ウンソーとハッカー

ソエイム・チョーク

エピソード2(脚本)

ウンソーとハッカー

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〇シックなリビング
  朝だ
  私は木﨑瑠璃、19歳
  株取引でお金を稼いでいる
  昔から体が弱くて、ちょっと夜更かしすると
  体調を崩してしまう
  ウンソーの人が買ってきてくれた薬のおかげか、一晩寝たら、お腹の具合は落ち着いた
  頭はまだ熱っぽいけど、もう1日ぐらい安静にしていれば回復するだろう
木﨑瑠璃「何か食べる物有ったかな?」
木﨑瑠璃「昨日のサラダと・・・ プリン? こんなのあったっけ?」
  サラダを食べているとリビングのテレビが勝手につく
AI「瑠璃、帰ったよ」
木﨑瑠璃「兄さん、何かいい話は有った?」
AI「トーナム運輸が新しい事業所を建てる準備をしているよ」
AI「それとルル屋が新商品を開発して、再来月から売り出すらしい」
木﨑瑠璃「それが発表されたら、どっちの会社も株価が上がるね」
  私はテーブルの下からパソコンを引っ張り出して、二つの会社の株を買う
  それぞれ3000万円ずつ
AI「レブンカナブンも新商品を開発している」
木﨑瑠璃「あそこはちょっと予測がつかないからパス いつも上げ底ばっかりだし」
AI「東温泉の新館の工事は遅れが出ている 完成は三ヶ月延期、来週月曜に発表する」
木﨑瑠璃「そこは9月に完成する予定だったはず 三ヶ月延期じゃ紅葉シーズン終っちゃう」
AI「カエデから取れるメープルシロップはカナダの特産品だ」
  東温泉の株を1000万円分、空売りする
  新館が完成した後に株価は戻るだろう
  うまく行けば二回儲かる
木﨑瑠璃「そうだ、このプリン昨日の人が買ってきてくれたのかな?」
AI「プリンは口に入れると甘い味がする」
木﨑瑠璃「昨日のウンソーの人の名前、入館記録を見ればわかるかな?」
  私はパソコンを操作してマンションの管理記録に不正アクセスする
  昨日、裏口から入館した人の一覧
  1507号室に来たのは一人しかいない
木﨑瑠璃「遠藤浩一・・・ 遠藤さんか、何かお礼した方がいいかな?」
AI「御中元はフルーツの缶詰がおすすめ いやがる人はまずいない」
木﨑瑠璃「兄さん・・・ そうじゃないよ・・・」

〇中規模マンション
遠藤浩一「こんにちは! ウンソーイーツです」
客「どうもー」
  今日は近場の配達が多くてスムーズに進むな
  次はこの注文にしよう

〇ファミリーレストランの店内
店員「お待ちしていました 荷物はこれです」
遠藤浩一「はいはい グラタンとスープとサラダ・・・」
  届け先は昨日のマンションだ
  1507号室、あの女の子の所だ

〇マンションの共用廊下
遠藤浩一「こんにちは ウンソーイーツです」
木﨑瑠璃「あ、やっぱり 昨日の人だ」
遠藤浩一「はい、もう体の調子はいいんですか?」
木﨑瑠璃「おかげさまで 明日には完治すると思います」
遠藤浩一「よかった・・・ あ、そうだ、これを返さないと・・・」
木﨑瑠璃「これは?」
遠藤浩一「ごめんなさい、昨日間違って持って帰っちゃったみたいで・・・返せないかと思って持ち歩いてたんです」
木﨑瑠璃「そうだったんですか ありがとうございます」
遠藤浩一「いえ、むしろ僕が怒られる側ですよ」
木﨑瑠璃「あの、そう言えば、昨日いろいろ買ってくれて、私、お金を払わないといけませんよね」
木﨑瑠璃「ただ、現金の持ち合わせがなくて・・・」
  こんなところに住んでるようなお金持ちはカードで済ませてそうだもんなあ
遠藤浩一「・・・いえ、大した金額じゃないんで」
木﨑瑠璃「そんな・・・悪いですよ あんなに優しくしてもらったのに」
木﨑瑠璃「それで考えたんですけど、私がご飯を奢るってのはどうでしょう どこかのレストランで」
遠藤浩一「えっ?」
木﨑瑠璃「大丈夫です、絶対に損したとは思わせませんから」
遠藤浩一「じゃあ、予定を開けておきます」
  毎日ウンソーをやってるから、予定なんてないけど
木﨑瑠璃「じゃあ連絡先を交換しましょう」

〇駅前広場
  そして数日後、僕は木﨑さんと食事に行く事になった
  今さら気づいたんだけど、もしかして、これってデートじゃないか?
木﨑瑠璃「あっ、遠藤さん、こっちです」
遠藤浩一「木﨑さん・・・服、かわいいね」
木﨑瑠璃「うふふ、ありがとう」

〇ホテルのレストラン
木﨑瑠璃「イタリアンレストランって、しばらくいかないと、すぐなくなっちゃうんですよ」
遠藤浩一「そういうものなの?」
木﨑瑠璃「うーん、私の経験上、そんな感じです」
遠藤浩一「ふーん」
  木﨑さんはこういう所によく来るのだろうか?
  しかし、メニューを見ても、何がなんだかわからない
木﨑瑠璃「とりあえずアヒージョを頼みましょう」
遠藤浩一「えっ? それって何?」
木﨑瑠璃「えーと、タパス?」
遠藤浩一「う、うーん?」
  スパゲッティーをパスタって言うけど、たぶんそれとは違うよね
木﨑瑠璃「あ、全部私が決めちゃった方がいいですか?」
遠藤浩一「うん、お任せで頼むよ」
木﨑瑠璃「苦手なものとかあったら教えてくださいね」
  よくわからないなりに、メニューの値段を見る
  どれも高いなぁ、たぶん1万円じゃ足りなそう
  僕がそんなことを考えていると、木﨑さんは微笑む
木﨑瑠璃「そんな遠慮しなくていいですよ 今日はお礼なんだから私が払います」
遠藤浩一「わ、悪いよ、そんなの」
木﨑瑠璃「大丈夫です、1000回奢ってもお釣りがくるくらいお金あるので」
遠藤浩一「あ、あはは」
  運ばれてくる料理はどれも人生で初めて食べるぐらい美味しかった
  ピザって生地の上に具材が乗ってるものだと思ってた・・・ピザ生地でいろいろ包んで焼く料理なんてあるのか・・・
遠藤浩一「お金があるって言うけど、株取引ってそんなに儲かるの?」
木﨑瑠璃「儲かると言えば儲かりますけど・・・」
遠藤浩一「何かコツとかあるの?」
木﨑瑠璃「残酷になることです」
遠藤浩一「え?」
木﨑瑠璃「株取引って、新しいお金が生まれないんです 私が儲かっている時、誰かが損をしている」
遠藤浩一「株取引をしてる人たちは、お金の奪い合いをしてるってこと?」
木﨑瑠璃「ええ、真似しようなんて思っちゃダメですよ」
  う、見抜かれている?
木﨑瑠璃「話は変わりますけど」
木﨑瑠璃「遠藤さんは、イジメってどう思います?」
遠藤浩一「えっ?」

次のエピソード:エピソード3

コメント

  • 今話は、木﨑さん目線でのスタートで、彼女の謎な部分が多少明らかになった感じですね。そして株取引の模様も。(「上げ底」には笑ってしまいました) 2人の関係がちょっと縮まった感じで、これからが楽しみです。

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