#6 後悔(脚本)
〇洞窟の深部
踊り子 フォクシー「・・・ここで身を隠そう」
踊り子 フォクシー「数日もすれば・・・全部終わってるだろうし」
踊り子 フォクシー「・・・」
踊り子 フォクシー(疲れた。お腹は空いてるのに食欲が湧かない)
踊り子 フォクシー(天界にいた頃はこんなことなかったのに)
踊り子 フォクシー(地上に降りたことで、だんだんと私の身体も変化している)
踊り子 フォクシー(魔法は使えないし、空を飛ぶこともできない)
踊り子 フォクシー(これが人間になるってことなのかな。だとしたら、すごく不便)
踊り子 フォクシー(この場所も・・・臭いし、蒸し暑いし、天界の方がずっと快適だった)
踊り子 フォクシー「はぁ」
踊り子 フォクシー「何やってるんだろうな、私」
???「あっ」
踊り子 フォクシー「・・・誰かいるの?」
格闘家 バロン「・・・」
格闘家 バロン「すみません。見なかったことにしてもらえますか?」
踊り子 フォクシー「・・・」
踊り子 フォクシー「格闘家さん、処刑されたんじゃなかったの?」
格闘家 バロン「されました。でも私、ちょっと特殊な体質でして・・・」
踊り子 フォクシー「生きてたんだ・・・」
格闘家 バロン「できれば、誰にも言わないでほしいです。私が生きてることがバレると、ちょっとややこしいことになるので」
踊り子 フォクシー「・・・言わないよ」
踊り子 フォクシー「言う相手もいないし」
踊り子 フォクシー「私、人狼の疑いをかけられてさ。逃げてきたんだよね」
格闘家 バロン「・・・」
踊り子 フォクシー「今更私が何を言ったところで誰も信用してくれないし、もう何もかも手遅れだし」
踊り子 フォクシー「人狼がどうとかもう全部どうでもいいや。勝手にやっててって感じ」
格闘家 バロン「・・・その気持ちは分かります。私も最初の夜、同じ気持ちでした」
格闘家 バロン「ですが、もう少しやりようがあったのでは・・・と多少、後悔もしています」
踊り子 フォクシー「後悔・・・か」
格闘家 バロン「はい。結局私は、村のために何もできなかったので」
踊り子 フォクシー「・・・そうだ。私やりたいことがあったんだ」
格闘家 バロン「やりたいこと?」
踊り子 フォクシー「やらずに後悔するより、やって後悔した方がいいよね」
踊り子 フォクシー(私はもう、自分に正直に、やりたいことをやって・・・)
踊り子 フォクシー(最後に後悔する。その繰り返しで生きていこう)
踊り子 フォクシー(もう全部、どうでもいいのだから)
私は彼に抱きつき、そのまま顔を近づける
格闘家 バロン「ちょっと踊り子さん! 何を!」
踊り子 フォクシー「目瞑って」
格闘家 バロン「う──」
踊り子 フォクシー「──────」
彼の唇から伝わる体温、匂い
こもった熱気と合わさって、頭の中が溶けてしまいそうになる
私は今、やりたいことをやっている
そのせいで、後悔しても、かまわない
〇洞窟の深部
相手は誰でも良かった
異性なら誰でも良い。私は本能に導かれるようにして彼と重なる
本来、神獣の私はこういった“動物的な本能”など持ち合わせていないのだけど
これも私に生じた、身体の変化の一つなのだろう
私はかつて、人間の恋愛感情に憧れていたが・・・
実際手にしたものはそんな甘酸っぱいものではなく
心の渇きを癒すための水分補給
単なる生理的欲求に過ぎなかった
フォクシー「もうこのまま2人でさ、全部終わるまでここで過ごそうよ」
バロン「・・・」
バロン「貴方は本当にそれでいいのですか?」
フォクシー「いいよもう。やりたいことはやったし」
バロン「これが貴方のやりたいことなんですか?」
フォクシー「うん。楽しいし、気持ちいいし、もうこれだけで十分だよ」
バロン「私は貴方が満足しているようには見えません」
フォクシー「満足してるよ。格闘家さんは身体を鍛えてるだけあって、その・・・上手いし」
バロン「そういう話をしているのではありません。もっと他にやりたいことがあったのでは?」
フォクシー「やりたいこと・・・か。何だろうね、分からないや」
フォクシー「人間らしいことがしたい。ただそれだけだったのに、今ではそれが何なのか分からないよ」
バロン「・・・」
バロン「・・・そうですか」
〇霧の立ち込める森
冒険者 マーベリック「クソ・・・どこ行ったあの野郎」
村娘 アリス「見つからないねー」
冒険者 マーベリック「こうなったら長期戦だ。ぜってーぶっ殺す」
村娘 アリス「村の外に逃げたのかなー?」
冒険者 マーベリック「いやそれはない。龍神の加護とやらでこの村は封鎖されてる」
冒険者 マーベリック「人狼を殲滅するまで結界は解かれない」
村娘 アリス「何それ。めんど」
村娘 アリス「要するに私たちはこの村に監禁されてるってこと?」
冒険者 マーベリック「人狼共々な。人狼を殺すことが俺たちの使命なんだから仕方ない」
村娘 アリス「・・・だる」
冒険者 マーベリック「なんだその態度? だるいってお前人狼か?」
村娘 アリス「いや普通にだるいでしょ。人狼のせいでこんな茶番に付き合わされて」
冒険者 マーベリック「ふん。俺はチャンスだと思ってるがな」
冒険者 マーベリック「人狼をこの手でぶち殺す絶好の機会だ。無駄にはできない」
村娘 アリス「あっそ。じゃあ人狼退治は君に任せるよ」
村娘 アリス「私はのんびりしてようかな。時間なんていくらでもあるし」
冒険者 マーベリック「・・・?」
〇貴族の応接間
商人 ルドルフ「・・・へー。こんな部屋あったんやなー」
神父 ランド「まるで貴族の応接間ですね」
商人 ルドルフ「村は貧乏なのに村長は金持ちなのおもろいなー」
神父 ランド「ここは元々村長の家ではなく、空き家になっていたところを村長が勝手に住んでいたらしいですよ」
商人 ルドルフ「何それおもろ」
商人 ルドルフ「ワイはこの村にあまり詳しくないから、そないな事情知らんかったわ〜」
商人 ルドルフ「おもろいじーちゃんやなあ。もうおらんけど」
神父 ランド「ところで、商人さんは何しにこの村へ?」
商人 ルドルフ「とあるビジネスに噛ませてもらったんやけど」
商人 ルドルフ「顧客も取引先もみんな死んでもうたんよな」
商人 ルドルフ「もうここにおる意味もないし、とっとと国に帰りたいわ〜」
神父 ランド「ビジネス・・・ですか」
神父 ランド「それってお医者様が関わってたりします?」
商人 ルドルフ「おーよく知っとんなー。さてはあんた、情報通やな?」
神父 ランド「世間は狭いので、私の耳にも入ってくるだけですよ」
商人 ルドルフ「でもまあ、上手い話には裏があるやないけど、投資するだけして全部無駄になってもうたなあ」
神父 ランド「おまけに人狼騒ぎに巻き込まれる、と」
神父 ランド「災難ですね」
商人 ルドルフ「あー、そのことやけどなー」
商人 ルドルフ「人狼、ワイやで」
神父 ランド「え?」
商人 ルドルフ「だから、ワイが人狼やで」
艶っぽい展開!?
からの
「えぇえええぇえええ!?」
になってます。
どうなってしまうのだろう……!
文字通り「とあるビジネスに“噛ませて”もらった」わけですね…
夢のにんじんにも意味があったんだ!
やっぱり前回の夢は内心をしっかり描写していていいなあと思います。
イレギュラーの多いカオスな盤面になってきて、おもしろいですね。クランツorゴードンとルドルフの狼確定だと初日の犠牲者なしはどういうカラクリだったのかも気になってきました。