第2話/金属音と呼吸音(脚本)
〇空き地
鎖女だ。
そう思った途端、あたしの体は縫いつけられたように動かなくなった。
呼吸が荒くなり、視界がチカチカする。
女のボサボサの髪に巻きついた鎖が、
顔面を覆う鎖が、
まっかな夕陽に照らされて、にぶい光沢を放つ。
×××「・・・はあ────、はあ────・・・」
ジャ、ラッ
近づいてくる。
苦しげな呼吸、金属音。
鎖女が、こっちに来る。
あたしは一歩も動けない。
やがて、生あたたかい吐息を感じられる距離まで近づいて、
×××「・・・はあ──・・・ ・・・めろ・・・」
えっ?
今、何か言って・・・・・・
〇空き地
莉々子「・・・ぁっ!!」
遠くから車の急ブレーキの音が届いた瞬間、あたしの体が感覚を取り戻した。
莉々子((逃げなきゃ!))
ダッ!
踵を返して、全力で駆け出した。
足がもつれそうになったけど、なんとか堪える。
早く、早く人がいる場所へ──
〇通学路
はあっ、はあっ、と自分の荒い呼吸と足音だけが聞こえる。
それ以外は、何も聞こえないし、何の気配もない。
莉々子「なんっ、で・・・!!」
莉々子「なんで誰もいないの!?」
今はまだ、夕方の5時半。
いつもなら、買い物帰りの人とか、自転車で帰宅途中の親子とか、たくさんの人とすれ違う。
それに、
莉々子「なんで・・・っ、こんな走ってるのに」
莉々子「家に着かないのっ!?」
家に向かってひた走る。
いつまたあの『音』が耳に届くかと怯えながら。
走る、
走る、
・・・なのに、
!?
〇空き地
莉々子「なん、で・・・」
気づくと、あの空き地に戻っていた。
ズズッ、と後ずさりをした時だった。
ジ
ャ
ラ
ッ
〇空き地
鎖がこすれ合う、金属音がした。
・・・はあ────・・・
・・・はあ────・・・
苦しげな呼吸音。
鎖女が、あたしの眼前にいた。
莉々子((い、いやだ・・・))
逃げようとした。
でも、手が、足が、鎖で拘束されたように、動かない。
×××「・・・はあ────・・・ ・・・ろ・・・」
鎖女の苦しげな吐息。
何か言葉が混ざっている。
×××「・・・やめろ・・・」
えっ?
何を、と尋ねようとした、ら
×××「やめろ」
×××「やめろ やめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめ」
女はひたすら繰り返す。
息も絶え絶えに、それだけを繰り返す。
×××「やめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめr」
しわがれた声と金属音が重なって、共鳴して、鋭い針になってあたしの鼓膜を突き刺す。
・・・女の鎖まみれの手が、
あたしの頬に伸びてきた。
──!?
その時だ。
甲高い音が、まっかな空間を破るように鳴り響いた。
臨場感たっぷりのホラーシーンですね。恐ろしすぎる閉鎖空間(?)に囚われた第2話でしたが、ここから救いの手が差し伸べられるのか、次話が楽しみです。