エピソード10(脚本)
〇洋館の一室
ジョマ「とにかく! 相談とか一緒に考えてくれればそれでいいんです、一人で考えてると、気が狂いそうなんです!」
ジョマがそう言いながら、突然体を寄せてきた。僕の掴んでいた腕を抱きしめるような形だ。
二の腕の所に胸が押し当てられて、手はジョマの太ももの間にあって、
少しでも動かすと、ジョマの大事な所に触れてしまいそう。僕は体を強張らせてしまう。
ジョマ「・・・・・・お願いします」
そう呟く様に懇願するジョマの顔が、かなり近い所にあった。僕は顔が熱くなるのを感じる。
二の腕に当たる柔らかい物へと意識が集中して、手の方は今にも動かしてしまいそうだ。
僕は自分がチョロいという事を、再認識せざる負えなかった。
ロク「・・・・・・分ったよ、入るよ」
僕の言葉で、ジョマの表情が弾ける様に笑顔へ変わる。
ジョマ「本当ですか?! ありがとうございます!」
ジョマはそう言うと、抱きついていた僕の腕を、さらに強く抱きしめた。腕が軋むような感覚がする。
ロク「痛い、痛い! 嬉しいのは分かったから! 腕が痛い!」
僕の訴えに、ジョマは気付いたように「あぁ、すみません」と抱きつくのをやめる。
エルフってもっと清楚で、か弱いイメージだったけど、ジョマのおかげでそう言う思い込みが、すべて吹っ飛ぶ。
ジョマ「私、力が強いのでいつも気を付けているんですけど、嬉しいとつい」
おどけた様にそう言うジョマ。抱きつかれていた腕を擦る。エルフはそういう物なんだろうか。
あいにくエルフについては、あまり知識がない様だ。
自分の事なのに、こうやって他人事の様に思うのは、少し不思議な感覚を感じる。時間が経てば、馴染んでくると思うけど。
ジョマ「いやぁ、でもロクがチョロくて、良かったです、おっぱい押し当ててやれば、コロリですね」
ロク「あれ、聞こえてるよ? 僕ここにいるよ?」
僕の言葉をジョマは意に介していない様に、部屋の端の方にある荷物をガサガサと、探り始める。
しばらくして、目的の物を見つけたのか、何かを持って僕の方にやってきた。
ジョマ「これ、制服です、さっそく着替えてください」
ジョマは僕へ突き出す様に、騎士団の制服を寄こしてくる。
それから何かを思いついたようにしてから、ニヤリと表情を変えて、言葉を続けた。
ジョマ「あっ、着替えさせてほしいですか?」
ロク「自分で着替えるから!」
完全に、主導権を握られてしまった気がする。僕はすぐさま制服をひったくると、適当な部屋に入る。僕は制服を眺めた。
とんでもない事になってきてしまった。こういう流れになったのは、モリアテの意思が少し入っているからなんだろうか。
僕は小さくため息をつきながら、制服に着替え始めた。