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きせき

エピソード17-雑色の刻-(脚本)

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〇貴族の部屋
エマ「そろそろ、夜の支度をシェフがするということで、」
エマ「希望を聞いて欲しいとのことでございました」
  今日も朝刻さんと東刻さんはご一緒に、ということで、
  彼らの計らいで今日のメニューは私が良いものを選んで
  それを食べようということになったらしい。

〇諜報機関
エマ「東刻様はプロシュート・クルードとプロシュート・コットの違いを生かした前菜に、」
エマ「明石家の黄金色のコンソメスープ。ホタテのポワレ。塩トマトのソルベ」
エマ「ホロホロ鳥のロースト。さくらんぼとアーモンドのクラフティ」
エマ「アーモンド以外のナッツを入れて焼いたクッキーとマンデリンを薦めておりました」

〇山の展望台
エマ「朝刻様は前菜は鴨肉のコンフィに季節の野菜を添えて、」
エマ「スープはエビとホタテのナージュ仕立て。明石家の鮭のムニエル。白桃と黄桃のソルベ」
エマ「牛フィレ肉とフォアグラのパイの包み焼き。あと、ミニャルディーズはお任せだけど、」
エマ「クレープシュゼットはどうだろうとおっしゃっていましたね」

〇貴族の部屋
黒野すみれ「クレープシュゼット?」
エマ「えぇ、シュゼットというのはフランスの女性の名前でございまして、一説によると、」
エマ「彼女はイギリスの皇太子の恋人だったようでございます」

〇城の会議室
エマ「皇太子はご自分と彼女の為に用意された、まだ名前もなかったその料理の素晴らしさに」
エマ「感動し、」
とあるイギリス皇太子「この料理に彼女の名をつけては?」
エマ「と提案」
シュゼット「皇太子。このシュゼット、とても光栄にございます」
エマ「それがクレープシュゼットという名の由来だそうでございますね」

〇貴族の部屋
エマ「春刻様の大切な方にはお誂え向きのデセールでございますね」
黒野すみれ「・・・・・・。普通のクレープとどう違うんですか?」
エマ「あぁ、大きく申しますと、クレープをグラン・マルニエ等のオレンジ系のリキュールで」
エマ「フランベするという点でございましょうか」
黒野すみれ「フランベ・・・・・・って、あの良いホテルとかでステーキとか焼く時にやってくれる?」
エマ「ええ、パフォーマンスと申しますか、ワゴンサービスを提供されているホテル様や」
エマ「レストラン様はおありかと。炎が上がり、アルコール分を飛ばす」
エマ「でも、香りは残るという調理法で、肉、魚介、デセール等に用いられますね」
エマ「暫くクレープシュゼットは食卓にはあがらなかったのでございますが、」
エマ「本邸にはワゴンもございますし、シェフに申してみましょうか?」
黒野すみれ「・・・・・・」
  あの人が火を今でも恐れるのか。

〇城の会議室

〇貴族の部屋
黒野すみれ「(確かめるチャンスだ・・・・・・でも・・・・・・)」
黒野すみれ「(彼は来るのだろうか・・・・・・)」
エマ「黒野様?」
黒野すみれ「あ、そうですね。クレープシュゼット、出来上がるところ、見てみたいです」
黒野すみれ「ちなみに、暫く食卓には上がらなかったというのは・・・・・・」
  やっぱり・・・・・・

〇銀閣寺
明石東刻(小学生)「だから、何度も言ってるだろ! 今日の食事会は行かないって」
エマ「でも、奥様が是非にと・・・・・・」
エマ「東刻様の好きなクレープシュゼットも用意して、とおっしゃってましたし」
明石東刻(小学生)「っ・・・・・・。でも、行けない。今日は星の観測の宿題も出ている」
明石東刻(小学生)「母上には「申し訳ありません」と伝えて」

〇貴族の部屋
エマ「申し訳ございません。・・・・・・色々、ございました。としか私の口から申せません」
黒野すみれ「・・・・・・」
  私はクレープシュゼット以外にも2品程ずつ、
  それぞれの提案したメニューから選ぶ。
エマ「プロシュートの前菜に、エビとホタテのナージュ仕立て。塩トマトのソルベ」
エマ「鮭のムニエルに、ホロホロ鳥のロースト。あとはクレープシュゼットと」
エマ「ナッツのクッキーに、マンデリンでよろしかったでございますか?」
黒野すみれ「ええ、すみません。もし、組み合わせとかおかしかったら、適当に変えてください」
エマ「ええ、その際はクレープシュゼットを優先して、料理をお出しいたしますね」
黒野すみれ「はい、それが良いです」
エマ「かしこまりました。それでは、失礼いたします。黒野様」
  エマさんが部屋を出て行くと、
  私はリエさんに着替えのドレスを用意してもらって、
  風呂に入ることにした。

〇西洋風のバスルーム

〇貴族の部屋

〇貴族の部屋
  いつの間に、雨は上がっていて、
  部屋には夕日が差し込む。
  また、私は

〇城の会議室
  あの食事会へ行く。
  あの人が私を焼き殺すことができるかを見極める為に。
  もし、彼が焼き殺せなかった場合、
  誰が私を焼き殺すのか、見極める為に。

〇貴族の部屋
リエ「黒野様。食事会の用意が整ったとのことで、お迎えに上がりました」
  リエさんを連れ立って私は食事会の会場へ向かう。

〇城の会議室
  朝刻さんと夕梨花さん。
  それに、東刻さんがいて、南田さんはいなかった。
黒野すみれ「(どうしよう? 声をかけるべき・・・・・・?)」
  昨日の夕べとは違い、顔色がどことなく悪い東刻さん。
  彼に声をかけようか、躊躇していると、朝刻さんが
  私達に声をかけてきた。
明石朝刻「やぁ、黒野さん。今日は庭の方へは行かれたんですか・・・・・・って、東刻」
明石朝刻「大丈夫か? 何だか、顔色が悪くないか?」
  いとも簡単に東刻さんの顔色について聞く朝刻さん。
  私も彼に同調したように、東刻さんの言葉を待つ。
明石東刻「あ、いえ・・・・・・何でもないんです・・・・・・」
「何でもない訳、ないでしょ? そんな青い顔して」
  その時、私は予想もしなかった人物が立っていた。
  顔を頭巾で隠した線の細い青年に、玄人さん。
  彼らが立っていたのでもかなり驚いたのに、
  彼らの後ろには私もよく知る人物もいた。

〇黒
  明石青刻に、
  物部トキ。
  どうして、どうして・・・・・・このタイミングで?

〇城の会議室
  予想の上を行く展開に、私は考えられなくなる。
  すると、青刻さんは私にも話しかけてきた。
明石青刻「黒野さん、でしたよね? 僕は明石青刻。春刻く・・・・・・明石春刻の弟で、」
明石青刻「一応、明石家の四男になります」
黒野すみれ「あ、初めまして。黒野すみれです。春刻さんと・・・・・・は古い友人で」
黒野すみれ「昨日からお邪魔しています」
  私は一瞬、トキの方を見る。
黒野すみれ「(彼女とも友人だと言った方が良いのか・・・・・・でも・・・・・・)」
  トキは意外なことに何も言ってこない。
  何だか、彼女との関係は伏せておいた方が良いような
  気さえしてきて、私も何も言えない。
  すると、私の考えがまるで見透かされているのか
  彼は続けた。
明石青刻「ああ、お2人はお友達でしたね。黒野さんのことはよく知ってますよ」
黒野すみれ「え?」

〇黒
  この人、何?

〇城の会議室
明石青刻「そんなこの人、何? みたいな顔、しなくても」
  何だか、既視感のある会話。
  私は彼を思い出していた。

〇シックな玄関

〇城の会議室
明石青刻「なんて、ちょっとした事前情報とブラフですよ。あとは彼女の演技力も、かな」
明石青刻「ねぇ、トキさん?」
物部トキ「うん、ごめんね。実は、私と青刻君はいとこで、ゲーム仲間みたいなものでさ」
物部トキ「今日も青刻君と色々、遊んでたんだ。用事もあったしね」
黒野すみれ「用事って?」
物部トキ「うん、実は、前にすみれちゃんからもらって懐中時計のチェーンが切れちゃってさ」
物部トキ「青刻君、修理とかもプロレベルだから直してもらえないかなと思ってね」
黒野すみれ「懐中時計・・・・・・のチェーン・・・・・・」
明石青刻「ええ、本当はサクサクと終えて、こんなに遅くまでにならない予定だったんですけど、」
明石青刻「結局、今、家にある部品だと足りないってことになって・・・・・・」
明石青刻「折角だから食事でもいうことになったんです」
明石青刻「僕達も同席して構わないですよね? 黒野さん」
黒野すみれ「あ・・・・・・私は別に構わない、ですけど」
  そして、食事会が始まる。
  ただ、その席には東刻さんもいなくなっていた。
黒野すみれ「あの、東刻さんはやはり体調が?」
明石朝刻「ええ、やはり、気分が優れないようで、彼の屋敷に帰しました」
明石朝刻「すみません。黒野さんにも一言断ってと言っていたのですが、」
明石朝刻「歓談のところを水を差しても、ということで、もし、気にされてたら、話して欲しいと」
明石朝刻「言っておりました。きっと、仕事のしすぎで疲れが出たんでしょう」
  困ったものですね、と朝刻さんは言うと、
  私は色んなことに引っかかりながらも、
  何とか取り繕って言った。
黒野すみれ「いえ、東刻さん・・・・・・大したことじゃないと良いんですけど」
明石朝刻「えぇ、そうですね」

次のエピソード:エピソード18-黄色の刻-

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