高見何でも屋さんにようこそ!

おさかな

フィアンセを探せ!(脚本)

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〇シックなリビング
  高見何でも屋さんのとある朝。
美桜「ふぬーっ」
  美桜はとても頑張って力んでいる。
美桜「んむーっ」
高見「ほら、ここでボンッ」
美桜「ボンッ!!」
  美桜の元気のいい声が部屋に響いた。
高見「・・・」
美桜「・・・」
美桜「ねー、ししょー? これホントになんか出来てるの?」
高見「出来てる出来てる。 まぁ今日もそこそこだな」
美桜「むー?」
高見「ほら、朝飯にするぞ。 準備してこい」
美桜「ん!」
  パタパタと美桜がキッチンへ駆けていった。
水蛇「・・・ふむ。なるほどな」
  水蛇が意識を巡らせる。
  結界の張られた家の中ではなくすぐ外側で、低級で害のありそうな幽霊がボンッしていた。
水蛇「高見の能力もかなりのものだが、 美桜のこちら側に干渉する能力は、抜きん出て高いわけか」
高見「ああ。 だから護身用の簡単なやつだけ教えてる」
水蛇「だから「師匠」というわけか」
高見「・・・それだけじゃない」
水蛇「む?」
高見「・・・何でもない。 ただ教えるのは最低限だ。美桜には、出来ればこちら側には関わってほしくない」
水蛇「・・・そうか。 ただお前と共にいる以上、関わらないのは無理だろう。最低限以上も必要なのでは?」
高見「・・・理解はしている」
水蛇「それなら良い。 そんな時が来ないことを祈るばかりだが」
高見「ああ」
美桜「ししょー!サラダはマヨネーズでいい? マヨネーズだよね?」
高見「青じそドレッシング」
美桜「なんでー?! ヘビさんもマヨネーズがいいよね?!」
水蛇「・・・ふむ。昨日はドレッシングだったから今日はマヨネーズにしておこう」
美桜「やったー!」
高見「・・・」

〇シックなリビング
  食後。
美桜「ししょー!今日はなんか依頼ある?」
高見「そうだな。 前に猫探しの依頼を受けた座増(くらます)さんから、また依頼が来てるな」
美桜「ザマスだ!」
高見「おいやめろ、ホントにそう呼びそうになるだろうが」
美桜「ザマスがどうしたの?」
高見「詳細は聞いてないが、また猫関連での依頼らしい」
美桜「ししょー!私も行きたい!」
高見「まぁ、猫なら危険はなさそうだしな。 いいぞ」
美桜「やったー!あの猫ちゃん元気かな?」
  高見は出力した依頼メールを眺めつつ、そういえばと美桜を見た。
高見「美桜、お前宿題は終わったのか?」
美桜「はうあ!」
高見「・・・」
美桜「・・・えと、えとぉ。 あとちょっとなんだよ?」
高見「座増さんのところに行くのは昼の1時だ。 それまでに宿題が終われば連れてってやる」
美桜「ほんと!? ちょー頑張る! だからししょー先行っちゃやだよ?!」
高見「分かった。分かった。 早くやってこい」
美桜「あい!」
  美桜はバタバタと足音を立てながら、猛ダッシュで自分の部屋へ走って行った。
水蛇「猫?」
高見「ああ。以前受けた依頼で、迷子の猫を探したことがあって。 その時の依頼主が、また何か猫絡みで頼みたいらしい」
水蛇「なるほど。私も行っても?」
高見「・・・お前は力のない人間には見えないし、構わない。 代わりと言っては何だが、──」
高見「美桜にお前の箱を持たせる。 大丈夫だとは思うが、万一の場合は美桜を頼みたい」
水蛇「うむ、了解した」

〇西洋の城
美桜「わー!ザマスのお家ホントにおっきいね!」
水蛇「家というより城だな」
  無事に時間までに宿題を終わらせた美桜は、高見と水蛇と一緒に座増の家までやってきた。
  高見が家の前のインターホンを押す。
  使用人らしき男との受け答えの後、やたら大きな玄関が開いて、大きな女が外へ出てきた。
高見「ザ・・・、ゴホン。 座増さん、ご無沙汰してます。 あれからキングちゃんはどうですか?」
座増「あらぁ高見さん、その件は本当に助かったわ。 キングちゃんならここにいるわよ」
キングちゃん「にゃーん」
美桜「わー!猫ちゃん!触ってもいいですか?」
座増「もちろんよ!」
美桜「わーい! もふもふ!」
キングちゃん「にゃーん!ゴロゴロ・・・」
美桜「かわいー!」
高見「・・・それで、座増さん。 今回の依頼はどういった内容で?」
座増「今回はこのキングちゃんのフィアンセを連れてきていただきたいのよ!」
「!?」
座増「もうこの子もいい歳なのよ。 だからこの子に相応しいフィアンセを連れてきてちょうだい」
高見「ええと、それは本人が自分で見つけ出してきた方が良いのでは・・・?」
座増「本来ならね。でもこの子少し体が大きいでしょう? フィアンセを探しているだけでご近所で騒ぎになっちゃって」
座増「ご近所にはこれ以上迷惑はかけられないもの。 だから高見さんにお願いしようと思って」
高見「はぁ・・・」
キングちゃん「・・・ったくいい迷惑だよな。 俺は別にそんなの望んでねぇっての」
美桜「しゃべった?!」
高見「美桜、黙ってろ」
座増「あらぁ?何か?」
高見「ああ、いえ。何でも。 その、キングちゃんは相手を望んでいるんですか?」
座増「それはそうよ! いつの時代も愛は普遍で素晴らしいものよ!私のキングちゃんもそうにちがいないわ!」
キングちゃん「ちがうんだけどなー」
美桜「・・・」
  美桜が困った顔で高見を見ている。
高見「・・・」
高見「分かりました。探してきましょう」
美桜「!?」
座増「あらぁ、是非お願いしますわ! 素敵なフィアンセをお願いね!」
高見「・・・はい。 その、キングちゃんのタイプを知りたいので、キングちゃんとしばらく話しても?」
座増「ええ、どうぞ。この庭の中ならどこでも大丈夫よ。 じゃあ私、これからアフタヌーンティーの時間だから失礼するわ」
高見「はい、ありがとうございます」
  座増は高見と美桜に満足げな笑みを見せ、城の中へと帰って行った。
美桜「ししょー、大丈夫なの?」
高見「・・・取り敢えず話をしないことには始まらないだろ」
キングちゃん「つかマジなんなん? 俺一度も嫁が欲しいなんて言ったことねぇけど」
  キングちゃんは不満げに漏らす。
美桜「めっちゃ普通に喋ってる」
高見「水蛇と一緒だ。 所謂普通の人には聞こえない」
美桜「そっかー」
  美桜はキングちゃんのお腹あたりをもふもふしている。
キングちゃん「っていうかあれなん? 二人とも俺の声聞こえるやつ?」
高見「そうだな」
美桜「うん!」
キングちゃん「マジか。 じゃあザマスに言っといてくれよ、俺は嫁さんなんか欲しくないって」
高見「普通の人間は、動物が喋るなんて信じてくれない。 俺たちが嘘つき呼ばわりされて終わる」
キングちゃん「マジかー」
  キングちゃんは項垂れた。
美桜「猫ちゃん、こんな子が可愛いとかない?」
キングちゃん「あー? そりゃあ可愛くておっぱい大きくて尻も大きめのアイドルとかは好みだけど?」
高見「好みが完全に中年のおっさんだな」
美桜「えとえと、性格とか?」
キングちゃん「そりゃあ優しくて気立が良くて尽くしてくれる娘なら言うことないけどなー。 そんな子いないし、独り身でいいのによー」
高見「どこに出しても恥ずかしくない中年のおっさんだな」
美桜「ああう・・・」
  美桜は首を横に振って、ぐりぐりと高見の背中に頭突きを始めた。
水蛇「・・・一応聞くが、彼は猫であっているのか?」
高見「見た目は完全に熊だけど、生物学上は猫らしいな」
キングちゃん「おーよ。よろしくなー」
水蛇「うむ」
高見「・・・取り敢えず中年のおっさん好みのアイドルでも探してくるか?」
美桜「猫ちゃんのお嫁さんは猫ちゃんじゃないの?」
キングちゃん「猫は好みじゃねぇんだよな」
美桜「猫ちゃんなのに・・・」
  美桜の頭をぽんぽん撫でて、高見は取り敢えず依頼を果たすべくキングちゃんの花嫁探しを行うことにした。

〇繁華街の大通り
  一行は中年のおっさん好みのアイドルを探しに街までやってきた。
美桜「猫ちゃんのお嫁さんいるかなー?」
アイドル①「こんにちは! そこのお兄さん、今ならしっぽり3,000円ですよ!如何です?」
美桜「ししょー、しっぽりって何?」
高見「お前にはまだ早い」
美桜「む?」
水蛇「ふむ。彼女の体格はアレの理想通りではありそうだが・・・?」
高見「絶対尽くすタイプじゃないだろ。 次だ次」
アイドル②「こぉんにちわぁ〜。 そこのおにーさん、今なら20万ぽっきりで夢の世界へゴーアヘッですよぉ?」
アイドル②「あ、ちなみにぃ、これはGo aheadとゴー(いく)、アヘッ──」
高見「美桜聞くなよ耳が腐るぞ」
美桜「ほえ?」
水蛇「ふむ。なかなか良さそうな娘ではないか?」
高見「お前の好みは聞いてないからな」
美桜「ヘビさん、ああいう人が好きなの?」
水蛇「うむ、好みだ」
美桜「ごーあへっ」
高見「こら!」
美桜「ひゃう?!」
  急に高見に両耳を軽く引っ張られ、美桜は逃げるように高見の後ろ側へ回った。
高見「・・・どいつもこいつも。次だ次」
アイドル③「んっふっふっふ。 お兄さんいい男ねぇ、私ワイルドな男だぁいすきなの」
高見「・・・」
美桜「・・・」
高見「これでいいか」
美桜「ししょー?!」
  美桜は慌てて高見を振り返った。
高見「体格はいいだろ」
美桜「そうかも?!」
水蛇「まぁ豊かだな」
高見「まぁ多分尽くすだろ」
美桜「そうかな?!」
水蛇「分からんが、ワイルドな雄が好みならワンチャンありそうだが」
高見「よし。 ・・・なぁあんた、あんたに紹介したい男がいるんだが」
アイドル③「あらぁ?私に?」
高見「ああ。あんた好みのワイルドな男だ。 ちなみにデカい家もついてる」
アイドル③「んまぁ?!」
美桜「う、うそは言ってないけど」
水蛇「ものは言い様だな」
  はらはらと美桜と水蛇が見守る中、豊かなタイプのアイドルは目を爛々に輝かせた。
アイドル③「是非紹介してちょうだい!今すぐに! Harry up!」
美桜「はわわ」
高見「分かった。 ついてきてくれ」
  こうしてキングちゃんのお嫁さん候補を連れて、一行は座増の城へと戻った。

〇西洋の城
高見「お待たせしました。 キングちゃんのフィアンセをお連れしました」
美桜「はわわ・・・」
座増「んまぁ!早速紹介してくださいな!」
高見「ええ。どうぞこちらへ」
アイドル③「はじめまし──」
「・・・!!」
座増「じゅ、珠里亜(じゅりあ)・・・?!」
アイドル③「姉さん・・・?!」
高見「・・・まじか」
  高見は表情を極力動かさずに、やっちまったという顔をした。
  美桜は心配そうに高見の足にしがみついている
座増「珠里亜、あんたなんで・・・」
アイドル③「姉さん、私念願のアイドルになったのよ。 でも全然売れなくて、今日クビを言われちゃった」
アイドル③「そうしたらこのお兄さんに紹介したい男がいるって言われてね」
座増「高見さんが? ・・・まさか、」
高見「キングちゃんに伺ったんです。 豊かなボディラインで気立のいい尽くすタイプが好みだと」
座増「・・・た、たしかに珠里亜はヴィーナスを思わせるようなボディラインで、おまけに性格も良いわ」
座増「高見さん!貴方の審美眼、まさに本物ね! 貴方がそういうなら間違いないわ! 珠里亜こそキングちゃんのフィアンセに相応しい!」
アイドル③「ね、姉さん・・・」
座増「そうと決まれば早速パーティの用意をしなくちゃね。珠里亜、貴方もキングちゃんに相応しいドレスを選びなさい」
アイドル③「は、はい!」
座増「さぁ忙しくなるわ! ああ高見さん!今日は本当にどうもありがとう。依頼料は色をつけて振り込んでおくわね」
高見「あ、はは。ありがとうございます」
座増「とんでもないわ。 じゃあ、悪いけど忙しくなるから私はこれで」
高見「ええ。ご依頼ありがとうございました」
アイドル③「ありがとうお兄さん。 私幸せになるわね」
高見「ええ、どうぞお幸せに」
  二人は慌ただしく城の中へと消えて行った。
キングちゃん「・・・」
美桜「あ」
キングちゃん「・・・」
美桜「えと、」
高見「・・・あー、悪かったよ。  でも悪い人ではなさ──」
キングちゃん「なんて美しい・・・ まるでミロのヴィーナスのようだ」
「・・・」
キングちゃん「感謝するぜ人間。あんな良い女と巡り会えるなんて思ってもみなかった」
「・・・」
キングちゃん「彼女との明日からが楽しみでならねぇ! こうしちゃいられねぇ!彼女と離れてる時間が一秒でも惜しいからな!」
「・・・」
キングちゃん「とにかくあんがとな! 達者でな!」
高見「・・・ああ」
美桜「えと、幸せそうでよかったね?」
高見「そうだな。 本人たちはみんな幸せそうだったしな?」
水蛇「まぁ幸せの形は人それぞれだしな」
「・・・」
高見「なんか食って帰るか」
美桜「ん。 私ドーナツ食べたい」
水蛇「ふむ。あの輪っかか。 私も食べたい」
高見「ああ。じゃあドーナツ屋行くか」
  三人で同じような顔をしながら帰り道をゆく。
  今日もまた、迷える誰かを救ってしまったのだった。

次のエピソード:雑梱包の呪いの箱

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