第4話『土の精霊を助けて 前編』(脚本)
〇森の中
イブキ「隣のムラはこっち方面で合ってるのか?」
セナ「太陽を背に向けて歩けって おばあさんは言ってたけど・・・」
ヒマリ「あの・・・」
「???」
ヒマリ「もしかしてセナ様ですか?」
セナ「! 君は・・・」
イブキ「誰?」
セナ「えっと・・・僕の・・・」
セナ「・・・許嫁」
イブキ「いいなずけ?」
ヒマリ「は、はい・・・」
ヒマリ「ヒマリと申します」
イブキ「・・・」
イブキ(へ、へえ、そうなんだ・・・)
イブキ(なんか・・・モヤッとすんな)
〇新緑
第4話
『土の精霊に導かれて』
〇森の中
セナ「まさか僕たちの探してる藁の原産地が ヒマリさんのムラだったとは」
セナ「道案内助かるよ」
ヒマリ「い、いえ・・・」
ヒマリ「結婚前にセナ様が尋ねてくだされば きっと父も母も喜びますわ」
イブキ(女の子らしい可愛い照れ方)
イブキ(セナはああいう子が好きなのか?)
イブキ(なんで俺はまたモヤモヤしてんだ?)
イブキ(結婚とかセナに先越されんのが 男として羨ましいだけだ)
イブキ「うん、絶対にそう」
セナ「イブキ? 1人でブツブツ何を言ってるの?」
イブキ「べ、別に・・・?」
イブキ「それよりヒマリちゃんは俺たちを 案内してて大丈夫なのか?」
イブキ「急いでたみたいだけど」
ヒマリ「だ、大丈夫です・・・ そこまで急ぐ用事でもないので」
イブキ「でも、その様子だとやっぱり 何か困ってたんじゃ・・・」
ヒマリ「・・・」
ヒマリ「もしお話したら・・・」
ヒマリ「シャーマンのお力を貸していただけますか?」
セナ「内容によるけど」
ヒマリ「実は私・・・友達の精霊を探していて」
イブキ「どんな精霊なんだ?」
ヒマリ「ドンという名の土の精霊なのですが」
ヒマリ「数日前から急に姿を消してしまったのです」
「!!」
イブキ「セナ、もしかして・・・」
セナ「スイの件と同じかもしれないね」
イブキ「実は俺たちも友達の精霊を探して ここまで来たんだ」
ヒマリ「そうなんですか!?」
セナ「リュウちゃんも狙われてたし、 いろんなムラで精霊が失踪してるのかも」
セナ「ちなみにドンさんの特徴は?」
ヒマリ「えっと、土の精霊で・・・」
〇谷
強くて力持ちで、
獣なんかもすぐ倒しちゃって・・・
でも、とっても心優しくて・・・
いつも私のそばにいてくれて・・・
そんな彼が私は・・・。
〇森の中
ヒマリ「!!」
ヒマリ「い、今のは違くて・・・」
ヒマリ「友達としてそばにいてくれたという 意味です」
セナ「落ち着いて。僕に弁明してくれなくても 大丈夫だから」
セナ「君はそれだけドンさんのことを 大切に想ってるんでしょ?」
ヒマリ「は、はい・・・」
イブキ(セナのやつ余裕だな)
イブキ(婚約者が他の男の話をしてるってのに)
セナ「僕らの友達とドンさんは 同じ場所にいるかもしれない」
セナ「一緒に連れ帰るって約束するよ」
ヒマリ「セナ様、ありがとうございます」
ヒマリ「ドンの居場所について、 少し思い当たる節があるのですが」
イブキ「割れた土器?」
ヒマリ「ドンは土器を作るのが得意でした」
ヒマリ「いなくなった日。 この土器のかけらが洞窟の前に落ちてて」
ヒマリ「その洞窟が不気味なので 怖くて私は中に入れなかったんです」
イブキ「洞窟に何か手がかりがあるかもな」
イブキ「俺たちで中に入ってみるか」
セナ「うん、そうしよう」
セナ「もう日も暮れてきたし ヒマリさんはムラに帰ってて」
ヒマリ「・・・ありがとうございます」
ヒマリ「ムラへのみちしるべに 地面にドングリを落としておきますね」
セナ「助かるよ。ありがとう」
イブキ「・・・」
セナがヒマリに向けた優しい笑みは
イブキを複雑な心境にさせる。
その理由をイブキはもちろん
知るはずがなかった・・・。
セナ「・・・彼女、僕と結婚したくないのかも」
イブキ「そ、そうか? でもドンってやつのことは友達だって」
セナ「うなじに刺青が入ってた」
セナ「猪に似た絵柄の・・・」
イブキ「猪って確か土の精霊の使いだって・・・」
イブキ(セナの婚約者だけど 本当はドンが好きってことなのか?)
イブキ「・・・ていうかセナ」
セナ「ん?」
イブキ「彼女のうなじなんていつ見たんだよ」
イブキ「女子(おなご)のそんなとこ 覗き見するなんて・・・」
イブキ「この変態野郎!!」
セナ「たまたま見えただけだよ」
セナ「見えたからって、特に興味ないし」
イブキ(興味が・・・ない?)
イブキ(婚約者なのにか? 普通はもっと焦ったりするもんじゃ)
イブキ「ホントお前って変わってるよな」
セナ「そう?」
セナ「あっ、イブキ肩に枯葉が・・・」
イブキ(な、なんで触られただけでビクッて)
セナ「・・・イブキは入れ墨いれたりしないでね」
セナ「このうなじ・・・すごく綺麗だから」
セナの指がイブキのうなじを這うように撫でる。
イブキ「へ、変な触り方やめろよ!」
イブキ「他人のうなじばっかり見やがって やっぱりセナの変態!!」
上手くごまかそうとしても
イブキの胸の鼓動は
しばらく高鳴ったままだった。
つづく