レ・ミゼラブル

もと

貴方の為に……。(脚本)

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〇荒廃した教会
レイ「お待たせしました」
レイ「ユウキの盾になった二人を始末しました」
レイ「心臓を貫き塵となって消える所まで 見届けましたので・・・」
レイ「・・・!」
キング「・・・ユウキ ハ ドウシタ」
レイ「・・・申し訳・・・ございません 取り逃がしました・・・」
レイ「ああ! キング、ごめんなさい! もっともっと頑張るから! 痛い、熱いよ! ごめんなさい!」
キング「二人 ヲ 手ニカケタナラ モウ何モ 枷ハ 無イ」
キング「迷ウナ ユウキ ヲ 殺セ 変身システム ヲ 破壊シロ」
レイ「うん! いや、はい! 分かったよ! 絶対殺すから、任せて!」
キング「・・・行ケ」
レイ「うん、うん! 待ってて! 行ってくる、行ってきまーす!」

〇森の中
  ・・・痛い。あちこち焼けちゃってる。
  でも僕が悪いんだ。
  変身システムを使える者を皆殺しって
  言われてるのに、出来なかったのは僕だ。
  ・・・キング、貴方が僕を救ってくれた。
  だから今度は
  僕が貴方の役に立つんだ・・・。
  ・・・痛い、痛いよ・・・。
  ・・・頑張る、頑張るから・・・。

〇渋谷のスクランブル交差点
  ・・・ユウキ・・・。
  ・・・どこだ・・・?

〇ネオン街
  ・・・ユウキ・・・!
  ・・・どこにいる・・・!

〇歌舞伎町
  ユウキ!
  どこに逃げた?
  どこに隠れた?
  どこに・・・。
  ・・・そうか、あの女だ。
  いつも一緒にいた女、僕の知らない女、
  あのバカみたいな笑い声の・・・。
  ・・・殺してやろ。
  一緒にいたら一緒に殺して、
  別々にいるなら首でも持ってユウキに
  会いに行こ。
  怒るかな? 怒るだろうなー。
  さっき親友二人が目の前で死んで、
  彼女まで殺されたら怒るよね。
  三人も大事な人を殺されたら怒るよね。
  むっちゃくちゃに怒らせて、
  取り乱したトコで、
  思いっきりカッコ悪い姿で・・・
  キングの前で殺しちゃおっかな?
  そうしよう、きっと喜んでくれる!
  目の前ならすぐ、秒で褒めてもらえる!

〇木造のガレージ
リン「・・・あ!」
リン「レイ君! どこ行ってたの? ユウキが心配してたよ?」
レイ「・・・へえ、心配してたんだ? それ、いつの話?」
リン「え、今朝だけど・・・」
レイ「今、一人? オヤジさんは?」
リン「バイクの部品か何か買って来るとかって でも、もうすぐ帰ってくると思うよ? 中で待つ?」
レイ「いやいいよ、すぐ終わるから・・・ ところで、リンってユウキとどんな関係?」
リン「え? いまさら? えっと・・・ ユウキは小学校に入る前にお父さんの 研究がどうとかでアメリカに行って・・・」
リン「それで離れて忘れちゃってたんだけど、 去年帰って来た時に思い出したの あ、隣の家にいたユウキだって」
リン「ホント、ずっと忘れてて、名前見て やっと思い出した感じ? ・・・っていう、そんな感じかな、うん」
レイ「へえ・・・なんだ、それだけか」
リン「聞いといて何その反応! もっと「すごいねー」とか言うトコじゃ ないの?」
レイ「まあ、普通? そうなんだ、しか出て来ない」
リン「・・・どうしたの? なんか変だよ?」
「リン! 離れろ!」
レイ「あ、来た来た!」
レイ「へーんしん!」
「リーン! 逃げろー!」
リン「なに?」
レイ「おかえり! ココに帰って来るかなって思ったんだ!」
ユウキ「リン! おい! ・・・リン?」
レイ「惜しかったねー、残念! もうちょっとだったのにね、 間に合わなかったね、残念ざーんねん!」
ユウキ「・・・なんで・・・」
レイ「キングがユウキを殺せって言うから でもただ殺すより、なんかこう、 トッピング的な物がある方がイイでしょ?」
ユウキ「リンは・・・お前とも仲良くしてただろ?」
レイ「そうだっけ? うるさい女だなって思ってたけど 無理矢理ご飯食べさせてくるし」
ユウキ「・・・意味分かんねーよ! ぜんっぜん分かんねーよ!」
レイ「だからユウキを殺せって言われてるの! 身近な人も巻き込んだ方が絶望的で 見てる方も楽しいじゃん?」
レイ「さっきの二人、お友達だっけ? あれも幼なじみ? 変身システム持ってるくせに弱かったね」
ユウキ「お前・・・」
レイ「ユウキが変身ベルトを捨てたりするから 盾になる羽目になっちゃったね あ、見付けて来たの?」
レイ「偉いね、もう運命には逆らっちゃダメだよ 僕みたいに素直に生きなよ?」
レイ「誰かの為に戦うの、 喜んでくれる顔を見たいの、 その為だけに戦うの、楽しいよ?」
レイ「だからそれ以上でもそれ以下でもない、 理由も意味も無い、ユウキは殺す」
ユウキ「変身!」
レイ「うふふ」
ユウキ「死なない! 死ねるか!」
レイ「・・・ココ狭いね? 移動しようか?」

〇廃墟の倉庫
レイ「静かでイイトコでしょ?」
レイ「うわ、死体は置いて来て欲しかったなー」
ユウキ「うあー!」
レイ「え? なに? 今の攻撃? 当たってないよ、もっと狙いなよ?」
ユウキ「・・・あんな所に置いて行けるか!」
レイ「ああ、なるほど、優しいね」
ユウキ「くっ・・・強くなってる?!」
レイ「・・・娘の死体を発見をするオヤジさんが 可哀想ってコト? 雨も降るみたいだしね」
ユウキ「うああああっ!」
レイ「ホント弱くてお気遣いの出来る人だね、 ユウキは・・・あ!」
レイ「もしかして怒ってる? イイね、すっごく怒っちゃったりしてる?」
レイ「もっとおいでよ? 僕を殺したくなったでしょ?」
ユウキ「なんで? なんでだ!」
レイ「弱いね、軽くて、本当に・・・」
レイ「しつこいね? 殺せって言われてるの」
レイ「君のお父さんが君を殺せって言ってるの」
ユウキ「なに?!」
ユウキ「親父・・・キング・・・ キングは俺の・・・」
レイ「君のお父さん、パパだよ?」
レイ「変身システムを研究しまくって自分を 変えたすっごくスゴい人だよね!」
レイ「死にかけてた僕を治して一号にしてくれた 本当にスゴい人だよ! 本当に・・・」
ユウキ「うっ・・・!」
レイ「あんな凄い人が・・・可哀想だ 優柔不断で弱くて偽善者な君の父親なんて 可哀想だよね?」
レイ「キングは凄い人なんだ だから君なんかが息子じゃダメだよ、 死んだ方がいい」
レイ「僕の方がふさわしい」
ユウキ「クッ、防御が・・・破られる?! ああっ?!」
ユウキ「くそ・・・!」
レイ「動けないようにしておこっか?」
ユウキ「くっ・・・!」
ユウキ「ううっ・・・」
レイ「さ、行こ! キングが待ってる!」

〇荒廃した教会
レイ「キング! もう死にかけだから連れて来たよ!」
レイ「目の前で殺すから、ちゃんと見ててね!」
ユウキ「本当に父さん・・・なのか?!」
キング「・・・邪魔ダ 殺セ」
レイ「はーい!」
レイ「じゃあね、ユウキ 君と過ごした時間は無駄だった」
レイ「バイバイ」
ユウキ「・・・くっ」
レイ「キング!」
ユウキ「父さん! なんで、なんでだよ! なんで今さら庇うんだ!」
キング「・・・コノ体は・・・母サン ノ 体ダ」
ユウキ「・・・え?」
キング「10年前 母サン ガ 死ンデ 私ノ研究 ハ 変ワッタ」
キング「・・・生命 ヲ・・・ ・・・禁忌 ヲ 犯シタ・・・」
ユウキ「まさか!」
キング「元ノ姿デ 甦ル 筈ダッタ・・・」
キング「暴走サセレバ 処分シカ 無イ ダカラ 私ノ体ニ吸収 融合サセタ」
キング「同時ニ 変身システム ヲ 作ッタ 万ガ一ノ 時ノ為ニ・・・」
キング「変身システム トハ・・・ 母サンノ 体ヲ 殺ス システムダ・・・」
ユウキ「・・・酷い、そんなの無いよ・・・」
キング「・・・」
キング「・・・私ノ 意志デハ 無イ ユウキ ヲ 庇ウノハ 母サン ダ・・・」
ユウキ「そんなこと言われても・・・俺は・・・」
レイ「・・・キング? 僕はどうすればイイの?」
レイ「僕はキングを・・・ねえ、答えてよ!」
キング「・・・レイ ハ 身寄リモ 記憶モ無イ 便利ナ 実験体ダ・・・スマナイ」

〇荒廃した教会
レイ「・・・ねえキング、教えて? 融合ってどうやってやるの?」
ユウキ「止めろ! 父さんから離れろ!」
レイ「黙って? 今、僕はキングと話してるの」
レイ「お待たせ、キング さあ教えて? やって? 僕も融合したい!」
キング「・・・スマナイ、レイ レイノ 人生モ 壊シテ シマッタ・・・」
レイ「いいよ、許してあげる! っていうか、ぜんっぜん怒ってないし! 人生ぐらいあげるよ、 キングは僕の恩人なんだから!」
レイ「だから僕と融合して? キングと一つになりたいな!」
キング「・・・」
レイ「早く、して?」
レイ「早く」
レイ「してくれないなら」
レイ「勝手にやってみるよ」
キング「待テ! 止メロ! 取リ返シノ 付カナイ 事に・・・!」
レイ「シンプルに行こう」
ユウキ「・・・と、父さん・・・!」
レイ「・・・ああ・・・! スゴいよ、これは!」
ユウキ「・・・お前は?! お前はああああ?! 父さんと母さんは?!」
レイ「喰った」
ユウキ「うああああああ!」
レイ「だから当たってないってば・・・」
レイ「ん?」
レイ「あれ? そう来たか・・・」
ユウキ「ア、アア・・・」
レイ「あ、もしかして変身システムって、 変身ってそういうコトなの?」
レイ「うふふっ、あは! あははは!」
レイ「イイね! カッコいいよ! キングの力作だ、傑作だね!」
ユウキ「コ・・・ロス!」
レイ「ムリムリ、あははっ!」
レイ「あはっ、あはは!」
レイ「あはっ、すごーい! つよーい! キングはやっぱり凄いな!」

〇森の中
レイ「・・・」
レイ「・・・キングが僕の中に居る」
レイ「・・・一人じゃない」
レイ「・・・」
レイ「力を手に入れたのに、強くなったのに、 ユウキを殺したのに!」
レイ「誰も褒めてくれないの? 誰も? 誰もいないの?」
レイ「・・・」
レイ「・・・うふっ、ははは、ホントもう・・・」

〇渋谷のスクランブル交差点
レイ「・・・あはは!」
レイ「・・・消えちゃえ・・・」

〇渋谷のスクランブル交差点

〇ネオン街
レイ「・・・うふふ」
レイ「あははっ! こんなもの消えちゃえ!」

〇ネオン街

〇歌舞伎町
レイ「燃えろ! 消えろ! あはははは!」
レイ「消えろ!」

〇歌舞伎町

〇街の全景
レイ「・・・あははっ・・・あーあ、もう・・・」
レイ「みーんな消えちゃえー!」
「止めるんだー!!」
レイ「誰?!」
ジェイク「研究所で助手をやっていたジェイクだ!」
レイ「知らない?!」
ジェイク「だろうな! 下っ端だし、俺も初めて変身した!」
レイ「へえ・・・まだあったんだ、変身システム」
ジェイク「ああ、まだある! 日本人は『こんな事もあろうかと』が とても上手だからな!」
レイ「・・・ありがとう・・・」
レイ「いや、なんとなく邪魔になりそうだから 死んで?」
ジェイク「死なないよ?」
レイ「・・・ああ、面倒くさそう」
ジェイク「ああ、今の俺は面倒くさいよ? ボスを殺されて怒ってるし、 あのボロボロの街はお前の仕業だよね」
ジェイク「物凄く怒ってるし、物凄く悲しい!」
ジェイク「お前を許さない!」
レイ「・・・ああ、なるほど」
レイ「これ、運命じゃん」
  ・・・これは僕の運命だ。
  きっと
  いつまでも、いつまでも、いつまでも
  生きているだけでこうやって邪魔が来る。
  誰かの為に正義の味方が飛んで来る。
  街を八つ当たりで燃やした僕は悪か。
  そうなるのかな。
  でも、僕だって・・・。
  ・・・理由が出来たんだ。
レイ「・・・キングの体と生きる! 誰にも消させたりしない!」
レイ「いつかまた会うんだ! 良くやった、って褒めてもらうんだ!」
レイ「変身!」
ジェイ「なに?!」
ジェイ「なんだその姿は?!」
レイ「・・・変身、だよ? 君に負けないように、君に勝つ為に・・・」
レイ「後ね、今は君から逃げる為に!」
ジェイ「おい?! 待て!」

〇森の中
レイ「・・・はあ、疲れた」
レイ「戻る、戻りたい・・・」
レイ「疲れたよ・・・」
レイ「そっか・・・」
レイ「僕は便利な実験体か・・・」
レイ「可哀想だね、僕は・・・」
レイ「何の為に・・・」
レイ「あの時、貴方の体を斬って中に入った時、 とても暖かかったよ」
レイ「あれは・・・ 家族への思いが貴方を暖かくさせてたの?」
レイ「そんなの無いよ・・・僕だって・・・」
レイ「・・・」
レイ「今の僕は、とても・・・」
レイ「寒いのにな」
  おわり。

コメント

  • 神の視点から見れば登場人物全員がミゼラブルといえるのかもしれません。善行に限らず悪事を働く時ですら人間には何らかのモチベーション(ご褒美)が必要なんですね。ラストのレイの「寒い」という言葉には彼の生き様全てが集約されているようで切なくなりました。

  • ストーリーの展開がうまくされていて、引き込まれながら話を読ませて頂きました。ピュアな思いが伝わってきて切なくなりました。

  • レイはレイで自分を褒めて褒めてっと全力でアピールしてくる幼い子どものように、ある意味とてもピュアだったのかもしれませんね。悪魔とかした彼ですが、彼の気持ちを思うと切なさもまたこみ上げてきます。

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