聖騎士ハインライン 〜受け継ぐ者たち〜

山森 緑

読切(脚本)

聖騎士ハインライン 〜受け継ぐ者たち〜

山森 緑

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〇寂れた村
  その昔、この世界は闇の勢力によって支配されていた。ひ弱な人間たちはその圧倒的な戦力差に長い間ひれ伏していた。
  しかし、今から二千年前、突然現れた四人の聖戦士によって闇の勢力は滅ぼされ、人間たちは平和な世界を取り戻すことが出来た。
  ここは、聖地ハインライン。
  二千年前、聖騎士ハインラインが闇から世界を救った場所。
  今は小さな村だけが残っている。
  今日はこの村の収穫祭。
  村中で大人たちがお酒を飲んでいた。
村長「ひゃーはっは!めでたいめでたい! ほれほれ、お前らも呑め呑め!」
リヒト「・・・村長、飲み過ぎですよ・・・」
コウ「うへー、酒臭え・・・」
村長「何を言うとる! 今日呑まずににいつ呑むんじゃ! これはな、かのハインライン様をだな・・・」
コウ「へえへえ、分かりましたよ村長。 けどよハインライン様なんて昔話じゃねえか、二千年前だぜ! しかも怪人だったらしいし・・・」
村長「馬鹿もん!!!!! なんてことを言うんじゃ! この村は、いやこの世界が平和なのはハインライン様のお陰なんじゃぞ!」
コウ「痛ててて! わかった、わかったって!」
村長「全く! あのハインライン様を怪人呼ばわりとは! これだから最近の若いもんはいけんのじゃ! ぶつぶつ・・・」
コウ「コソコソ おい、逃げようぜ・・・」
リヒト「ああ、そうだな」
  リヒトとコウは村でも期待されている若い戦士だったが、平和な世界では二人はその力を持て余していた。
リヒト「なあコウ、俺たちはいつになったら一人前の戦士になれるんだろうな」
コウ「もうジジイたちから教わることなんかねえっつうのにな! 早く認めてほしいぜ」
リヒト「おい、今の見えたか?」
コウ「ああ、山の方角だったな」
リヒト「すぐ村長に知らせよう!」
コウ「いや待て、大人たちは収穫祭で酔ってて頼りにならねえ。俺たちだけで行くってのはどうだ?」
リヒト「そんなことしたら、怒られるぞ」
コウ「ちょっと山へ様子を見に行くだけさ、な!いいだろ?リヒト」
リヒト「全く。分かったよ、じゃあ行くか」
コウ「へへっ!そうこなくっちゃ!」

〇山の中
リヒト「確かこの辺りだったよな? 見たことない魔法の類だったよな」
コウ「ああ、しかし相変わらず気味の悪い山だぜ」
リヒト「知ってるか? この山は昔聖騎士ハインライン様が闇の勢力と戦った場所なんだ。 村長の話じゃあ、まだその痕跡が残ってるらしい」
コウ「そりゃ、聞いたことあるがよ、おいおい雨まで降ってきやがった ますます気味悪くなってきやがった・・・」
リヒト「ん? おい、気をつけろ!!」

〇山の中
「ハッハッハ、二千年もの間に随分と弱くなったな、ハインラインよ 俺がどれだけこの瞬間を待ち望んだか分かるか」
ハインライン「くっっ」
ダークネス「世界は再び我々のものだ! 貴様が造ったこんなひ弱な世界なんぞ、簡単に潰してくれるわ! ハッハッハ!!」
ハインライン「くそ、これほどの力を蓄えていたとは、、、」
ダークネス「さあ、これで最後だ、死ねハインライン!!」
「待て!!!!!」
リヒト「そこまでだ!」
コウ「ハインライン様、すげえ本物だ! 二千年前の、ただの伝説かと思ってたぜ」
リヒト「そんなこと言ってる場合か!」
コウ「へへ、すまねえ。でも、ま、俺たちが来たからにはただじゃすまねえぞ!」
ダークネス「なんだ、この雑魚どもは」
ハインライン「お前たち、悪いことは言わん、すぐに逃げろ。。。 お前たちの敵う相手じゃない。。」
ダークネス「はっはっは、そういうことだ。お前たちなど神々の闘いに手を出していい存在ではない。消え失せろ、殺す価値もない」
ハインライン「ぐふっ、早く、早く逃げろ」
リヒト「お会い出来て光栄です、ハインライン様。 しかしその言葉は受け入れられません。 我らは聖騎士ハインラインの意思を継ぐ者」
コウ「そうそう、神々とか言ってっけどよ、昔話は寝て言えっての!」
リヒト「行くぞ、コウ!」
コウ「あいよ、リヒト!」
「聖なる光を我らの手に! その力、解き放たん! セイント!!!」

〇山の中
コウ「フライングアロー!!」
ダークネス「!!??」
リヒト「ハインライン様、お力を! スラッシュソード!!」

〇山の中
ダークネス「はっはっは! こんなものが効くと本当に思ったのか?」
リヒト「全く効いてない?!」
コウ「おい、嘘だろ・・・とっておきの必殺技が・・・」
ダークネス「小賢しいウジ虫どもめ! 死ね!!」
リヒト「やばい!!」
コウ「ここまでか!?」
ハインライン「ありがとう、人間たちよ。 君たちの聖なる力で力を取り戻した」
リヒト「・・・ハイン」
コウ「ライン・・・様」
ハインライン「覚悟しろ、ダークネス!」
ダークネス「ま、待て!ハインラインよ、お前本当に人間共の味方をするのか! こいつらがこの星を痛めつけてるんだぞ!」
ハインライン「ふん、月の光を無くしたお前には何も言う資格などない」
ダークネス「ちっ! こうなったら仕方ない。くたばれハインライン、くだらん人間と共に!!」
ハインライン「!!?」
ダークネス「闇魔法 ダークマター!」
ダークネス「はははは! 思い知れ、ハインライン!」
ハインライン「ふん、所詮その程度か」
ダークネス「まさか!!?」
ハインライン「再び、月へ二千年。 封印する」
ダークネス「待て、待ってくれ!」
ハインライン「セイントフォース!」
ダークネス「ぐはあーーー やめろ──」

〇山の中
  爆発で気を失ったリヒトとコウが 目を覚ますと、そこにはハインラインもダークネスもすでに居なかった。
コウ「いてててて・・・ あの二人は!!?」
リヒト「もういない・・・ あの敵も、ハインライン様も・・・ 俺たちはハインライン様に命を助けてもらったんだ」
コウ「ああ。 さすがにもう駄目かと思ったぜ」
リヒト「何も・・・出来なかった・・・な。 俺たち」
コウ「ああ、そうだな・・・ あんなにいつも修行してたのにな」
リヒト「なあ、コウ。 もっと強く、なろうな・・・ ハインライン様みたいに」
コウ「もちよ!」
  二人が聖地ハインラインから旅立つのは、もう少し後の話である。

コメント

  • 最初は伝説をバカにしていたリヒトとコウが、ハインラインの戦いに怯むことなく加勢し、自分たちの力が及ばなかったことを素直に認めて何かを学んだ姿に感銘を受けました。親の背中を見て子は育つと言いますが、伝説の騎士の戦いぶりを目の当たりにして後世の若者が発奮する姿も清々しいものですね。

  • 2千年の時を超え、正義の味方、人間の味方のハインライン様。若い二人の戦士は頼りないけど、貴方様はお強いのですね。頼りにしてます。

  • ハインラインかっこいいですね!
    伝説になって時間が経つと、その存在も薄くなりがちですが、ハインラインは今もなお戦い続けて、この世界を守ってるんだな、と思いました。
    それを受け継いだ彼らもこれからですよ!

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