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きせき

エピソード18-黄色の刻-(脚本)

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〇城の会議室
  チェーンの切れた懐中時計を持っていたトキに、
  昨日の食事会には姿を見せなかった青刻さん。
  それに、体調不良で自邸に帰った東刻さんと
  姿すら見せなかった専属使用人の南田さん。

〇諜報機関

〇黒
  折角、犯人像が絞れてきたのに、
  私はまたもや行き詰まって、
  リエさんが持ってきてくれたホロホロ鳥のローストを
  食い入るように見つめていた。
黒野すみれ「(普通さ、これがミステリーならこいつが犯人って言う証拠があったらさ)」
「・・・・・・ん?」
黒野すみれ「(犯人が確定して推理ショーが始まるのに、逆に疑わしい人が増えていくなんて)」
「・・・・・・うぶ?」
黒野すみれ「(確かに、トキはここにはいないと仮定してたし、この時点で青刻さんが来るなんて)」
「す・・・・・・」
黒野すみれ「(思いもしなかったから、普通に南田さんをマークしようと思ってた)」
「すみれちゃん、大丈夫?」

〇城の会議室
黒野すみれ「あ、トキ・・・・・・」
物部トキ「あ、トキ・・・・・・じゃないよ。どうしたの?」
物部トキ「ホロホロ鳥のローストは我が親の敵!! みたいな目で見てるけど・・・・・・」
黒野すみれ「親の敵・・・・・・って」
物部トキ「まぁ、それはたとえだけど、かなりこわい顔してたよ?」
  そう、

〇風流な庭園
  あの時、私を襲ってきたあの人が
  彼女だということもありえるのだ。

〇城の会議室
黒野すみれ「(懐中時計の修理の話だって最初に話して、犯人候補からはずれる作戦なのかも)」
黒野すみれ「(後からポロッと分かるよりも、先に情報として伝えている方が話が広げにくいし、)」
黒野すみれ「(やり方次第で自然に見せることもできそうだし・・・・・・)」
  例えば、こんな感じに。

〇一階の廊下
黒野草輔「あ、すみれ・・・・・・」
黒野すみれ「誰、その人?」
黒野草輔「ああ、彼女は今度の依頼人の倉淵今子(くらぶちいまこ)さん」
黒野草輔「ほら、彼女も旦那さんに先立たれたようで、色々と話を聞いていたんだ」
ホステス5「ええ、黒野さんには夫が亡くなった後、色々、良くしてもらっていて・・・・・・」

〇黒
  よりも、

〇シックなリビング
黒野草輔「あ、すみれ。次の日曜って空いてるかな?」
黒野すみれ「うん、空いてるけど?」
黒野草輔「実はな、お前に是非、会ってもらえたらなって人がいて」
黒野草輔「会ってもらえたら、嬉しいんだけど、どうかな?」

〇黒
  そして、次の日曜日・・・・・・

〇ホテルのエントランス
黒野草輔「こちらが倉淵今子さん」
黒野草輔「色々、話を聞いたりしているうちにすっかり意気投合しちゃってさ」
ホステス5「初めまして、倉淵今子です。黒野さんには夫が亡くなった時に良くしていただいてました」
黒野草輔「それでな、お互い、再婚を前提につきあっているんだ」

〇黒
  の方が明らかに色々、聞きにくいだろう。
黒野すみれ「(まぁ、そんな事実はないと思いたいけど、まだ後者なら納得はできるだろうから)」

〇城の会議室
エマ「さて、本日のデセールは黒野様からのご要望でクレープシュゼットをご用意いたしました」
  アントレのホロホロ鳥のローストは綺麗になくなり、
  私がリクエストしたクレープシュゼットがワゴンの
  コンロでできていく。
物部トキ「わー、綺麗だね。すみれちゃん」
黒野すみれ「うん、そうだね・・・・・・」
  コンロの上のフライパンは炎を纏い、
  その場にいる人はそれを見つめている。
  その火は確かに綺麗で、

〇古民家の蔵
  こわかった。

〇古民家の蔵

〇古民家の蔵

〇黒
黒野すみれ「(考えろ、誰も死なないように。犯人ならどんな行動を取るか、を)」

〇洋館の廊下
  食事会がミニャルディーズまで済むと、
  おのおの解散していく。
  トキはまだ、話し足りないから私の部屋に来ないかと
  誘ってきたが、私は少し疲れたから、と言い、
  リエさんを連れ立って部屋に戻った。

〇貴族の部屋
黒野すみれ「すみません、明らかに時間外労働ですよね」
リエ「いいえ、良いんですよ。さて、黒野様、今から胡蝶庵へ行かれるでよろしいんですか?」
黒野すみれ「はい、もし、あの人が犯人ならあそこにいる可能性は高いと思います」
黒野すみれ「まぁ、はずれていたとしたら、その時はその時で考えます」
  その時はまたやり直すことになるだろうけど、
  現状で考えられる全てを潰していくしかない。
  私はまた防刃チョッキと同じ材質で作られたドレスに
  着替えて、胡蝶庵へと向かった。

〇車内

〇大きな日本家屋

〇風流な庭園
  ガサガサ!!
黒野すみれ「(誰か、いる!!)」
  私は悟られないように、その人物に近づく。
黒野すみれ「(あと少し・・・・・・)」
  私は思わず木の枝を踏みつけてしまうが、
  もう至近距離だった。
黒野すみれ「動くな・・・・・・動くと刺す」
  よもや、そんな台詞を演技でもない時に口にするとは
  思いも寄らなかったが、私は淡々と言った。
  そして、私はその人物に武器を捨て、マントを脱ぐように
  命じた。
黒野すみれ「貴方がここに来るかは正直、分かりませんでしたけど、」
黒野すみれ「あの時、落とした欠片を探しに来たんですよね? 南田さん・・・・・・」
黒野すみれ「いや、喜多井さんと呼んだ方が正確でしょうか?」
南田「喜多井・・・・・・様?」
  はて、どちら様でしょう。と、言わんばかりの態度で
  南田さんは言う。

〇貴族の部屋
  ただ、マリさんの資料はまさに真理なのだ。

〇風流な庭園
黒野すみれ「貴方の身のこなしは只者じゃなかったし、ナイフや銃、毒の扱いも慣れている」
黒野すみれ「貴方が春刻や私を殺そうとし、秋川さんを誤って死なせたんじゃないんですか?」
南田「ふふ、それでは、私は何故、貴方や春刻様を銃で始末しなかったのでございましょう?」
南田「私がその喜多井某だったとしたら、髪の毛やゲソ痕など」
南田「何かしらの痕跡が残るかも知れない」
南田「あとは確実に始末するなら、この国がいくら銃刀法違反の国でも殺傷率もあるものを」
南田「使うべきでございますし、賊の輩をでっち上げても十分でございましょう?」
黒野すみれ「それはおそらくですが、東刻さんの為だったのではないかと」
南田「東、刻様の為?」
黒野すみれ「ええ、貴方は昔はともかく、殺し屋ではありません」
黒野すみれ「確かに、色んな技術は持っているかも知れませんが、」
黒野すみれ「貴方は東刻さんを当主にする為に春刻を殺そうと計画した」
  そこまで行くと、私は1つ、
  失念していたことに気づく。
  それは、そのまま、春刻を亡き者にしても、
  継承順位でいけば、朝刻さんがいて、彼が当主に
  なることはできないことだ。

〇山の展望台

〇風流な庭園
南田「さようでございます。私は春刻様のみならず、朝刻様も手にかけようとしていた」
南田「とでもおっしゃるのございましょうか?」
  落ち着き払ったような態度を崩すことなく、ただ、
  勝ち誇ったようでもない彼の態度はどこまでも
  多少は嫌味だが、紳士的なものだった。
黒野すみれ「分かりません」
黒野すみれ「ただ、不審死が相次いだ場合、疑われるのは東刻さんではないでしょうか?」
  確か、エマさんも言っていた。

〇車内
エマ「春刻様を狙うご兄弟を物理的、あるいは社会的に抹殺する」

〇風流な庭園
  ことは自分達にはできない。
  だとしたら、専属使用人である彼らなら?
  しかも、不審死で春刻が亡くなった場合、1番先に
  疑われるのは第2継承者の朝刻さんではないだろうか。

〇山の展望台
「警察だ!! 明石春刻殺害容疑で明石朝刻、逮捕する!!」

〇風流な庭園
南田「成程、確かに疑わしくございますね」
南田「それを上手くすれば、私は手を汚さずして、東刻様は当主になれるかも知れません」
  南田さんは内ポケットのある辺りを僅かに触れると
  息を少し吐き出した。
  そして、視線を彷徨わせ、私を見て聞いてきた。
南田「でも、どうして、私がそこまでする必要があるのございましょう?」
南田「確かに、東刻様が当主になることは使用人にしては利になりましょう」
南田「ですが、私はもう何年も東刻様にお仕えすることはできぬでしょう」
南田「そして、万が一にもありませんが、東刻様が私に春刻様の殺害を命じたとしましょう」
南田「東刻様は私に退職後も大金をくださるかも知れませんが、」
南田「私には無用の長物でございます。もう既に家族と呼べる者もございませんし、」
南田「仮にここで果てようとも、未練など、もう毛ほどにもないのでございますよ」
  寡黙な執事に見える彼の、淡々した独白。
  私はそこまで口を挟まず聞いていた。
黒野すみれ「それはどうでしょうか? 少なくとも、貴方は東刻さんのことを思っているのでは?」
黒野すみれ「確かに、春刻の屋敷の敷地で懐中時計のチェーンの鎖が切れた」
黒野すみれ「見つかればかなり危険です」
黒野すみれ「でも、小さな1リンクなんて見つけにくいし、仮に見つかっても、せいぜい、」
黒野すみれ「春刻の屋敷へ無断で入ったと疑われるだけでしょう」

次のエピソード:エピソード19-朱色の刻-

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