エピソード11(脚本)
〇洋館の一室
着替え終わって、部屋の外に出ると、ジョマがニカリと笑う。
ジョマ「お似合いですよ」
ロク「あぁ、ありがとう」
少し不本意な気持ちを抱きながら、僕は返事をする。
それを聞いてジョマが、何かを思いついたようにすると、近寄ってきて、僕の手に指を絡ませてきた。
突然の事で、顔が赤くなってしまう。いや、突然じゃなくても赤くなると思うけど。
ロク「え? なに?!」
ジョマ「ロクは、チョロイので、手をつないでいれば惚れるでしょ?」
ジョマ「惚れさせてしまえば、そう簡単に逃げなくなります・・・・・・名案でしょう?」
ニヤニヤとするジョマ。本人に面と向かって言う事ではない。
僕は気持ちを落ち着かせるように少し息を吐いたあと、毅然とした態度で口を開く。
ロク「ほほほ惚れないし! 僕は、そそそそそそんな簡単な男じゃない!」
ジョマ「作戦は成功しているみたいですね」
くそう。バカにしやがって。
ここで壁ドンとかして、逆にドギマギさせてやれば
・・・・・・いいのだけど、そこまでの勇気は僕にはなく、結局、赤くなって下を向くばかりだった。
ジョマ「さて、約束通り、王都を見て回りましょう・・・・・・あっ、言い間違えました」
確かに、あとで見て回ろうという話はしていた。それもそうだけど、言い間違いとはなんだろう。
まだ火照りが少し残る顔でジョマの顔を伺う。ジョマは一度ニヤリと笑った後、少し上目使いになって、言葉を続ける。
ジョマ「ねぇ、ロク・・・・・・デートしましょ?」
落ち着いてきたはずの顔の火照りが、再燃する。ジョマのデートをねだるその姿は、可愛いと言わざる負えない。
その程度で顔を真っ赤にして、情けない。それにジョマは作戦でやっていると自分で言っていた。
頭の片隅に残っている冷静な部分が、そう言った。
確かにそうなのだけど、ジョマが作戦でやっているというのも分かっているのだけど、僕は抗えずに、頷いて返す。
ロク「い、行こうか・・・・・・デートに」
ジョマ「やったぁ」
ジョマが僕の腕に胸を押し付けて、小さく飛び跳ねる。可愛い。僕は片手で顔を覆って、その情けない表情を隠す。
ジョマ「効果は絶大ですね」
ジョマの、勝ち誇ったような声が聞こえてきた。
悔しいけどその通りで、効果は絶大だった。これをしばらくされたら、惚れてしまいそうだ。
ジョマ「ムフフ、チョロイです」
ジョマのそんな声が聞こえてきた。それでも僕は気持ちが冷めないでいるのだから、相当のチョロさである。心底情けない。
ジョマ「さぁ、行きましょう」
笑顔になったジョマが、僕の前方に踏み出して振り返り、手を引っ張りながら、そう言った。
演技なのか、素のジョマなのか、なぜか一番効く姿を見せられて、僕は苦笑した。