逃げ切れ!妖狐ちゃん

戸羽らい

#8 空想(脚本)

逃げ切れ!妖狐ちゃん

戸羽らい

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〇大広間
「王子のキスで目を覚ます前に〜♪」
「お化粧直ししなきゃいけないの♪」
「深夜12時を迎える前に〜♪」
「ベッドの海に沈んじゃおうよ♪」
「狼さんに食べられちゃったら〜♪」
「お腹の中で一緒に踊ろう♪」
格闘家 バロン「森の妖精よりも可憐な 君とめくる日めくりカレンダー」
踊り子 フォクシー「めくるめく回る日々はフィーバータイム 1万マイル先でパントマイム」
商人 ルドルフ「ハンドサインは愛のサンシャイン 反射する君のラブ・スマイル」
踊り子 フォクシー「絶対解けない魔法のドレス エンドレス・ラブ・ボーダーレス」
神父 ランド「2人の愛に国境はない 天国と地獄を結ぶ 赤いリボン」
踊り子 フォクシー「空と海がキスをしたから 嫉妬で夕陽が沈んじゃった♪」
「マジカル・ラブ・トゥナイト♪」
「マジカル・ラブ・トゥナイト♪」
商人 ルドルフ「まだまだ夜は明けへんで〜♪」

〇貴族の部屋
踊り子 フォクシー「・・・」
踊り子 フォクシー「・・・夢か」
踊り子 フォクシー「ご機嫌な夢だったな。なんか良いことありそう」
格闘家 バロン「おはようございます。踊り子さん」
踊り子 フォクシー「フォクシーって呼んでよ」
格闘家 バロン「・・・」
踊り子 フォクシー「朝ごはんできてる?」
格闘家 バロン「はい」
踊り子 フォクシー「・・・なんか起き上がれない。起こして」
格闘家 バロン「どこか体調でも・・・?」
踊り子 フォクシー「おーこーしーてー!」
格闘家 バロン「・・・分かりました」
踊り子 フォクシー「へへーん」

〇洋館の廊下
踊り子 フォクシー「今日からここは私の城だー!がっはっは」
格闘家 バロン「・・・」
商人 ルドルフ「・・・人狼の犠牲者が出たで」
踊り子 フォクシー「ん?」
商人 ルドルフ「アリスはんが自室で死んどった。遺体は無惨に引き裂かれて──」
格闘家 バロン「え・・・」
踊り子 フォクシー「・・・そうなんだ。そういえばそんな子もいたっけ」
踊り子 フォクシー「丁度良いや。お姫様は一人で十分だし」
商人 ルドルフ「フォクシーはん・・・」
踊り子 フォクシー「何?」
商人 ルドルフ「・・・なんでもあらへん」
踊り子 フォクシー「人狼か。君たちの中にいるんだったね」
踊り子 フォクシー「どうでも良すぎて忘れてた」
格闘家 バロン「・・・」

〇おしゃれな居間
神父 ランド「今日の処刑の話をしようか」
踊り子 フォクシー「は?」
神父 ランド「龍神様の取り決めには従わなければならない。人狼を処刑するまで、この悲劇は終わらないよ」
踊り子 フォクシー「悲劇じゃなくて喜劇でしょ。せっかくだし楽しもうよ」
神父 ランド「僕もそう思ってた時期があったけど・・・」
神父 ランド「今はなんか、ね、早く終わらせたいと思ってる」
踊り子 フォクシー「なんでよ。ずっとここで遊ぼうよ」
踊り子 フォクシー「そうだ、私はお姫様。君たちの中から王子様を見つけるゲームをしよう」
踊り子 フォクシー「名付けて、王子探しゲーム」
商人 ルドルフ「しょーもないこと言っとらんで、人狼探そうや」
格闘家 バロン「あの・・・私も人狼候補に含まれるんですか?」
商人 ルドルフ「どうなんやろ」
踊り子 フォクシー「しょーもなくないし、人狼探しの方がしょーもないでしょ」
神父 ランド「・・・とは言え、何もヒントがないからね。正直、手詰まりなのが本音──」
商人 ルドルフ「ほーん、ワイはヒントあると思うけどな」
商人 ルドルフ「『アリスはんが襲撃された』」
商人 ルドルフ「この事実から導き出される答えは、フォクシーはんが人狼っちゅーことや」
踊り子 フォクシー「は〜〜?」
神父 ランド「でも商人さん。貴方昨日、フォクシーさんは人狼じゃないと仰ってませんでした?」
商人 ルドルフ「気が変わった」
商人 ルドルフ「アリスはんはフォクシーはんを怪しんどった。仮にワイや神父はんが人狼なら、そんなアリスはんを襲う意味あらへん」
商人 ルドルフ「アリスはんを残せば、勝手にフォクシーはんの処刑に動いてくれるんやから」
踊り子 フォクシー「君がそれを言うためだけにアリスちゃんを襲ったんじゃないの?」
踊り子 フォクシー「私を陥れるために」
商人 ルドルフ「フォクシーはん目線はそれもあるけど、ワイ目線はワイが人狼じゃないからそれはないねん」
踊り子 フォクシー「は?」
踊り子 フォクシー「意味分からない。君の目線がどうとか私は知らない。私目線が全てなんだから君の主張は全て戯言」
踊り子 フォクシー「君がいくら「地球が回っている」と唱えたところで何の説得力も持たない。天動説も地動説もこの場では一切成立しない」
踊り子 フォクシー「何故なら私を中心に世界が回ってるから。私の見たもの、感じたものが世界の理であり真実である」
踊り子 フォクシー「世界の理を乱す者は即刻処刑されるべきだ。私の城を脅かす反乱分子め、目にもの見せてやる。覚悟しろ」
商人 ルドルフ「・・・」
格闘家 バロン「フォクシーさん、世界は貴方を中心に回ってるわけではありませんよ」
踊り子 フォクシー「・・・」
踊り子 フォクシー「そんなこと知ってるよ」
踊り子 フォクシー「そりゃそうじゃん。だって私にとって都合の悪いことばかり起こる」
踊り子 フォクシー「世界に異を唱えたところで、きっと処刑されるのは私の方。それが現実ってやつでしょ」
踊り子 フォクシー「ふざけんなよ。もう懲り懲りなんだよ」
商人 ルドルフ「情緒がぐちゃぐちゃやな」
商人 ルドルフ「・・・でもま、悪くない反応やった」
格闘家 バロン「・・・」

〇古い洋館
踊り子 フォクシー「・・・こんなとこ、来るんじゃなかった」
踊り子 フォクシー「ずっと天界でぐーたらしてれば良かった」
神父 ランド「フォクシーさん」
踊り子 フォクシー「何?」
神父 ランド「フォクシーさんって、神はいると思う?」
踊り子 フォクシー「いるよ。いるけど、君たちが思ってるようなものじゃないよ」
踊り子 フォクシー「全知全能でもないし、願いを叶えてくれるわけでもない。ただそこに在るものとして祀られるだけ」
踊り子 フォクシー「空虚な存在、それが神。でも人間よりよっぽどマシだと思う」
神父 ランド「僕はね、神が人間を創ったのではなく、人間が神を創ったのだと思ってる」
神父 ランド「人が理想や空想を「神話」という形で記したもの、その中の登場人物が・・・神」
踊り子 フォクシー「・・・」
踊り子 フォクシー「私は九尾の狐だけど、私も人間が創造したものだって言うの?」
神父 ランド「・・・どうだろうね。君の場合は神話ではなく伝承、もっと曖昧な存在のように感じる」
神父 ランド「定説がない。それは裏を返せば、何者にもなれる自由な存在であると言える」
踊り子 フォクシー「自由な存在・・・」
神父 ランド「って、この話も全部僕の空想なんだけどね」
神父 ランド「やっぱあれこれ妄想するのは楽しいや」
踊り子 フォクシー「・・・神父さんの妄想は外れるからね。当てにならないや」
踊り子 フォクシー「一昨日だって、「村長が真だから村長を処刑しよう」とか言っといて外してるし」
神父 ランド「君だって、あんなに自信満々に村長の真を主張しといて、結果外してるじゃないか」
踊り子 フォクシー「だって、村長のあの必死な顔見てたらどうしても本物にしか見えなくて」
神父 ランド「分かる。あの「わしが本物じゃが何か?」みたいな振る舞い、占い師に見えちゃうよね」
踊り子 フォクシー「ほんとそれな」
踊り子 フォクシー「・・・」
踊り子 フォクシー「・・・もし人間が神を創ったのなら、きっと人間って悲しい生き物なんだろうね」
踊り子 フォクシー「空想に縋るしかないほど、寂しくて」
神父 ランド「・・・きっと、誰もが今より広い世界を望んでいるんだよ」
神父 ランド「神のいない世界より、いる世界の方が──」
冒険者 マーベリック「わけわからねぇ話してるとこ悪ぃけど」
冒険者 マーベリック「俺はもうお前ら全員殺すことにしたわ」
冒険者 マーベリック「誰が人狼だろうが関係ない。全員殺して終わりにする」
踊り子 フォクシー「えっ」
神父 ランド「ゔっ・・・」
踊り子 フォクシー「神父さん・・・!」

次のエピソード:#9 眷属

コメント

  • 妖狐ちゃんに逃げ切る気がない…!笑

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