ははは、まぁ、頭巾は実況者の嗜みみたいなものですからね。慣れてますよ」
明石青刻「最近じゃ、顔出ししている人も多いですけど、普通に大学に通ってますし?」
  私とトキ、それに、春刻より2つ下らしいので、
  大学1年生だろうか。
  確かに、冷酷というのではないのだが、
  その頭巾で隠れた顔は必要以上の情報をこちらに
  与えてきてはくれなかった。

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