死神に出会ったギャルの寿命はあと24時間でした

山﨑歩帆

第四話 華の岐路(脚本)

死神に出会ったギャルの寿命はあと24時間でした

山﨑歩帆

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〇レトロ喫茶
  緊張した面持ちの華が、窓際のソファに座っている。
  すると、白爪純が息を弾ませながら華のもとへとやってきた。
白爪純「お待たせして、ごめんなさい。 えっと・・・『サエヒナ』さん」
貝沢華「華でいいです」
白爪純「なんだか大変なことになってるみたいですね。いいんですか? 出歩いて」
  華の謝罪動画は瞬く間に拡散され、朝のニュース番組でも取り上げられていた。
貝沢華「どうしても会いたい人がいるからって、無理して出てきたんです」
貝沢華「今も、対応に追われてると思います」
白爪純「対応って・・・返金とかですか?」
貝沢華「はい。あと、取引先とか。でも、『なんとかする』って、雪・・・あ、仕事仲間は言ってくれたんです」
白爪純「・・・ふうん。で? 私に用って、なんなんですか?」
  華は唇をかみしめ、純を見る。その目は侮蔑の色に満ちていて、明らかに華を見下していた。
貝沢華「純さんにしたことを謝りに来ました。 ごめんなさい」
  華が深々と頭を下げると、純の口元がふっと和らぐ。
白爪純「・・・二年前、でしたっけ?」
白爪純「華さんがサエヒナとして活動してた時、あたし『サエヒナさんの服、デザインさせてください!』って、お願いしたんですよね」
白爪純「今思うと、無謀すぎて笑えないです」
貝沢華「・・・・・・」
白爪純「でも・・・あの時華さん、『一緒にブランド立ち上げよう』って、言ってくれた」
白爪純「華さんにとっては、たくさんあるネタの中のひとつだったかもしれないけど・・・ほんとに、嬉しかった」
白爪純「だけど『サエヒナ』さんは・・・私との約束を破った」
貝沢華「あの時、動画で消化したダイエットサプリ紹介が『効かない』って炎上して・・・」
貝沢華「あたしはサエヒナのアカウントを削除して、逃げた。本当にごめんなさい」
白爪純「確かにショックだったし、ずっと、華さんを許せない自分がいたのはほんとです」
白爪純「でも、いい勉強になったし。 それに、こんな風に謝りに来てくれただけで、もう十分です」
貝沢華「純さん・・・」
  その時、姿を消していたタロスケが純の隣に現れる。
  タロスケはリスト内の、消えかかった純の名前を指さす。
白爪純「だから、もう大丈夫。謝りに来てくれて、ありがとうございました」
  純の言葉とともに、彼女の名前が風に吹かれるようにして消えていく。
  タロスケは華の方を見ると、にっとした笑顔を見せた。
白爪純「でも、よく私のこと見つけられましたね」
貝沢華「名前を検索したらすぐ出て来ましたよ、純さんのサイト。デザイナーとしての活動、続けてたんですね」
白爪純「細々とですけど、売り上げも伸びてるんですよ?」
白爪純「ある意味、華さんに騙されちゃったから、なにくそっていう気持ちがより燃え上がったのかもしれません」
貝沢華「・・・ごめんなさい」
白爪純「あーもう、だからもういいんですってば!」
白爪純「・・・そうだ、華さんが私に会いに来たこと、SNSにあげてもいいですか?」
貝沢華「え、どうして・・・?」
白爪純「ここまで来たら、全部ぶっちゃけちゃいましょうよ! その方が絶対いいですって!」
貝沢華「それは、そうかもしれないけど・・・」
タロスケ(こちらの方もなかなかの策士のようですね)
貝沢華(どういう意味?)
タロスケ(おそらく、華さんの名前を利用して、あわよくば自分の名を世間に知ってもらおうと考えているのでしょう)
貝沢華(ああ、なるほど・・・)
白爪純「華さん? どうしたの? ぼーっとして」
貝沢華「ごめん、なんでもない」
白爪純「それで、いいですよね? 絶対悪いようにはしませんから!」
貝沢華「わかりました。任せます」
白爪純「やったー! じゃ、写真! 写真撮りましょうよ! 今度出る新作、着てきてよかったー!」
タロスケ(はぁ。これだから人間は嫌なんです)

〇駅前ロータリー(駅名無し)
  純と別れたのち、華はタロスケとともに駅へと向かっていた。
タロスケ「華さん! これ、見てください!」
  意気揚々とした様子で、タロスケはリストを掲げる。
貝沢華「ほとんどの名前がぼやけてる・・・」
タロスケ「食えない人であることは確かですが、『悪いようにはしない』というのは、本当だったようですね」
タロスケ「華さんの誠意が伝わったんですよ」
貝沢華「そう、なのかな・・・」
タロスケ「・・・ちょ、華さん?」
貝沢華「何よ」
タロスケ「いや、一晩でこんなにも人は変わるものなのかと、驚いていたんです」
貝沢華「これだけ色々あったら、変わらざるをえないでしょうが」
タロスケ「へぇー、そういうものなんですか」
貝沢華「他人事かよ」
タロスケ「そんなわけないじゃないですか! あなたの変化を私は喜ばしく思っています」
貝沢華「どうだか」
タロスケ「おや・・・? どうやら、くっきりと名前が刻まれているのは、あと一人のようですよ?」
貝沢華「あいつか・・・」
タロスケ「そうです、あなたのお母様です」
貝沢華「全力で諦めたい」
タロスケ「何言ってるんですか、ここまで来て! 悔いを残したまま最期の時を迎えたくはないでしょう?」
貝沢華「それは、そうだけど・・・」
タロスケ「どうせあと数時間で死ぬんです。 パーッと死にたい気持ちになってから死にましょうよ!」
貝沢華「そんな励ましで前向きになれる人、この世にいないと思う」
タロスケ「行きましょうよ、華さん。ね?」
貝沢華「わかった! 行くわよ、行けばいいんでしょ!」
タロスケ「ええ! それでは早速、出発しましょう」

〇街中の道路
  その後二人は、30分ほどかけて、華の実家がある最寄り駅へとやってきた。
タロスケ「いやー、近くて本当によかったです。 岐阜とか福井とかだったらどうしようかと思いました」
貝沢華「なんでその二県をチョイスしたんだよ。 ほら、さっさと行こ」
タロスケ「はい!」

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