エピソード3(脚本)
〇講義室
大勢の生徒が講師の話を聞いている。
ぼーっとスマホの画面を見ているまひる。
〇映画館の入場口
電光掲示板にはポスターが貼られている。
「お時間少々大丈夫ですか?」
スタッフが声をかけてくる。
「今、こちらの映画ご覧になりましたよね?」
浅枝まひる「はい。あの、これは?」
「只今、『恋猫』をご覧になったカップル様限定のキャンペーンを行っておりまして」
浅枝まひる「え、カップルですか?」
「恋猫ポーズの写真を撮らせていただいた方には、こちらのストラップをプレゼントしています」
浅枝まひる「わあ。あんこちゃん! 可愛い!」
「はい。限定品ですのでこの機会にぜひ」
浅枝まひる「あ、でも私たちは、その・・・」
「あれ? お二人のご関係は?」
浅枝まひる「え、いや、まだ、その・・・」
「失礼しました。お兄様でしたか。 それでは、残念ですが」
浅枝まひる「こ、恋人!」
浅枝まひる「・・・です」
〇映画館の入場口
スタッフがポラロイドカメラを構えている。
「では、恋猫ポーズお願いします!」
結城ないと「こうかな?」
結城がまひるの後ろに立ち、両手をグーにして頭の上に乗せる。
「彼氏さん、映画みたいに、彼女さんの頭に顎を乗っけてくださーい」
結城ないと「顎、ですか?」
「お二人、本当に恋人ですよね?」
結城ないと「もちろん、恋人ですよ」
浅枝まひる「え、結城さん?」
結城ないと「今からだけどね」
浅枝まひる「!」
まひるの顔がみるみる真っ赤になる。
「えっと、彼女さん、大丈夫ですか?」
浅枝まひる「よ、よろしくお願いします!」
「はい。チーズ」
〇講義室
浅枝まひる「そうだ!」
思い立ったように立ちあがるまひる。
周囲の視線が集まる。
〇古い大学
〇明るい廊下
まひるが走ってやってくる。
〇散らかった研究室
根岸辰蔵「京坂君。 ラバージ博士の『夢見の技法』は君の家だったかね?」
浅枝まひる「あの・・・」
根岸辰蔵「君は確か・・・」
浅枝まひる「浅枝です。結城さんの・・・」
根岸辰蔵「ああ、そうか。入り給え」
浅枝まひる「失礼します」
根岸辰蔵「適当にかけてくれ」
まひる、椅子に座る。
根岸がその前にやってくる。
根岸辰蔵「結城君のことは残念だったよ」
浅枝まひる「・・・はい」
根岸辰蔵「今日は?」
浅枝まひる「あの、根岸教授にお尋ねしたいことがありまして」
根岸辰蔵「何だね?」
浅枝まひる「結城さんのことで・・・」
根岸辰蔵「・・・・・・」
まひるの前の席に座る根岸。