縄文の薔薇

Akizuki

第3話『風の精霊を訪ねて 後編』(脚本)

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〇屋敷の大広間
セナ「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・」
「イヒイヒイヒ」
セナ「・・・っ」
セナ「次から次へと現れてキリがない」
セナ「一体、どうなってるんだ?」
セナ(イブキは・・・無事だろうか?)

〇新緑
  第3話
  『風の精霊を訪ねて 後編』

〇屋敷の寝室
フウ「痛っ!!」
フウ「なぜ我を平手打ちするのじゃ」
イブキ「お前の態度が煮え切らないからだろ!!」
イブキ「お前にとって家族や妹は 大事な存在じゃないのかよ!?」
フウ「それは・・・」
イブキ「期待に応えられなくて辛いのは 俺にだってよく分かるよ」
イブキ「ほら、俺ってムラ長の息子だろ?」
イブキ「いつもムラのみんなからの視線に なんとなく期待がまじってて」
イブキ「息がつまる感じするんだよな」
イブキ「よく逃げ出したくもなるけど・・・」

〇睡蓮の花園
イブキ(俺には・・・)
イブキ(セナとスイがいるから・・・)
スイ「ムラ長の息子だからって 調子に乗らないでよね」
スイ「精霊も人間も失敗くらいするんだから そんな気張ることないでしょ」
セナ「イブキだけが責任を負うことないよ」
セナ「ムラのことはムラのみんなで 考えればいいんだから」
セナ「僕たちはいつでもイブキの味方だし」
スイ「そうそう」
セナ「それに・・・」
セナ「もしイブキに期待を押し付けて 傷つけるムラ人がいるなら」
セナ「僕が呪っておくから、安心して」
スイ「で、出た! セナのスパダ・・・」
スイ「エッヘン・・・つい心の声が・・・」
スイ「もうセナったら、呪いはやりすぎ」
イブキ「そうだよ」
イブキ「でもありがとな」
イブキ「2人の気持ちが嬉しいよ」

〇屋敷の寝室
イブキ「あの時、思ったんだ」
イブキ「もし周りの期待に押しつぶされそうに なっても」
イブキ「セナとスイが味方でいてくれれば きっと俺は大丈夫だって」
イブキ「その代わり、何があっても あの2人のことだけは守りたい」
イブキ「フウにとってリュウちゃんは そういう存在じゃないのか?」
フウ「何があっても・・・守る」
イブキ「俺の言葉に心が動かなくても・・・」
イブキ「このドングリクッキーと引き換えに 力を貸してくれないか?」
イブキ「セナが必死に戦ってるのに 俺は足手まといにしかならないからさ」
イブキ「精霊の力を持ってるフウが羨ましいよ」
イブキ(本当は俺自身がセナと肩を並べて 一緒に戦えればよかったのにな・・・)
フウ「イブキ・・・」
フウ「・・・分かった」
フウ「そのドングリクッキーをくれるなら 力を貸してやっても構わないぞ」
フウ(などと強がった言い方をしてしまうが 本当は我も、里のことが心配じゃ)
フウ(リュウにもしものことがあったら)
フウ(自尊心のせいで妹を失うなんて・・・ アホらしい!)
フウ「我の力で里を救いに行かねば!!」
イブキ「やっとやる気になったみたいだな」

〇神社の石段
「イヒイヒイヒ」
フウ「こやつらか!!」
イブキ「あぁ、中にもたくさんいる!!」
フウ「はっ・・・!」
「ヒィィィィ」
フウ「1体1体はそこまで強くないが」
フウ「次から次に現れてくる」
「イヒイヒイヒ」
リュウ「もう、しつこい!!」
フウ「リュウ!!」
リュウ「お兄ちゃん! 来てくれたの!?」
フウ「当たり前じゃ。ケガはないか?」
リュウ「うん、助けてくれてありがとう」
リュウ(よかった。 お兄ちゃんが戻ってきてくれて)
リュウ「里のみんなも戦ってて無事だよ」
イブキ(リュウがさらわれてなくてよかった)
「イヒイヒイヒ」
イブキ「うわっ、出た・・・」
イブキ(さっきまで俺に近づいてこなかったのに)
イブキ(加護の守りが切れたのかも)
セナ「イブキに手は出させない!!」
イブキ「セナ・・・!」
セナ「ハァ・・・ハァ・・・」
セナ「イブキ、フウを連れてきてくれたんだね」
イブキ「あぁ・・・」
イブキ(加護の守りが切れたから もう一度って言いたいけど・・・)
イブキ(またセナの唇が・・・イヤイヤ! 俺はなんで身構えてんだよ!?)
セナ「イブキ? 大丈夫?」
イブキ「お、おう・・・!」
イブキ「それよりコイツら一気に倒せないのか?」
セナ「次から次へと地面から生えてくるんだ まるで雑草みたいに・・・」
イブキ「雑草・・・地面から生えてくる。 つまり植物みたいな奴らってこと?」
イブキ「それなら・・・」
イブキ「おい、フウ」
フウ「なんじゃ?」
イブキ「風の精霊の役目のさ 花を散らせる術ってやつ」
イブキ「あれをかけてみたらどうだ?」
セナ「彼らの生態が植物に似てるなら たしかに効果はあるかもしれない」
セナ「さすがイブキ! 頭いいじゃん!」
イブキ(ちょっとは俺も役に立ててるのかな?)
フウ「花を散らせる術・・・か」
フウ「それなら我よりじいさまに頼んだ方が」
リュウ「きゃーーーーー!」
フウ「リュウ!!」
イブキ「フウ、迷ってる暇はない」
イブキ「今、お前の力でリュウを助けないと!!」
フウ「・・・っ」
フウ(もしまた失敗したら・・・)
フウ(でも、ここで動かなければ リュウの身に危険が・・・)
フウ「よしっ、イチかバチかじゃな!!」
フウ「フルフルフル、草花を散らせよ!!」
「ヒィィィィィィィ!!」
リュウ「!!」
イブキ「奴らがみんな消えてく」
セナ「やっぱりイブキの言う通り」
セナ「植物が化けた何かだったみたいだね」
フウ(植物の彼らが散っていく・・・)
フウ「我の力で散らせることができたのじゃな」
リュウ「そうだよ、お兄ちゃん。よかったね!!」

〇森の中
イブキ「フウもやる気を取り戻してくれて よかったよな」
セナ「うん」
セナ「一件落着・・・とはならなかったけど」
イブキ「そうだな」
イブキ(結局、奴らの正体は不明だし)
イブキ(フウのばあちゃんが言ってたことも 気になるんだよな)

〇屋敷の大広間
フウの祖母「あの者たちの出現で思い出しました」
フウの祖母「五千年前の事件の時も 何者かが藁でできた人形を使い」
フウの祖母「心を持たない魔物に化けさせ 若い精霊たちをさらわせていたのです」

〇森の中
セナ「今日の彼らはリュウちゃんのような 若い精霊をさらおうとしてたんだよね」
イブキ「スイも同じ目に遭ったってことだよな」
イブキ「アイツ・・・もっと強いと思ってたけど」
セナ「あの湖にはスイしか棲みついてないから 今日みたいに助けを呼べなかったのかも」
イブキ「俺たちが気づいてやれれば・・・」
イブキ「でも後悔してる暇はないよな」
イブキ(フウのばあちゃんによると)
イブキ(この人形の藁は 隣のムラで取れるものらしいし)
イブキ(まずは隣のムラにたどり着かないと)
イブキ「俺たちで必ずスイを連れ戻すぞ」
セナ「うん、そうだね!」
セナ「あ、そういえば」
セナ「そろそろ加護の守りが切れたよね?」

〇黒
  チュッ・・・

〇森の中
セナ「ははっ、そんなに緊張しなくても」
イブキ「だ、だってセナがいきなり・・・」
イブキ「す、する時は前もって言えよな」
イブキ(軽く触れられただけなのに・・・ おでこがめっちゃ熱い)
イブキ「これってもっと長時間効くようには できないのか?」
セナ「方法があるにはあるけど・・・」
イブキ「なら最初からその方法にしてくれよ」
イブキ(いちいち触れられてたら 俺の心臓が持たなそうだし)
セナ「でも・・・」
イブキ「ん?」
セナ「この加護の守りはもともと シャーマンの妻のためのものなんだ」
セナ「特別な力がある分、シャーマンには敵も 多いでしょ」
セナ「だからか弱い妻は狙われやすい」
セナ「そんな妻を守るために・・・」
  セナの長い指がイブキの顎をすくう。
イブキ「え・・・」
イブキ(セナの顔がせ、迫ってくる・・・)
セナ「愛の口づけを交わすことで シャーマンは妻に守りを授ける」
セナ「これが加護の守りを長時間効かせる 一番の方法だよ」
イブキ「愛の・・・口づけ・・・」
イブキ「そ、それはさすがに無理だよな! 俺はセナの妻じゃないし!!」
セナ「うん、だから今は・・・」

〇黒
  チュッ・・・

〇森の中
セナ「これで我慢してね♪」
イブキ「な、なんで2回も触れたんだよ・・・」
セナ「なんとなく?」
イブキ「はぁ!?」
  つづく

次のエピソード:第4話『土の精霊を助けて 前編』

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