ウンソーとハッカー

ソエイム・チョーク

エピソード3(脚本)

ウンソーとハッカー

ソエイム・チョーク

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〇ホテルのレストラン
木﨑瑠璃「遠藤さんはイジメってどう思います?」
遠藤浩一「・・・」
  木﨑さんはどんなつもりでこんな質問をしているのだろう?
  答えにくい質問だ
  前田にイジメられていた僕は、絶対にダメだと言いたい
  けど、過去のことを話すのは勇気がいる
  木﨑さんにあんな話をして、ガッカリされたりしないだろうか?
  ここは一般論を答えるだけにしておこう
遠藤浩一「イジメはいけないと思うよ?」
木﨑瑠璃「私もそう思います けど、なんて言うか・・・」
木﨑瑠璃「たまに、イジメられる側に原因がある、みたいなことを言う人がいるじゃないですか ああいうのとか・・・」
遠藤浩一「それはよくわからないけど、あんまり正しくないと思う」
木﨑瑠璃「正しくない?」
遠藤浩一「原因があるって言うけど本当なのかなぁ」
遠藤浩一「そういうことを言う人って、その原因が何なのか、ちゃんと説明してくれないよね」
木﨑瑠璃「ふむふむ」
遠藤浩一「あと、本当に原因があったとしても、だからってイジメていいの?」
遠藤浩一「たとえ殺人犯だったとしても、普通は警察が逮捕して裁判に掛ける」
遠藤浩一「何年も法律を勉強した専門家が集まって話し合って決めなきやならない」
  猿みたいなクソガキと保身しか考えてない屑教師に、そんな高度なことができるだろうか? できやしない
遠藤浩一「一般人が思い込みで人を罰するなんて、許されることじゃないよ」
木﨑瑠璃「・・・」
  いけない、うっかり熱が入りすぎてしまった
木﨑瑠璃「本当にそう思いますか?」
木﨑瑠璃「一般人が罰を与えるのは、いけないことでしょうか?」
遠藤浩一「えっ?」
木﨑瑠璃「学校の中は一種の治外法権です どんな事件が起こっても警察は介入しない」
木﨑瑠璃「イジメが発生しても教師や校長を逮捕したりしない、これは職務放棄です」
遠藤浩一「・・・」
木﨑瑠璃「死人が出るまで、場合によっては死人が出た後でも、教師たちは問題を隠蔽する、責任のがれのために」
木﨑瑠璃「そして最後には、加害者にも未来がある、なんて言葉でごまかすんです」
木﨑瑠璃「人を死に追いやって平然としているような人たち、そんな悪魔のような人たちに未来を与えていいんですか?」
木﨑瑠璃「警察も教師も信用できない、それなら自分達でやるしかない そういう場合もあると思います」
遠藤浩一「待って? 木﨑さん何の話をしているの?」
  途中までは、イジメがいけないという話だったのに、いつの間にか、イジメの報復の話になっている
木﨑瑠璃「あっ、ごめんなさい」
木﨑瑠璃「ちょっと、昔のことをいろいろ思い出しちゃって・・・」
遠藤浩一「う、うん・・・」
  昔のことってなんだろう?
  木﨑さんもイジメにあっていたのだろうか?
  いや、死に追いやるってことは本人じゃない家族か友達がイジメられて自殺しちゃったとか?
木﨑瑠璃「あ、デザートが来ましたね」
遠藤浩一「そうだね」
遠藤浩一「そう言えば、藤山コインって知ってる?」
木﨑瑠璃「え?」
木﨑瑠璃「ああ、あの封筒の中身、見ちゃったんですね」
遠藤浩一「ごめん・・・」
木﨑瑠璃「その話はまだできませんね」
遠藤浩一「まだ?」
木﨑瑠璃「もっと親しくなったら、教えてあげます」
遠藤浩一「親しくって?」
木﨑瑠璃「その時のお楽しみです」

〇雑居ビルの一室
宮本「うー、眠いぃ」
宮本「何か変なエラー出る、原因わかんない・・・」
加藤「おいおい、何とかしろよ おまえがやらなきゃ誰がやる? 代わりなんかいないんだぞ」
宮本「うーん、こんなコード見たくないー 無修正エロ画像が見たいー」
加藤「ダメだこりゃ」
前田「そろそろ今月も終わりだけど、いくら集めたっけ?」
宮本「えーと、40億円ぐらい?」
前田「先月より勢い落ちてるな・・・ もっと効率よく巻き上げないとダメだ」
加藤「わかってるさ」
加藤「どうせ相手はバカなくせにプライドだけは高いジジババだ」
加藤「ちょっと難しい言葉を使ってやれば、聞き返せずにはいはい頷くだけになる 騙しやすくてアクビが出るぜ」
前田「まあ、都内の客だけじゃ限界はあるよな 金持ちのバカも無限にいる訳じゃない」
加藤「今社長が愛知で営業かけてるんだろ? いくら持ってくるかな?」
前田「ああ言うのは、金額より人脈だろ 1回目じゃそこまで稼げない」
前田「って言うかルートができたら俺らも出張じゃね?」
加藤「そもそもビットコインって儲かるのか?」
前田「儲かる! 確実に値上がりします!」
前田「現在、世界の富裕層はこぞってビットコインに投資しています、あなたも乗り遅れないように今すぐ!」
加藤「そんな営業トークじゃなくてさ・・・」
前田「俺は買ったことないからわからないな」
宮本「睡眠・・・あるいは無修正エロ画像・・・」
加藤「どっちも違法じゃねーか」
宮本「俺が寝ると有罪になるの? まじで?」
内海「やっと来たか」
配達員「ウンソーイーツです」
加藤「遅すぎだぜ、うらぁ」
配達員「うわぁっ? 何でゴミを投げてくるんですか?」
加藤「あれ? 今日はあいつじゃないのか・・・」
配達員「あの、食べ物を持ってきているので、そういうのは・・・」
内海「はいはい、そこに置いてね」
加藤「遠藤が来ると思ったのに、やっちまったかな?」
内海「気にすることないさ、どいつもこいつも似たようなものだ」
内海「こんな仕事でしか日銭を稼げないようなクズが俺らに何か復讐できるのか?」
加藤「ま、それもそうか」
配達員「まったく、何なんだよ・・・」
配達員「配達レビュー、星1にしちゃお・・・」

〇古いアパート
  帰ってきた・・・
遠藤浩一「楽しかったなぁ、食事も美味しかったし・・・」
遠藤浩一「お金持ちっていいよなぁ」
遠藤浩一「でも・・・木﨑さんは、どうしてあんな話をしたんだろう?」
遠藤浩一「イジメに関係している? 過去に何かがあったのかな?」
遠藤浩一「待てよ? 木﨑? 昔どこかで聞いた名前のような気が・・・」
  スマホで検索してみる
遠藤浩一「やっぱり、そうだったんだ・・・」
  高校生のころ、僕は前田からイジメをうていた
  イジメがやんだきっかけは、市内の別の高校で自殺事件が起こったから
  その時に自殺した生徒の名は、木﨑幸雄
  僕のひとつ年上・・・
遠藤浩一「もしかして木﨑さんは、木﨑幸雄の妹なのか?」

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