魔族の証明!の巻(脚本)
〇黒
前回までのあらすじ
〇通学路
曲がり角での衝突で、偶然にも異世界へと転移してしまったJKノリコ
〇森の中
転移した先は、人知れず死んだ勇者を50年間待ち続ける魔王が暮らす世界──
目覚めたノリコは、勇者ヒイロ(霊体)から、元の世界への帰還の鍵を握る大賢者が魔王に封印されている事を知らされる──
〇宮殿の部屋
一方その頃、不幸にも巻き添え転移した男子高校生は、魔王城に降り立っていた・・・・・・
〇宮殿の部屋
魔王「魔神様が遣いを寄こしてくださった!」
魔王「魔族、バンザーーーイッ!!」
ピーーーーーーーーーッ・・・・・・
ドクターM「ま、魔王様ーーーーっ!!」
ドクターM「し、しっかりしてください、魔王様っ! 魔王様ーーーっ!!」
ドクターM「医療班! 医療班~~~っ!!」
???「い、一体全体、どうなってるんだ・・・・・・」
???「ここは? この人たちは・・・・・・?」
???(と、とにかく落ち着け! まず、何が起こったか整理しよう・・・・・・)
〇通学路
そうだ、オレはいつも通り学校へ向かっていて・・・・・・
曲がり角で、女子高生にタックルを喰らって・・・・・・
〇宮殿の部屋
で、今ここ
???「いやいや、全然分かんねーって!」
???「なんで!? どうして!?」
???(女子高生と衝突して、その拍子によく分からん世界に飛ばされたってのか!?)
???(そんな事、あり得るの──)
ドクターM「魔王様ーーーっ!!」
???「だーっ、さっきからうっさいなぁ、もうっ!」
ドクターM「貴様っ、魔神様の遣いならば、今すぐ魔王様を蘇らせぃ!」
???「はぁ!?」
???(魔神とか魔王とか、さっきから何言ってんだ・・・・・・)
???(まるでRPGの世界じゃねーか・・・・・・)
???(いや・・・・・・)
医療班A「ま、魔王さまぁ・・・・・・」
医療班B「うぅ、魔王様が、そんな・・・・・・」
医療班C「うおぉぉぉぼぼぼぼぉぉぉずりょぉぉぉっ!!」
???(本当にRPGの世界に飛ばされちまったのかも・・・・・・)
ドクターM「ほれ、どうした!? 早くせんかい!!」
???「いや、急にそんな事言われてもさぁ!」
???「と、とりあえず救急車か!」
???「圏外!?」
???「そ、そりゃそうか、異世界ってヤツだもんな・・・・・・」
ドクターM「えーい、このままでは埒があかん!」
ドクターM「魔王様への手向けとして、貴様の魂、あの世に送ってくれるわぁっ!!」
???「えぇっ!? ちょっとタンマ、タンマッ!!」
魔王「そこまでだ、ドクターM」
ドクターM「ま、魔王様っ!?」
ドクターM「おぉ、生きておられましたかっ!」
魔王「いや、死んでるよ」
ドクターM「ええぇぇーーーっ!!」
???「ホントだ、ちょっと透けてる」
ドクターM「だまらっしゃいっ!」
魔王「よすのだ」
魔王「側近の無礼をお許しください」
魔王「私は魔王・・・・・・だった者」
魔王「ご覧の通り、今しがた息を引き取りました」
魔王「今際の戯言が魔神様に届いた喜びで、このように霊体にて舞い戻りました」
???「は、はぁ・・・・・・」
魔王「魔神の遣い殿、お名前を伺ってもよろしいかな?」
???「な、名前?」
???(なんかドえらい勘違いをされてるみたいだぞ・・・・・・)
???(しかし、この状況・・・・・・ とりあえずは、ノッておくが吉と見た!)
???「ゴホンッ・・・・・・」
ハヤト「我が名はハヤト」
ハヤト「いかにも、魔神の遣いである」
魔王「破邪屠(ハヤト)ッ!!」
魔王「なんと禍々しい名前っ! さすがは魔神様の遣いであられる!」
ハヤト「うん、そう、ハヤト・・・・・・」
ハヤト(なんかよく分からんけど、納得してくれたみたいだな・・・・・・)
魔王「それでは破邪屠・・・・・・」
魔王「共に勇者を滅ぼそう!」
ハヤト「・・・・・・はい?」
〇山道
「はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・」
ノリコ「疲れたーーーーーーーーっ!!」
ヒイロ「まぁまぁ、そう言うなって もうすぐ着くからさっ」
ノリコ「そう言ってから、かれこれ5時間は歩いてますけどぉー!?」
ノリコ「普通、こういう時って、馬とか、移動魔法とかでパパッと行くんじゃないのぉ!?」
ノリコ「あっ、ごめん・・・・・・」
滑って転んで死んじゃうようなレベル帯の人が移動魔法なんて便利なモノ習得してるハズがないよね
ヒイロ「って、顔で見るのはやめてくれ!」
ノリコ「すごい、一言一句違わない!」
ヒイロ「嬉しくないわっ!」
ノリコ「ねぇ、これから会いに行く人って、僧侶なんだよね?」
ヒイロ「あぁ、オレは会う前に死んじゃったけど、当時は相当、名のある僧侶だった・・・・・・」
ノリコ「50年前は、ね・・・・・・」
ヒイロ「大丈夫! 前にも言ったけど、信念は衰えちゃいないさっ!」
ヒイロ「きっと心強い回復役になってくれるって!」
ノリコ「だとイイんだけど・・・・・・」
〇原っぱ
ノリコ「あっ、あそこじゃない!?」
〇草原の一軒家
〇草原の一軒家
ヒイロ「ふぅ、やっと着いたな」
ヒイロ「ここからは──」
ノリコ「ここからは、キミに任せる・・・・・・でしょ?」
ノリコ(ヒイロの魂は、死んじゃった場所から動けない)
ノリコ(今は微弱な魔力で私とやり取りしているけど、声も姿も、私以外の人には感じ取れない・・・・・・)
ノリコ「ねぇ、50年も音沙汰なかったのに、いまさら魔王討伐を手伝ってくれるのかなぁ?」
ヒイロ「・・・・・・」
ノリコ「すみませ~ん」
「は~い」
???「あら、どちら様かしら?」
ノリコ「あ、あの・・・・・・」
ノリコ(どう見ても20代よね・・・・・・お孫さんかしら?)
ヒイロ「僧侶の名前は、シズエだ」
ノリコ「こちら、僧侶のシズエさんのお宅でしょうか?」
???「ええ、そうですけど」
ノリコ「私はノリコと言います」
ノリコ「突然訪ねてしまって申し訳ないのですが、シズエさんはいらっしゃいますか?」
???「はい、私がシズエですよ」
ノリコ「・・・・・・は?」
僧侶シズエ「私が、僧侶シズエです」
「・・・・・・」
「えええええぇぇぇぇぇぇっ!!?」
〇荒野の城壁
魔王「──と、いう訳で、私は一度も勇者とまみえる事なく、その生を終えた・・・・・・これが事の顛末です」
ハヤト「な、なるほど・・・・・・」
ハヤト(まったく世界を救おうとしない勇者もヤバいけど)
ハヤト(寿命が来るまで、ただただ待ち続けるアンタもアンタだろ!?)
魔王「しかし、我が軍に魔神様の遣いである破邪屠が加わる事で、止まっていた時計の針は動き出す!」
魔王「私の代わりに指揮を執り、不届きな勇者一行に悪の鉄槌をっ!」
ハヤト「い、いやまぁ、そうっすねー・・・・・・」
ハヤト(とりあえず、今は魔神の遣いを演じつつ、元の世界に戻る方法を見つけないと・・・・・・!)
ハヤト「その~、勇者を倒すって事は、その過程で一般市民にも危害を加えるって事っすか・・・・・・?」
魔王「我々も無益な殺生は避けたいところだが、必要とあらば、村のひとつやふたつ、焼き払おうではないか!」
ハヤト「えっ!?」
ハヤト「いや~、それはやめといた方がいいんじゃないかなぁ~」
魔王「と、言うと?」
ハヤト「なんていうか、それは勇者側の闘志にも火を着けちゃうっていうか~」
ハヤト「打倒魔王感が増しちゃうっていうか~、引き返せない所まで行っちゃうっていうか~、単純に可哀想っていうか~・・・・・・」
魔王「ほう・・・・・・」
ドクターM「──魔王様、申し訳ございません」
ドクターM「先程からお話を聞く限り、どうやら破邪屠殿は我々の進軍に消極的なご様子」
ドクターM「破壊と恐怖を司る魔神様の遣いとしては、いかがなものかと・・・・・・」
ドクターM「これでは軍の士気にも関わります」
魔王「ふむ・・・・・・」
ドクターM「それにどうも引っかかるのです 冴えない見た目、攻撃性に欠ける姿勢 果たして本当に魔神様の遣いなのか・・・・・・」
ハヤト「げっ!」
魔王「はっはっはっ! 神経質で疑り深いドクターMらしい!」
ドクターM「えぇ、常々悪いクセだと自認しておりますが・・・・・・」
ドクターM「しかし、事を確実に運ぶためには、この疑り深さも必要かと」
魔王「では、どうすると?」
ドクターM「不躾ではございますが、証左を示していただきたい」
ドクターM「破邪屠殿が魔神様の遣いである事の証左を」
ドクターM「今すぐ、この場で!!」
ハヤト(マ、マジかよ!?)
魔王「証明さえできれば、ドクターMの気も納まるであろう」
魔王「手を煩わせてすまないが、お願いできるかな、破邪屠」
ハヤト(こ、これはマズいぞ・・・・・・!)
ドクターM「ご理解頂き感謝いたします では・・・・・・」
ドクターM「ここより彼方に見えます、女神像・・・・・・」
ドクターM「あの忌々しい平和のシンボルを、破壊魔法で木端微塵にしていただきましょうか」
魔王「おぉ~! それは余も見てみたいっ!」
ドクターM「えぇ、魔神様の遣いのお手並み拝見でございます!」
ハヤト(いやいや、魔法なんて無理、無理っ!)
ハヤト「え、いやぁ、それはどうかなぁ? ちょっと距離もあるし、大きいし・・・・・・」
ハヤト「あとほら、まだコッチに来たばっかりで本調子じゃないっていうか~・・・・・・」
ハヤト「あの、時差がね、ホラ? ねっ!? 時差よ、時差! 時差があるからさぁっ・・・・・・!!」
ドクターM「ふむ、それでは仕方がありませんね」
ドクターM「『疑わしきは即血祭り』の魔族協定に則って、打ち首に処すしかありませぬな」
ハヤト「えぇっっっ!?」
ハヤト(ど、どうすんだよ~~~!!)
〇荒野の城壁
つづく
壮大な世界観なのに、終始ゆるーい展開が面白かったです^^
巻き込まれた側のハヤトの方がピンチ続出なのが不憫ですね。笑
ドクターMの激しい追及をどうかわすか…次回も楽しみです!
双方のんびりした展開でいいですね(笑) どっちが勝つか以前にちゃんと両者が対決の場につけるかどうかが心配です…