#5 夢幻(脚本)
〇遊園地の広場
神父 ランド「次は何に乗ろうか」
踊り子 フォクシー「波に乗る私はさながらジェットコースター」
踊り子 フォクシー「一気に駆け抜け、向かうはエンドロールだ」
神父 ランド「もっとゆっくり歩こうよ」
踊り子 フォクシー「えい。そうはいかん」
踊り子 フォクシー「この世の果てまでフライトして」
踊り子 フォクシー「日が暮れる前にジューン・ブライド」
神父 ランド「ふふっ、もう7月だよ」
踊り子 フォクシー「真夏の果実にアダムとライブアライブ」
踊り子 フォクシー「砂漠のタイフーン化計画」
?「ゆっくりしていってね」
神父 ランド「君との時間はゆっくり流れる」
踊り子 フォクシー「まるで竜宮城に来たみたい」
〇メリーゴーランド
踊り子 フォクシー「ユニコーンは幻想の中でしか生きられない」
踊り子 フォクシー「だからきっと、ここにいるんだね」
神父 ランド「おまたせ」
踊り子 フォクシー「生の人参って。私は馬か?」
神父 ランド「人参を頬張る君の横顔は無垢な天使のようだから」
踊り子 フォクシー「私は天使じゃない。人間だ」
踊り子 フォクシー「幻想に生きるのはやめたんだ」
神父 ランド「ごめん」
冒険者 マーベリック「俺の人参が火を吹くぜ」
踊り子 フォクシー「わぁ、お馬さんみたい」
冒険者 マーベリック「あまり、まじまじと見ないでくれ」
〇幻想
踊り子 フォクシー「きのこ にんじん バターチキンカレー」
踊り子 フォクシー「ミノムシの腹とキリンの羽」
踊り子 フォクシー「首が長いから飛ぶ必要ないだけ」
踊り子 フォクシー「春雨のスープに付け合わせの舞茸」
踊り子 フォクシー「春はあけぼの 夏は干からびて干物」
「ミイラ化 or テキーラ!」
冒険者 マーベリック「我はベジタブル・アルケミスト」
冒険者 マーベリック「貴様が落としたのは金のきのこか? それとも──」
〇観覧車の乗り場
踊り子 フォクシー「地元で取れた人参です」
冒険者 マーベリック「ありがとう」
神父 ランド「観覧車かぁ。僕は初めて乗るよ」
踊り子 フォクシー「私も初めてだよ。そもそも遊園地に来ること自体初めてだし、こういう時どんな顔すればいいか分からない」
神父 ランド「楽しめばいいと思うよ」
踊り子 フォクシー(その楽しみ方が分からないのに・・・)
ぎゅっ
踊り子 フォクシー「あっ」
神父 ランド「難しいことは考えなくていい。ありのままでいればいいんだ」
踊り子 フォクシー「・・・うん」
?「次の方〜」
〇観覧車のゴンドラ
踊り子 フォクシー「良い眺め。人が虫みたい」
神父 ランド「虫にも一つ一つ命がある。役割がある」
神父 ランド「自分に課せられた使命を果たす。僕らはそんなふうに命を営んでる」
踊り子 フォクシー「へー」
踊り子 フォクシー「人間っていいな」
神父 ランド「虫よりも?」
踊り子 フォクシー「うん。人間って素晴らしい。自分の行動次第でいくらでも可能性があるから」
神父 ランド「でも不可能もあるよ」
踊り子 フォクシー「・・・」
神父 ランド「夢は叶えるためにあるんじゃない。見るためにあるんだ」
神父 ランド「叶えられないと分かっているからこそ、人は夢を見てしまう」
踊り子 フォクシー「・・・私の夢は」
踊り子 フォクシー「・・・」
神父 ランド「ゆっくり考えるといいさ。地上に降りるまで、まだまだ時間はある」
〇遊園地の全景
空から眺める地上の景色はとても綺麗で
手を伸ばしても届かない──そんな非現実感さえ覚えてしまう
私が今どこにいるのかも曖昧なほどに
ゆるやかに時間だけが流れていった
〇観覧車の乗り場
踊り子 フォクシー(分からない。私は何がしたかったんだっけ)
?「時間はあるさ。いくらでも。君が望む限り、いつまでもゴールは待ってくれる」
踊り子 フォクシー(世界が崩れていくのを感じる)
踊り子 フォクシー(夢の国でも、私は楽しむことができないのか)
?「さぁごらん。パレードが始まるよ」
〇荒廃した遊園地
医師 クランツ「何があっても僕たちは一緒だよ」
僧侶 アルカ「ついていきます。地獄の果てまでも」
踊り子 フォクシー「・・・」
?「地獄? ここは天国だよ」
?「私にとってはどちらでもいいの」
踊り子 フォクシー「・・・私は羽を失ったキリンなんだ」
踊り子 フォクシー「羽を失う代わりに、長い首を手に入れた」
踊り子 フォクシー「地に足を付けたいくせに、結局高望みをしてしまう」
踊り子 フォクシー「心臓と脳の距離が遠いから、自分がどこにいるのかも分からない」
?「そんなことないよ。キリンは素敵」
?「長い手足は誰も寄せ付けない」
?「誰も君に干渉できない」
?「上から見下ろすだけで良いのさ」
?「ハッハッハッピー」
「ハハハッピー!」
踊り子 フォクシー「うん。分かった」
踊り子 フォクシー「私は私。誰にも自由を奪われない」
踊り子 フォクシー「私の行動は全部正しかった。だって、私が正しいと思ってやったんだから」
医師 クランツ「独善的だな。それでも人間か?」
僧侶 アルカ「貴方に人間を語る資格はありません。人間失格です」
踊り子 フォクシー「・・・なんでよ」
医師 クランツ「お前は人間じゃない!」
僧侶 アルカ「動物です。遊園地より動物園がお似合いです」
踊り子 フォクシー「・・・うるさい」
医師 クランツ「動物園に帰れ!」
踊り子 フォクシー「うるさいうるさい」
僧侶 アルカ「帰ってください」
踊り子 フォクシー「うるさいうるさいうるさい」
僧侶 アルカ「なんてことを!」
踊り子 フォクシー「うるさいうるさいうるさいうるさい」
踊り子 フォクシー「うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさい」
「お前は間違ってる」
踊り子 フォクシー「うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさい」
踊り子 フォクシー「うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさい」
〇屋敷の寝室
踊り子 フォクシー「うるさぁぁぁい!」
踊り子 フォクシー「・・・」
踊り子 フォクシー「・・・あれ? 私、夢見てた?」
踊り子 フォクシー「・・・」
踊り子 フォクシー「変な夢だったなぁ。なんか、ぐちゃぐちゃで、よく分からなくて」
冒険者 マーベリック「おい! さっさと起きろ!」
踊り子 フォクシー「あ、服着てる」
冒険者 マーベリック「ついに人狼の犠牲者が発生した!」
踊り子 フォクシー「・・・」
踊り子 フォクシー「人狼って何だっけ」
冒険者 マーベリック「寝ぼけてんのか!? とっとと来い!」
〇古い洋館
村娘 アリス「・・・」
村長 ゴードン「・・・おーん?」
神父 ランド「・・・」
商人 ルドルフ「へぇ」
踊り子 フォクシー「・・・え、そんな」
僧侶 アルカ「────」
冒険者 マーベリック「昨晩の犠牲者は僧侶アルカ」
踊り子 フォクシー「・・・」
冒険者 マーベリック「人狼は自分を噛めない。つまり、僧侶が本物の占い師だったってことだな」
踊り子 フォクシー「じゃあ、昨日処刑したお医者さんは人間だったってこと・・・?」
冒険者 マーベリック「そういうことになる」
村長 ゴードン「ふむ・・・。要はアルカは気が狂っていただけの人間だったってわけか」
村長 ゴードン「ちなみに今日はアリスちゃんを占って人間だったぞい」
村娘 アリス「うるさい」
村娘 アリス「やっぱり僧侶が真だったんじゃん。誰かさんのせいで私まで間違えた」
村娘 アリス「あーあ。もうこんなの村長とフォクシーが人狼でしょ」
村娘 アリス「村長が村人たちを襲って、後から仲間の狼のフォクシーが合流した。そして私たちを揶揄うためこんな茶番まで繰り広げて」
村娘 アリス「だるいんだよお前ら」
村長 ゴードン「何を言っておる? わしは真占いじゃぞ」
村娘 アリス「近寄んな。臭いんだよ老害」
村娘 アリス「さっさと棺桶に頭から突っ込んで死ね」
村長 ゴードン「無礼な! 誰に口を聞いておる!」
村長 ゴードン「わしはこの村の村長じゃぞ!」
冒険者 マーベリック「村長じゃねーよ。あんたは人狼だろ」
村長 ゴードン「ぬかせぇ! 人狼はお前じゃろ!」
村長 ゴードン「ぐは」
冒険者 マーベリック「俺が人狼なわけねーだろ」
村長 ゴードン「ぐぉ・・・」
村娘 アリス「とりあえず1匹〜。あともう1匹は〜」
踊り子 フォクシー「え、あ・・・」
踊り子 フォクシー「違う。私は人狼じゃない・・・」
村娘 アリス「は? どう考えても人狼でしょ」
村娘 アリス「お前のせいで村が間違えたんだから」
踊り子 フォクシー「私は自分が思ったことを言っただけ・・・」
村娘 アリス「お前が僧侶さんを偽塗りしたせいで、お医者さんは処刑されちゃったし、僧侶さんは噛まれた」
村娘 アリス「全部お前のせいじゃん」
踊り子 フォクシー「・・・」
冒険者 マーベリック「一晩に処刑は一度だけ──といった制約はないはずだ」
冒険者 マーベリック「貴様も今日ここで処刑する」
踊り子 フォクシー「ッ・・・」
村娘 アリス「あっ逃げた!」
冒険者 マーベリック「クソ!」
〇けもの道
私は悪くない。私は悪くない
自分の信念に基づいただけ。何も間違ったことはしてない
結果的に間違えたけど、そんなの結果論
私が殺される筋合いはない
〇森の中
そもそも人狼が全部悪い
人狼と、人狼を野放しにしてるこの世界が悪い
私は何も悪くない。ただ巻き込まれただけ
全部世界が悪い。理不尽なこの世界が悪い
踊り子 フォクシー「はぁ・・・はぁ・・・」
踊り子 フォクシー「・・・」
踊り子 フォクシー「もう嫌だよ。天界に帰りたい・・・」
夢の描写がリアルで、一瞬脳がバグったのかと思いました。あの理不尽さを表現できてしまうなんてすごいです!
一瞬、
「読み飛ばしたかな?」
と思うほど動揺しました…
高熱の時にみる夢だ。
悪夢のようで悪夢じゃない…
夢はカオスですが自分への疑念や迷いが表れていていい描写だと感じました。議論で生死が決まる特殊状況においては相手の主張を排除することと相手を殺してしまうことに差があまりないと思います。龍神側で降りてきているフォクシーと俯瞰する観覧車やキリンがたしかに重なるような気が。