エピソード4(脚本)
〇明るい廊下
京坂が書類を抱えている。
「何度も言わせるんじゃない!」
「今すぐこの部屋から出ていきなさい!」
ドアが勢いよく開く。
京坂康介「いってー」
京坂康介「え? まひる?」
浅枝まひる「・・・・・・」
京坂康介「おい! 待てって」
〇大学の広場
京坂康介「待てって。まひる」
浅枝まひる「・・・・・・」
京坂康介「おいってば」
京坂康介「なんでお前がうちの研究室に来てんだよ。 お前は文系だろ」
浅枝まひる「康介には関係ない」
京坂康介「あ? なんでだよ」
浅枝まひる「康介になんかわかるはずない!」
京坂康介「わかんねーだろそんなの」
浅枝まひる「どうせまた笑うんでしょ」
京坂康介「・・・朝はごめん。もう笑わねーよ」
浅枝まひる「じゃあ、教えてよ」
京坂康介「?」
まひるの手が震えている。
浅枝まひる「ないとは私に何を伝えようとしてるのよ」
京坂康介「・・・・・・」
〇学食
京坂康介「な、今日のスペシャルはすげーだろ?」
京坂康介「なんてったって、いつもの倍だぜ倍。 俺のおごりだからじゃんじゃん食えよ」
浅枝まひる「・・・・・・」
京坂康介「腹減ってねーのか? うまいぞこれ」
浅枝まひる「・・・・・・」
京坂康介「はぁ」
京坂康介「そりゃ、教授が怒るのも無理ないよ」
京坂康介「夢の研究っつっても、教授は脳科学者だぞ?」
浅枝まひる「?」
京坂康介「亡くなった恋人が夢枕に立つ理由を教えてください」
京坂康介「なーんて面と向かって言うとは」
浅枝まひる「だって・・・」
京坂康介「朝も言った通り、俺たちの研究は夢に解釈を求めるような心理学的なアプローチとは180度違うの」
浅枝まひる「そんなの・・・知らないもん」
京坂康介「とにかく、お前は教授の一番押してはいけないボタンを押しちゃったの」
浅枝まひる「あんなに怒ることないのに」
浅枝まひる「ないとに聞いてた人と全然違う」
京坂康介「そりゃあ、教授にとっても結城さんは特別な人だったからな」
浅枝まひる「え? どういうこと?」
京坂康介「教授って子どもいないからさ。 結城さんのこと、研究のパートナーっつーよりも、自分の息子みたいに可愛いがってた所あるから」
浅枝まひる「・・・そっか」
京坂康介「はは。 依怙贔屓しまくりで、こっちがやきもち焼いちゃうよ」
浅枝まひる「私、そんなことも知らないで」
浅枝まひる「自分ばっかりが悲しんでると思ってた」
京坂康介「あ、いや、そういうつもりで言ったんじゃなくて」
浅枝まひる「いいの」
京坂康介「でも、教授のあんなでかい声、久しぶりに聞いたよ」
浅枝まひる「?」
京坂康介「惜しい人を亡くしたって、ここんとこずっと元気なかったからな」
京坂康介「教授もスカッとしたんじゃない?」
浅枝まひる「・・・康介」
京坂康介「ん?」
浅枝まひる「ありがと」
京坂康介「お、おう」
浅枝まひる「私、もうくよくよするの止める」
浅枝まひる「私がいつまでもこんなんじゃ、ないともきっと喜んでくれないよね」
京坂康介「そうだな」
浅枝まひる「ないと!」
京坂康介「え? 結城さん?」
京坂康介「お、おい。ハンバーグ・・・」
〇施設の入口
浅枝まひる「ないと!」
「え? 僕のことですか?」
浅枝まひる「ごめんなさい。人違いでした・・・」
京坂康介「・・・・・・」
〇住宅街
京坂康介「でさ、高校で体育教えてたエンマモっていたろ?」
京坂康介「ほら、やたらと女子の腰触ってきたやつ」
浅枝まひる「・・・・・・」
京坂康介「あいつ、セクハラでクビになったんだってよ。 ウケるよな」
浅枝まひる「・・・ここでいいよ」
〇白いアパート
京坂康介「まだこのボロアパートに住んでんだ」
京坂康介「俺が荷物運んでやったんだよなー。 まひる、絶対すぐに音を上げると思ってたんだけど」
浅枝まひる「こっちにはほとんど帰ってこなかったから」
京坂康介「?」
浅枝まひる「ずっとないとの家にいたから」
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