後は野となれ 花となれ

もと

貰える物は貰え(脚本)

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〇西洋の街並み
リュート「朝の散歩になるとは、やれやれだな」
赤子「ぶう」
リュート「用があれば泣けとは言った だが用が無いなら泣くな、頼むから」
赤子「だぶ」
リュート「まったく・・・何が楽しいんだ」
赤子「あーぶ」
リュート「・・・ここか」
  まずは石を金にしなくては何もならない。
  しかし鶏頭が教えてくれたのは武器屋だ。
  もう疑うのも面倒、怪しくて笑えてくる。
リュート「邪魔するぞ」

〇鍛冶屋
武器屋の主人「へい! らっしゃっい!」
  ・・・なんでだ。
リュート「宿屋の紹介で来た、石を買い取っ・・・」
武器屋の主人「へい! 聞いておりますぜ旦那! 朝から札束用意して待ってやした!」
リュート「そうか、これなんだが値を・・・」
武器屋の主人「ヒャッハー! マジもんだぜ!」
リュート「ああ・・・ なんかもう任せる、頼む・・・」
武器屋の主人「おっと! ちょっと待ちねえ、インク壺がアッチだ! 取ってくるぜ! 好きに見ときな!」
  ・・・既に魔物に屈した町なのだろうか?
  ここに来るまで人間ともすれ違ったが、
  割合が過ぎるだろう。
  魔力に気付かれる前に発たなければ。
リュート「おい、お前は・・・ワイズは この町は平気か?」
ワイズ「あぶっ」
リュート「・・・ふむ」
武器屋の主人「へい! お待ち! いやあ旦那、こんな大金久々に見るぜ!」
リュート「ああ、そうだな とりあえず何束か貰って残りは・・・」
武器屋の主人「へい! こちら預り証でい! サインよろしく!」
リュート「・・・ああ、預かりを頼む」
武器屋の主人「ところでお坊っちゃんだっけか? ゴキゲンじゃないか! ずっと歌ってやがるな!」
リュート「・・・歌?」
リュート「・・・そうか、歌のつもりだったのか」
リュート「・・・書けたぞ」
リュート「ついでだ、長剣が欲しい」
リュート「ただの護身用だから軽い物を・・・」
リュート「・・・勝手に選ぶぞ」
リュート「これで良いか」
リュート「・・・これも」
リュート「預けた金から抜いてくれ」
ワイズ「だあ!」
武器屋の主人「へい!」
リュート「終わったのか?」
武器屋の主人「可愛いねえ、旦那!」
ワイズ「ばっぶ!」
リュート「・・・どうも」
  歌か・・・ただ歌に聞こえるだけだとは
  思うが、少し調べてやろうか。
  布屋に娼館に本屋が追加か。
  食料も要る。
  ワイズを連れて動くとなれば、確かに
  数日かかりそうだな・・・。
  まあ、楽しそうで何よりだが・・・。
  ・・・帰り辛いじゃないか・・・。

〇ヨーロッパの街並み
ワイズ「だーあ」
ワイズ「うーあ」
リュート「・・・お前を拾ってから まあいい、と事を流してばかりだな」
  まずは娼館か。
  性格の悪い女でなければ、そのまま買って
  連れて戻った方が便利が良いか・・・。
ワイズ「あーぶ」
  ・・・やはり残酷ではないのか。
  我が子を失った女に他人の子を抱かせ
  世話をしろなどと・・・。
ワイズ「あーあ」
ワイズ「わー」
リュート「・・・少し遠出になる、馬車に乗るぞ」
リュート「・・・ん?」
リュート「な、なんだ?」
リュート「なんでだ?!」
町のシスター「あらあら、元気な泣き声で、まあまあ」
リュート「あ、ああ、すまない 騒がしいな・・・」
町のシスター「いえいえ、赤ちゃんですもの 泣くのがお務めですよ」
町のシスター「お困りでしたら少し休んで行かれます? ちょうど礼拝堂にはどなたも いらっしゃいませんし・・・」
町のシスター「なにより、私共が構いたくて 仕方ないのですよ」
リュート「あ、ああ・・・」
  あまり関わり合いを増やしたくは
  無いが・・・注目の的になるよりは良い。
リュート「すまないが、頼む・・・」

〇大聖堂
町のシスター「どうぞどうぞ」
リュート「・・・美しい教会だな」
町のシスター「ありがとうございます」
リュート「ん? 機嫌は直っ・・・てないか」
町のシスター「何かお飲み物を持って参りますね、 どうぞ、お掛けになって」
リュート「いや、このような場で・・・」
町のシスター「構いませんわ 神が赤ちゃんを罰するとお思いですか?」
町のシスター「皆も呼んで参りますね 泣き声を聞いてソワソワしていたのですよ」
リュート「ああ・・・すまない」
  神に祈りを捧げる場で施しを受けて
  良い身分では無いが・・・。
  泣き止んだか?
リュート「・・・ん? おい、どういうつもりだ?」
ワイズ「だっ」
リュート「・・・馬か?」
ワイズ「ぶう!」
リュート「馬が嫌いか? 怖いのか? というか確実に言葉が分かっているだろ? 何故分からぬ振りを・・・」
ワイズ「だ!」
リュート「そうか・・・理由があるなら仕方がない いや、歩くとなれば半日はかかるぞ? お前を抱いて・・・」
町のシスター「お待たせしました どうぞ、お紅茶と白湯です 皆も連れて参りました」
リュート「手間をかけさせてすまない」
町のシスター「私達で飲ませて差し上げましょう」
リュート「ああ、では頼む」
  ・・・ワイズが懐いていないな。
  ここに長居は無用という事か。
  まさか馬で機嫌を損なうとは
  思わないじゃないか。
  何か腹に入れて貰えば落ち着くか?
  ・・・愛想笑いしてるのか、面白いな。
  まあ、これから先の稼ぎを思えば存分に
  振り回されてやろうか。

〇ヨーロッパの街並み
リュート「さて・・・行くぞ」
リュート「・・・気付いていたか? あのシスター達の中にも魔物がいたな」
ワイズ「だぶ」
リュート「どう思う? この町の人間と魔物は・・・」
ワイズ「あば?」
リュート「・・・表向きは赤子か、便利なものだな」
リュート「術師が近くにいるな? ・・・ワイズ、魔力は使うなよ?」
ワイズ「ぶ!」
リュート「強いな? 俺でも分かるぐら・・・」
町人「こちらへ、早く!」
リュート「・・・世話になる」

〇暖炉のある小屋
町人「夜は酒場、昼はただのレストランです まだ店を開けてもいません」
リュート「・・・ふむ」
町人「建物には結界を張りました 簡単な物ですが目眩ましぐらいには なるでしょう」
リュート「・・・すまない」
町人「いえいえ、地下へご案内します 他の皆も気付いて向かっているでしょう」
リュート「ああ・・・いや待て、どうなっている?」
町人「この町は地下で繋がっています 普段は使わない様にしているので 多少ホコリっぽいのですが・・・」
リュート「そうではなく、この術師の気配は 俺達を追っているのか?」
町人「でしょうね」
リュート「だとしたら何故助ける? ここは軍属の町ではないのか?」
町人「ええ、軍属ですが軍に従っている訳では ありません とにかくこちらへ」
  全く読めないが・・・
  ワイズは警戒すしていないな?
  信じるか、お前の反応を。

〇地下室
町人「さあさあ、こちらへ その奥の扉を開ければ道になってます」
町人「大通りは地上と同じですが、小道や路地は 複雑なので入り込まぬ様に・・・」
ワイズ「ばぶ」
町人「あらあら、良いお返事ですね」
リュート「・・・すまない 俺達を助けてくれているのだろう? どういう事なんだ?」
町人「では簡単に・・・」

〇魔法陣
  ・・・完全に結界を張られたな。
  魔方陣も描けると云うか。
  全くどうなっているんだか・・・。
町人「まず、この町の魔物は元人間です」
リュート「・・・ふむ」
町人「理性を保ったままの者とダメだった者が 半々でしょうか」
町人「ダメだった者達は町で『食事』をしたり 暴れ回ってそのうち出て行きました 残ったのは私達、そして一握りの人間です」
町人「身分のある者は金で加護を買っていました 生まれながらに加護を授けられていた 者達も魔物化を逃れ・・・」
町人「今の姿の町へと成りました」
リュート「魔物化への術をかけたのは軍か?」
町人「ええ、単純に『従え』という事ですね 大きな町でしたから頭数を揃えるには ちょうど良かったのでしょう」
町人「簡単に術師をあぶり出し 使えそうなら連れていく、という・・・」
リュート「この国は何をしようとしているんだ?」
町人「さあ? 刃向かう町や村は焼き払い 従うなら生かされるだけです」
ワイズ「ぶ!」
町人「ンフフ、噂通り可愛らしい 怒って頂けるとは嬉しい限り・・・」
町人「ですが」
町人「お子様の魔力が術師に 嗅ぎ付けられたと思って良いでしょう」
町人「先日隣と言っていいほど近くの町が 黒龍に焼かれました そういう術師がまだ側にいたのでしょうね」
リュート「・・・ふむ、忠告感謝する」
リュート「ワイズ、別に気にするな お前のせいではない」
ワイズ「だあ・・・」
リュート「俺が結界を張れたら良かっただけだ まあ、落ち着くまでクソを消したり 日常の事で魔力を使うのは控えておけ」
ワイズ「むう・・・」
町人「ウフフ、面白いものですね? とてもお喋りで飽きませんし、ンフフ、 生活に魔力を使うと?」
リュート「ああ、少し変わった赤子でな・・・ いつから気付いていたのか?」
町人「今朝一番に宿屋が走って来ましたよ? 可愛いらしい旅の術師が入ったと・・・」
リュート「・・・そうだったのか」
リュート「騒がしてすまない 町を巻き込んでしまう前に発つとしよう」
町人「いえ、お待ちを」
町人「もう布屋が着きます パン屋も靴屋も肉屋も花屋も来ます」
リュート「・・・あ、ああ、そんなに 手間をかけさせたな」
町人「発つと言われると思いまして、 他に何か必要な物はありますか?」
リュート「いや、そもそも何故そんなに気にかける? 旅人は珍しくもないだろう?」
町人「可愛いからですよ、ワイズ君が」
町人「私達はもう子は望めません 僅かな人間に託され、何十年振りの子も 流れてしまったのです」
町人「そこへあなた方が現れたのですよ? 助けるに決まってます」
リュート「・・・そうだったか・・・」
町人「あ、来ましたね 皆を入れます ワイズ君? 静かにしておくように」
ワイズ「ばぶ!」
町人「ンフフ」

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