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エピソード21-菫色の刻・2-(脚本)

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〇宮殿の門
  とある秘術で巨万の富を築いた明石家の前当主
  明石刻世。
  彼女には血が半分だけ繋がった妹がいたが、
  彼女の妹には明石家の秘術の適性が殆どなかった為、
  明石家へ出て、海外へ渡っていったという。
  そして、明石家に残り、
  ただ1人の当主候補である刻世が21歳になった日。
  明石家には亡き先代に代わり、新しい当主が誕生した。
  彼女は明石家の当主として、十ニ分に暗躍し、結婚。
  婚約相手との間に朝刻という男児が生まれたが、
  婚約相手は登山中に行方不明になってしまう。
  そして、より多くの後継者を、と彼女は声を無視できず
  後に2人目の夫になる男性と結婚し、東刻を出産。
  ただ、東刻が誕生する前に彼はこの世を去り、
  後に春刻が生まれるが、
  3番目に結婚した夫も
  1番目に結婚した夫が実は生存していたことで、
  行方知れずとなったという。

〇貴族の部屋
黒野すみれ「・・・・・・」
  私はいつの間にか、眠ってしまっていたのか、
  顔や髪、それにドレスをそのままに寝ていて、
  慌てて身なりを整える。

〇西洋風のバスルーム

〇貴族の部屋
黒野すみれ「(あ、洗濯から服が戻ってるみたい)」
  私は部屋のクローゼットに入ったいつも着ている服を
  着た。
  パリッと洗濯された服は確かに気持ちが良かったが、
  私の頭の中は色んなもので散らかっていた。
黒野すみれ「(えーと、総合すると、朝刻さんと青刻さんは両親が同じ兄弟で)」

〇城の会議室

〇貴族の部屋
黒野すみれ「(東刻さんと春刻はそれぞれ彼らの父親が違っているってことになるのかな?)」

〇黒

〇新緑

〇貴族の部屋
黒野すみれ「(何だか、今時、ドラマでもそんな家族構成、見ないけど、ありえることなんだよな)」
黒野すみれ「(東刻さん、確かにショックだったかも知れない。春刻が当主だなんて)」
  おそらく、マリさんの資料では
  幾分かマイルドに書かれているのだが、
  1番目の夫の子である朝刻さんと青刻さん、
  2番目の夫との子である東刻さん、
  3番目の夫との子である春刻で
  誰が次期当主に相応しいかという派閥が存在し
  特に、1番目の夫との子である朝刻さんや青刻さんを
  次期当主へ推挙する声が多かったのだという。
黒野すみれ「(気休めかも知れないけど、例えば、朝刻さんが当主ならさ)」
黒野すみれ「(あそこまで思い詰めなかったんじゃないかな? あの人もさ)」

〇銀閣寺

〇貴族の部屋
黒野すみれ「・・・・・・」
  私はやるせない気持ちになり、
  もう読む必要のなくなった東刻さんと南田さんの
  資料を資料の山とは別に分けて、重ねる。
黒野すみれ「(彼らの言い分を信じて良いか分からないけど、)」
黒野すみれ「(もし、本当なら他にあの庭の毒針を仕掛けた人がいる)」
黒野すみれ「(あと少なくとも、あの人の淹れてくれた飲み物には毒は入っていなかったことになる)」

〇広い厨房
玄人「青刻様から黒野様に飲みものを持っていくよう言われてまして」

〇配信部屋

〇貴族の部屋
黒野すみれ「(あと櫓の仕掛けは確かに違ってたけど、オルゴールの爆発は無視できない)」

〇古民家の居間
玄人「青刻様はああ見えて、面倒見も良いし、手先も器用でして」

〇城の会議室
物部トキ「青刻君、修理とかもプロレベルだから直してもらえないかなと思ってね」

〇貴族の部屋
黒野すみれ「(爆弾なんて作れるか分からないけど、そんな凝ったものじゃなければ作れるって)」
黒野すみれ「(何かで読んだな・・・・・・しかも、この屋敷を吹き飛ばすような威力は要らない)」

〇地下室
  春刻を亡き者にできれば良い・・・・・・それだけなら。

〇貴族の部屋
  私は『明石青刻について』の資料を探す。
  だが、なかなか見つからない。
黒野すみれ「(おかしいな・・・・・・青刻さんの封筒がないなんて・・・・・・)」
  少し前に玄人さんの資料を読んでいたし、
  名前だけだと誰かは分からないが、
  明石姓ではない使用人らしき氏名の入った
  封筒まであるのに見つからない。
黒野すみれ「(これはリエさんのだし、こっちは親族の人かな? 刻って字が名前に入っているし)」
  結婚してたり、家を出たりして苗字が変わっている人も
  いるのか、人名が書かれたものだけで軽く30通程ある。
黒野すみれ「(高澤信和(たかざわのぶかず)、物部語(かたる)・・・・・・)」
黒野すみれ「(トキの家族まである)」
  あまり関係なさそうなトキの親族まで
  出てくるが、いよいよ青刻さんの名前が
  書かれた封筒は出てこなかった。
黒野すみれ「(まさか、この資料って誰かに盗られたものがあるんじゃあ・・・・・・)」
  一応、この部屋には私の世話をするという名目で
  リエさんが出入りをしていた。
  それ以外の時は私がいるし、
  食事等でいない時も施錠もしていたように思うのに。
黒野すみれ「(あとは元々、なかったのか・・・・・・)」

〇貴族の部屋

〇貴族の部屋
黒野すみれ「(いや、あのマリさんがそんなミスをしないか)」
黒野すみれ「(意図的に渡さなかった・・・・・・という可能性はあるけど・・・・・・)」
黒野すみれ「はぁ・・・・・・そう言えば、私、秋川さんの封筒って見てなかったかも」
  秋川さんの捜査状況については胡蝶庵の庭に行く前に
  読んでいたが、
  まだ彼自身の封筒は読んでいなかったのではと思い、
  私は封筒に手を伸ばした。
  トントントン。
  封筒から資料を取り出す直前、
  ドアを叩く音が聞こえてくる。
  私は「どうぞ」と言うと、エマさんが立っていた。
エマ「おはようございます、黒野様」
  普段ならリエさんが来るところなのだが、エマさんが
  来ていて、私は挨拶をしながら、妙な胸騒ぎがする。
  そして、その予感は嫌なことに的中してしまった。
黒野すみれ「え、昨日の夜ですか?」
エマ「えぇ、昨日の夜、胡蝶庵から火の手が上がったことはご存知ではありませんでしょうか?」
黒野すみれ「えぇ、トキから聞きましたけど・・・・・・」
  エマさんは珍しく言い淀んだように、
  実は、警察の方が見えられていて・・・・・・と言う。
黒野すみれ「(まぁ、確かに私が放火したって疑われても仕方ないか)」

〇風流な庭園
  昨日の夜の真相を知るのは限られた者達だけなのだから。

〇貴族の部屋
エマ「申し訳ございません。お客様にこのようなことをしていただくことになりまして」
黒野すみれ「いえ、私は昨日は部屋にいなかったので、疑われても仕方ないですよ」
黒野すみれ「あ、すみません。もしもの時の為に、こちらに連絡していただいても構いませんか?」
  私は財布から1枚の名刺を取り出す。

〇シックなリビング

〇貴族の部屋
  私の知り合いの人の名刺で何かあったら・・・・・・と
  くれたものだった。
エマ「かしこまりました。必ずご連絡いたします」
  連絡に加えて、エマさんは明石家の顧問弁護士にも
  既に事情を話していて、
  いつでも私の釈放に向けて動けると言ってくれる。
黒野すみれ「ありがとうございます。では、行きましょうか」
エマ「はい、警察の方は食堂でお待ちになっております」

〇城の会議室
  食堂には既に1人の男性がいて、窓の外を見ていた。
黒野すみれ「(春刻の家の方を見てる、のか?)」
エマ「お待たせいたしました。黒野様をお連れいたしました」
  刑事らしき男性はエマさんの言葉で私の方を見る。
刑事「ああ、すみませんね。わざわざ来ていただいて・・・・・・」
  警察の者で川西(かさい)です、と彼は名乗ると、
  私の名前等を確認し、昨日の夕べの行動を聞いてきた。
黒野すみれ「昨日は少し眠れなかったので、屋敷を出て、空を見ていました」
刑事「ほう、わざわざ旧・明石春刻邸まで?」
黒野すみれ「えぇ、昼間、春刻さんの家へ行った時に月見櫓があると聞いて」
  おそらく、リエさんにも事情を聞いているのだろう。
  本当は現場には行かなかったと言いたかったが、
  仕方ない。
刑事「で、黒野さんが月見櫓にいた時間は?」
黒野すみれ「あ、えっと、正確には分かりませんが、確か23時半頃には本邸に向かってましたね」
黒野すみれ「本邸に着いたのは0時前で、」
黒野すみれ「春刻の家からここまで歩いて30分くらいかかったと思うので」
刑事「おや、帰りは車を呼ばなかったのですね」
黒野すみれ「えぇ、リエさんにまた迎えに来てもらうのも気がひけましたし、」
黒野すみれ「歩けない距離でもなかったので」
黒野すみれ「少し歩いて疲れたら、眠れるかと思ったんです」
  目の前の刑事は思ったよりは
  荒々しい口調ではなかったが、嫌な聞き方をしてくる。
  あわよくば、ボロを出さないかと狙っているような
  そんな聞き方だった。
刑事「成程、ご友人には疲れたと誘いを断っておきながら不思議な人ですね」
  川西はトキのことも引き合いに出し、
  本当は見せたくはなかったのだけど、と
  写真を取り出した。

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