恋文先生!!

神楽坂駿

第二話「初の恋文添削」(脚本)

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〇古い図書室
  雄馬君の勢いに負けて、ラブレターの書き方を教えることになった少し後。
  鞄を取ってくるから先に行ってくれと言われ、私は図書室へとやってきた。
七草詩織「ラブレターの書き方か。まさか、そんなことを教えることになるなんてね・・・」
  そう呟きながら、図書室の中を進んで行くと・・・。
七草詩織「きゃっ!」
  前をしっかり見ていなかったせいで躓いてしまい、そのまま体が前に倒れていく。
高田雄馬「危ない!」
  そのまま転ぶかと思った瞬間、後ろから現れた雄馬君が体を支えてくれる。
七草詩織「あ・・・」
高田雄馬「はぁ・・・間に合ってよかった・・・」
七草詩織「う、うん! あ、ありがとう、雄馬君」
  雄馬君と触れ合っていることに気づいた私は、慌てて彼から離れる。
高田雄馬「こんなところで転びそうになるなんて、何か考え事でもしてたのか?」
七草詩織「え、えっと、そ、そんなところ!」
高田雄馬「そっか。危ないから考え事しながら歩くのは、ほどほどにな」
高田雄馬「それじゃあ早速だけど先生。俺のラブレター、どうすればよくなると思う?」
七草詩織「あ、えっと・・・そうだね・・・」
七草詩織「・・・とりあえず、適当なレポート用紙でいいから、さっき見せてもらったラブレターを書き直してもらえる?」
七草詩織「その・・・結局、ほとんど読めなかったから・・・」
高田雄馬「ああ、わかった。 次はもう少し丁寧に書いてみるよ」
  そう答えた雄馬君は、ペンと紙を取り出すと、ラブレターを書き直し始めた。
七草詩織(雄馬君、すごく真剣な顔してる。 それだけ、楓のことが好きってことだよね)
七草詩織「・・・はぁ」
七草詩織(でも、雄馬君の真剣な顔・・・カッコいいな)
七草詩織(こんな距離で見られることもなかったから、つい見入っちゃう・・・)
  そんなふうに雄馬君を見つめていると、脳裏に昔の思い出が過ぎる。
七草詩織(そういえば、昔もこんなことあったな。 その時は図書館だったけど、男の子と二人で・・・)
七草詩織(あれは、誰だったっけ──)
高田雄馬「できた! 見てくれ先生!」
七草詩織「い、今更だけど・・・先生はやめてもらえると嬉しいかな・・・」
高田雄馬「なんでだ? ラブレターの書き方を教えてくれるんだから、先生が正しいと思うんだけど・・・」
七草詩織「だ、だって恥ずかしいし・・・それに・・・」
  私なんて、ちょっと文章を書くのが得意なだけ。だから、先生なんて呼ばれるほど立派なわけじゃない。
高田雄馬「それに?」
七草詩織「な、なんでもないよ。それより、ラブレター、貸してもらってもいい?」
  雄馬君からラブレターを受け取り、そのまま目を通す。通したんだけど・・・。
七草詩織「あの・・・どうして全部、赤のマジックで書いたの?」
高田雄馬「やっぱ恋といえば、情熱の赤だろ? この方が俺の想いがバッチリ伝わるかなって!」
七草詩織「ええっと・・・」
  雄馬君の書いたラブレターは、急いで書いたせいか、所々が滲んでおり、まるで血のようにしか見えなかった。
七草詩織「その・・・赤い文字はちょっと良くないかも・・・」
高田雄馬「そうか? 名案だと思ったのに・・・」
七草詩織「あと、この『Dear楓さん』って部分、スペル間違えて『Dead楓さん』になっちゃってる」
高田雄馬「うわ、マジだ・・・Deadって、楓さん死んじゃってんじゃん・・・」
高田雄馬「ま、まあここは直すとして・・・中身はどうだ?」
七草詩織「今、目を通してみてるけど・・・」
七草詩織(ラブレターの書き出し・・・どうして『お世話になっております』なの? これじゃまるで仕事の定型文だよ・・・)
七草詩織「かと思いきや、最後の方に書いてあるのは、『おお太陽! 君は太陽! まるでニコニコした太陽だ!』って・・・」
七草詩織「これは、詩? 詩なのかな・・・?」
高田雄馬「どうだ? 中身は結構自信はあるんだけど・・・」
七草詩織「え? こ、これで自信があるの?」
高田雄馬「ああ!」
七草詩織(笑顔が眩しい・・・! でも、言いたくないけどこれは・・・)
七草詩織「その・・・雄馬君には悪いけど、このラブレター、ちょっと酷すぎるかな・・・」
高田雄馬「えっ!? どこがだ!?」
七草詩織「えっと・・・文法がメチャクチャだし、その、表現も少し良くないというか・・・」
  良くないというか、正直ダサい。
高田雄馬「うーん・・・ラブレターって思ったより難しいんだな・・・」
七草詩織(それに、一番の問題は・・・雄馬君が楓のことを好きだっていう気持ちが伝わってこない部分な気がするな・・・)
七草詩織「ねえ雄馬君。そもそもの話なんだけど、どうして急にラブレターを書こうと思ったの?」
高田雄馬「それは・・・お前の作文を聞いたからだよ」
七草詩織「え?」
高田雄馬「コンクールの作文で言ってただろ? 言葉は目には見えない想いも形にできるって」
高田雄馬「俺、今、心の中ですげーモヤモヤしててさ」

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