死神に出会ったギャルの寿命はあと24時間でした

山﨑歩帆

第二話 華の涙(脚本)

死神に出会ったギャルの寿命はあと24時間でした

山﨑歩帆

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〇女性の部屋
貝沢華「でもさ、悔い改めるって、具体的にはどうすればいいわけ?」
タロスケ「よくぞ聞いてくれました。 どうぞ、こちらをご覧ください」
  タロスケは満面の笑みを浮かべながら、数枚の紙がまとめられた書類を取り出す。
貝沢華「何、これ」
タロスケ「華さんが『傷つけてきた人リスト』です。約1,000人ほど、いらっしゃるようですね」
貝沢華「1,000人? 何それ、一人一人に謝りに行けってこと? すでに詰んでんじゃん、それ」
タロスケ「ですが、一人でも多く減らすことができれば、その分罪は軽くなります」
貝沢華「でもそれって、一人でも残ってれば地獄行きってことでしょ?」
タロスケ「ええ。そうなりますね」
タロスケ「ですが、諦めてはいけません。 さ、身近な方からどんどん謝って、悔い改めていきましょう!」
  タロスケに促され、華はリストに連なる名前に目を通していく。
貝沢華「っていうか、知らない名前ばっかなんだ けど」
タロスケ「はぁ。あなたは本当に、察しの悪い方ですね」
タロスケ「そのリストに載っている方のほとんどが、あなたの動画を見てインチキ商品をつかまされた人達です」
貝沢華「なるほどね」
タロスケ「ですが、いらっしゃいませんか? あなたにとても近しい人」
貝沢華「近しい人ね・・・」
  パラパラとリストをめくると、華は「藤堂雪」、「貝沢冴子」という名に目を留める。
貝沢華「・・・・・・」
タロスケ「藤堂雪さんは、あなたの同居人ですよね? どうです? 最初の謝罪は彼女にしてみては?」
貝沢華「嫌」
  断定するようにそう言うと、華はリストを投げ出しベッドに顔をうずめる。
タロスケ「どうしてですか?」
貝沢華「なんであたしが、謝んなきゃいけないの よ! あいつのせいで、あたしは・・・!」
  華が声を荒げたのとほぼ同じタイミングで、コンコンと、ノックの音が響く。
雪「華ちゃん・・・? どうしたの? 大丈夫?」
貝沢華「・・・・・・」
雪「入るよ・・・」
  おそるおそるゆっくりと、ドアが開かれる。
貝沢華「何」
藤堂雪「ごめんね? 話し声が聞こえたから、誰 かいるのかなって・・・」
貝沢華「見てわかんない? 誰もいないじゃん」
藤堂雪「そ、そうだよね・・・ごめん」
タロスケ(華さん)
貝沢華「うわっ!」
藤堂雪「えっ!? どうしたの、華ちゃん?」
貝沢華「なんでも、なんでもないって!」
タロスケ(驚かせてしまってすみません。今私は、あなたの頭の中に直接話しかけています)
貝沢華(マジ、で…?)
タロスケ(はい。色々とご事情はあるかと思うのですが・・・自分の罪を認め、悔い改めてはみませんか?)
貝沢華(だから嫌だって! だって、こいつは・・・)
藤堂雪「華ちゃん、大丈夫? なんだか、とっても苦しそうだよ? ・・・あれ?」
  雪が、華のそばに落ちていたリストを手に取る。
藤堂雪「これ、もしかして顧客リスト・・・? どうして、華ちゃんが持ってるの?」
貝沢華「・・・・・・」
タロスケ(悔い改めるのです。 今生に悔いを残さぬように)
貝沢華「・・・っ」
  華はきゅっと目を瞑り、雪の瞳を見据える。
貝沢華「その人達のこと、騙しちゃったから。 だから、そのことをちゃんと認めて、謝ろうと思って」
藤堂雪「え?」
貝沢華「まずは、そうだな・・・謝罪動画撮ろうと思ってる」
藤堂雪「華ちゃん? 何言ってるの? 冗談だよね?」
貝沢華「本気。こんなこと冗談で言うわけないじゃん」
藤堂雪「急にどうしたの? なんで?」
貝沢華「もう決めたの! だから、その・・・あんたにも謝る。今までごめん」
藤堂雪「え・・・?」
貝沢華「あたしの勝手であんたを付き合わせた。 ほんとごめん」
藤堂雪「もしかして華ちゃん、今更いい人間になろうとしてる? 無理なんだよ、そんなの」
藤堂雪「華ちゃんは、今までずーっと、私を利用してきたじゃない。これからだって、そうでしょ?」
貝沢華「あんたに協力は求めない。でも・・・万が一、あたしに何かあったら、きっと迷惑かけることになると思う。だから・・・」
  華はおもむろに立ち上がると、木目調のチェストから、通帳を取り出した。
貝沢華「5,000万ぐらい入ってると思う。 これ、あんたに預ける」
藤堂雪「えっ!? 5,000万円!? 華ちゃん、ほんとにどうしたの? まるで、明日にでも死んじゃうみたい」
貝沢華「・・・・・・」
藤堂雪「いいの? こんな大金私に預けて。全部もらっちゃうかもしれないよ? 今までの迷惑料として」
貝沢華「あんたがそうしたいならしょうがないよ。とにかくあたしは・・・」
  その時、華の瞳が大きく見開かれる。
貝沢華「ゆ、雪・・・!」
  雪の身体からぼんやりと灯る光。そしてその輝きは、雪が呼吸するごとにより眩くなっていった。
貝沢華(なん、で・・・? なんで雪の身体が光ってんの!?)
タロスケ(どうやら、雪さんの未来を変えてしまったようですね)
貝沢華(そんな・・・ど、どうすればいいのよ!?)
タロスケ(私に聞かれても困ります。そして華さん? ここでひとつ、残念なお知らせがあります)
貝沢華(残念って、何が?)
タロスケ(あなたの身体の光もどんどん強くなっていっています)
貝沢華(え・・・)
タロスケ(あなたを殺して、自分も死ぬつもりなんでしょうね)
貝沢華(嘘、でしょ・・・)
タロスケ(はぁ。出世のチャンスを、またひとつ逃してしまう・・・どうして私は、こんなにも運に恵まれないのでしょう)

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