P6・迷子の水竜(脚本)
〇けもの道
密猟者2「あいつ、どこ行った!?」
密猟者3「あの水竜は高く売れるぞ! 絶対逃がすなよ!!」
ローレン「あのヒトたち、どうして ボクを追い掛けてくるんだろう」
ローレン「怖いよぅ・・・」
密猟者2「みーつけた!!」
密猟者3「よし、向こうに追い込むぞ!!」
ローレン「何するの!?」
密猟者3「おらっ、あっちに行きやがれ!!」
ローレン「わぁあん!! 痛いよう!!」
〇森の中
ローレン「うぅっ、お姉ちゃん・・・」
密猟者1「来やがったな」
密猟者1「おらぁっ!!」
ローレン「わあぁっ!?」
ローレン「どうしていじめるの? ボク、何も悪いことしてないよ?」
密猟者1「何言ってんだこいつ 水竜のくせに手応えねえなァ」
密猟者3「おい、鱗に傷を付けるなよ 価値が下がるぞ」
密猟者1「わーってるって」
密猟者1「おら、もう一発──」
ローレン「──っ!!」
密猟者1「うわッ!?」
密猟者3「ぐっ!!」
ルカード「その子から離れろ!!」
キオル「やー、早く出てきてくれて助かったわ」
キオル「これで無駄に山の中を歩き回らなくて済む」
密猟者2「何よあんたたち! 後から来て獲物を横取りしようっての!?」
密猟者2「そうはさせないわよ!!」
ミア「魔法は使わないで欲しいなぁ──っと!!」
密猟者2「キャッ!」
ミア「手荒なことしてごめんなさいね」
密猟者1「クソッ、調子に乗るなよ!」
ルカード「それは──」
ルカード「こっちの台詞だっ!!」
キオル「はい撤収~」
「うわぁぁあーっ!?」
キオル「お疲れっした~」
ルカード「きみ、大丈夫?」
ローレン「・・・助けてくれたの?」
ルカード「うん」
ローレン「どうして?」
ルカード「どうしてって言われてもなぁ」
ローレン「お姉ちゃんは 人間は全部敵だって言ってたよ」
ローレン「見掛けたらぶっ殺せって」
キオル「ずいぶん物騒な姉ちゃんだな」
ルカード「でも、きみはあいつらに 攻撃しようとしなかったろ?」
ローレン「魔王様が、 意味もなく争っちゃいけませんって」
キオル「魔王がそんなことを!?」
ルカード「きみは魔王様の言い付けを守ったんだね、 えらいな」
ローレン「ほんと?」
ルカード「ああ!」
キオル「それよりお前、 こんなところで何してたんだよ」
ローレン「ボク・・・」
ローレン「ひっ・・・ぐすっ・・・」
ローレン「うぇぇえええーん!! お姉ちゃぁぁぁあああん!!」
ルカード「わーっ、キオルが泣かした!!」
キオル「俺のせいか!?」
ミア「よしよし、いい子だから泣かないで」
ミア「お姉ちゃんとここに来たの?」
ローレン「ううん」
ローレン「一人でスライムさんを探してて、 気が付いたらここにいたの」
キオル「これはあれだな」
ルカード「迷子ってやつだね」
ローレン「迷子・・・」
ローレン「うわぁぁああああーんっ!!」
ミア「二人とも不用意なこと言わないの!!」
ルカード「ごめん・・・」
キオル「何で俺らが怒られなきゃなんねーんだ」
ミア「どっちの方から来たのか分かるかな?」
ミア「私たちが送ってあげる」
キオル「おい、ミア!?」
ルカード「それはいいね、一緒に行こう!」
キオル「ルカードまで!!」
ルカード「この子、上級魔族だろう?」
ルカード「うまくいけばこの子の親と会って 情報交換ができるかもしれない!」
キオル「顔見た途端に殺されるわ!!」
ローレン「ボク、今日はお姉ちゃんと一緒に 魔王様に会いに来てたの」
ローレン「だからお城に戻らないといけないの」
キオル「・・・マジかよ」
キオル「どうすんだ、ルカード?」
ルカード「手土産、どこか途中で買えるかな?」
キオル「そこじゃねーわ!!」
〇巨大な城門
ヴィエリゼ「この辺りにはいないみたい・・・」
ローレット「エリゼ!」
ローレット「だめ、城の中にもいない」
ヴィエリゼ「どこに行っちゃったのかしら・・・」
ダーリナ「ヴィエリゼ様! ローレット!」
ダーリナ「門番が、数刻前に一人で出て行く ローレンを見たそうです!」
ヴィエリゼ「城の外に!?」
ヴィエリゼ「すぐに探しに──」
ルカード「たのも〜!」
ヴィエリゼ「ルカード!?」
ローレット「モブ顔勇者とその一味!?」
ローレット「──って」
ローレット「ローレン!?」
ローレン「わぁ〜ん! お姉ちゃ〜ん!!」
ローレット「あんた今までどこに・・・」
ローレット「っていうか、 何であのモブたちと一緒にいるのよ!?」
ヴィエリゼ「どうしてここに・・・」
ルカード「会いに行くって言ったろ?」
ルカード「・・・って言えたらカッコいいんだけど、 今日は本当に偶然なんだ」
ヴィエリゼ「何があったの?」
ルカード「密猟者が出没する場所の情報を得て、その辺りを探っていたら、この子が追い掛けられていたんだ」
ヴィエリゼ「密猟者!?」
ルカード「大丈夫、そいつらは木の上に ぐるぐるにして縛り付けてきたから」
ルカード「帰りにでも回収するよ」
ヴィエリゼ「ローレンを助けてくれたのね」
ヴィエリゼ「心から感謝するわ。 本当にありがとう──」
ヴィエリゼ「・・・はあぁ~」
ルカード「ヴィエリゼ?」
ヴィエリゼ「安心したら気が抜けちゃった・・・」
ルカード「役に立てたみたいで嬉しいよ」
ぐううぅぅ〜っ。
ミア「ごめんなさい!」
ミア「お腹すいちゃったみたい」
キオル「緊張感なさすぎだろ」
ルカード「今日のところは帰ろうか」
ヴィエリゼ「待って!」
ヴィエリゼ「それなら、うちで夕飯を食べていかない?」
「はあっ!?」
〇城の会議室
ガスタイン「お、お食事でございます・・・」
「いただきまーす!」
ローレット「ちょっと待って?」
ヴィエリゼ「どうしたの、ローレット?」
ローレット「どうしたっていうか・・・」
ローレット「この状況がどうしたなんだけど!?」
キオル「それには同感」
キオル「何で魔族と食事しなきゃなんないんだ? しかもよりによって魔王城って・・・」
ヴィエリゼ「ローレンを助けてもらったんだもの、 お礼をするのは当たり前でしょう?」
ローレット「そうだけどそうじゃない・・・!!」
ルカード「もう食べていい?」
ローレット「空気読めモブ!!」
ダーリナ「ローレット」
ダーリナ「ローレンを助けてもらったのは事実ですし、あちらに敵意はなさそうです」
ダーリナ「食事が終われば帰るでしょうから、 ここは我慢しましょう」
ローレット「ソッコーで終わらす!!」
キオル「・・・・・・」
ローレット「毒なんか入ってないから、 あんたもさっさと食べなさいよ」
ローレット「そんでさっさと帰れ!」
キオル「はあ!?」
ローレン「お姉ちゃん、助けてくれた人に そんなこと言っちゃダメなんだよ!」
キオル「こいつがお前の姉ちゃんだったんだな」
ローレン「会ったことあるの?」
キオル「おー」
キオル「水属性のくせに火も消せずにいたから、 俺が手伝ってやったんだよ」
ローレン「お姉ちゃんも助けてもらったんだね!」
ローレット「うるさいっ!!」
ミア「うふふ。あの二人、仲よさそうね」
ダーリナ「あれは仲がいいと 言えるのでしょうか・・・」
ヴィエリゼ「・・・・・・」
ルカード「・・・嬉しそうな顔してるね」
ヴィエリゼ「魔王城で魔族と人間が一緒に食事をするなんて、初めてのことじゃないかと思って」
ルカード「そうかもな」
ヴィエリゼ「・・・ねぇ」
ヴィエリゼ「どうして密猟者を探していたの?」
ルカード「もちろん、捕まえるために」
ルカード「本当はもっと大きな成果を上げて、 きみとの約束を果たしたいんだけど」
ルカード「それにはもう少し時間がかかりそうなんだ」
ルカード「ごめん・・・」
ヴィエリゼ「覚えていてくれただけで嬉しいよ」
ヴィエリゼ「ありがとう、ルカード」
ルカード「ヴィエリゼ・・・」
ルカード「あっ、そうだ!」
ルカード「きみのお父さん── 魔王ガルディアスに会いたいんだけど」
ヴィエリゼ「どうして?」
ルカード「挨拶したいなと思って・・・」
キオル「挨拶ってお前、 娘さんを僕にくださいとでも言うのか?」
「はああああっ!?」
ルカード「違う違う!」
ルカード「急に押し掛けたうえに食事までご馳走になったから、お礼をと思っただけで・・・」
キオル「魔王に挨拶する勇者って シュールすぎんだろ」
ローレン「魔王様にご挨拶なら、もうしてるよね?」
ルカード「えっ?」
ローレン「だってエリ──」
ローレット「野菜も残さず食べな、ローレン!!」
ローレン「ちゃんと食べてるよぅ!?」
ガスタイン「何がどうなっているのです、魔王さ──」
ガスタイン「熱ッ!?」
ダーリナ「ガスタインさん そのお皿、生ですよ」
ガスタイン「こちらお刺身だったのですが・・・」
ガスタイン「炙り刺しに変更になりました、どうぞ」
ミア「ん〜、おいし〜!」
ゲンティム「おいおい、 夕飯なら俺らも呼んでくれたって・・・」
ルカード「あ、どうも」
ゲンティム「うわ、お前!」
ゲンティム「こないだは話も聞かず 攻撃しちまって悪かったな!」
ゲンティム「今日は何しに来たんだ?」
フェゴール「ですから 親戚のおじさんモードはおやめなさい」
フェゴール「密猟者からローレンを 救ってくださったそうですね」
フェゴール「お礼申し上げます」
ルカード「いや、そんな・・・」
ゲンティム「何だよそーだったのか! よし、酒だ酒!!」
ルカード「えっ!?」
ヴィエリゼ「ちょっと、ゲンティム!?」
ゲンティム「今日はもう泊まってきゃいーだろ、なっ!?」
ヴィエリゼ「泊まる・・・!?」
ヴィエリゼ(私が魔王ってバレたらどうするの!?)
ローレットとキオルの関係も進展しそうな予感…!