リリス(脚本)
〇本棚のある部屋
令和X年7月1日
G県U市N町M番地某アパートA号室
・・・スタスタスタ
遠くからこの部屋に
誰かが歩いてきているようだ
足音がだんだんと大きくなり
ふと急に止まる。
・・・それから何秒かして
ガチャガチャガチャ
扉に鍵がささりギィーンと開かれる
カチッ!
〇本棚のある部屋
パッと部屋中が光に包まれ明るくなる
黒田絶(クロダ ゼツ)「あ~やっと終わった~ また23時か...はぁ〜」
絶は激務に追われていた。
そして心身共に疲れていた。
黒田絶(クロダ ゼツ)「まぁしゃーない とりあえず風呂入って寝よ 明日も休日出勤だしなぁ」
絶はシャワーを浴びて
着替えを済ませて、
夕食を楽しんでいた
黒田絶(クロダ ゼツ)「しかし我ながら美味い... 最近の楽しみといった料理位だな 明日はハンバーグでも作るか」
そして夕食後
片付けをして・・・
カチッ・・・
〇本棚のある部屋
部屋がまた静寂と夜に満たされる。
黒田絶(クロダ ゼツ)「さて寝るか・・・」
黒田絶(クロダ ゼツ)「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
〇教室
クラスメイト1「お前は馬鹿だ! お前には生きている価値なんて無い!」
黒田絶(中学生)「やめてくれ・・・」
クラスメイト1「あんな簡単な問題も解けない...ゴミだ」
黒田絶(中学生)「もうやめてくれ!」
クラスメイト1「男の癖にすぐ泣いて あはははははは本当にゴミだ!」
クラスメイト1「泣けばいいと思ってるんだろ? バーカー甘いんだよ」
黒田絶(中学生)「違う・・・違う・・・」
クラスメイト1「おい皆!またコイツ泣いてるよ」
クラスメイト2「えーうそー」
クラスメイト3「キモ」
クラスメイト1「みーんなお前が嫌いなんだよ 生きる価値が無いから誰も助けない」
黒田絶(中学生)「(そうだ...親だって...)」
父親「そうだ...全部お前が悪い 大体言われたくなければ 勉強すればいいだけだ」
父親「でもお前はしなかった 大体クラスメイトに言われたことも お前の被害妄想なんだろ?」
黒田絶(中学生)「違う...俺はやってた!やったけど 分からない...分からないんだ! それに被害妄想じゃない!」
父親「自業自得だ...」
クラスメイト1「自業自得だ」
黒田絶(中学生)「自業自得?これが?ただ勉強が出来ないだけで...ははは」
黒田絶(中学生)「そうだもう俺には生きる価値が無いんだ だったら落ちるとこまで落ちてやろう」
黒田絶(中学生)「俺の人生を差し出して コイツを殺せば...」
黒田絶(中学生)「そうだコイツ1人殺せば 助けなかった奴らも 全員まとめて復讐出来るじゃないか」
黒田絶(中学生)「メディアが拾うかわからないけど 電話してみるか...フフフ そうすれば親は自殺するかも」
黒田絶(クロダ ゼツ)「やめろ...あの人達だって辛いんだ。 苦しいのはお前だけじゃないんだ」
黒田絶(中学生)「ただ殴るんじゃダメだ! 教師どもは殴った事しか考えない 過程なんてどうでもいいんだ!」
黒田絶(クロダ ゼツ)「頼む!やめてくれ!」
黒田絶(中学生)「殺るならアイツが油断した時だ 凶器は包丁だ...刺身包丁が良い 刀みたいでかっこいいし」
黒田絶(クロダ ゼツ)「やめろ!思い出すな!やめろ!」
黒田絶(中学生)「ジジイが農作業で使っている農薬を たっぷり塗るんだ... ただ刺して生きてましたじゃダメだ」
黒田絶(クロダ ゼツ)「クソ!このクソガキが!」
黒田絶(中学生)「放火もしてやろう・・・ハハハ」
黒田絶(クロダ ゼツ)「違う!やめろ!もう嫌だ!」
黒田絶(中学生)「神様...いやいるわけがない いたらこんな状況になってない」
黒田絶(クロダ ゼツ)「この野郎!そうだ俺がもっと 勉強していれば良かっただけなんだ」
黒田絶(中学生)「もし悪魔がいたら俺の人生すべて 捧げるからアイツだけは この手で殺させてくれ!ハハハ!」
黒田絶(クロダ ゼツ)「もういい!もう十分だ! やめろ!やめてくれ!」
〇本棚のある部屋
黒田絶(クロダ ゼツ)「やめろ・・・やめてくれ・・・」
彼は悪夢を見ていた
少年時代の忌まわしいトラウマ
それは大人になって尚、彼を襲った
そしてその瞬間・・・
ビィィィィィィィン
電撃が走るような感覚が彼を襲う・・・
黒田絶(クロダ ゼツ)「(あぁそうか・・・夢か・・・)」
黒田絶(クロダ ゼツ)「(しかもこの気色悪い感覚は・・・)」
黒田絶(クロダ ゼツ)「(金縛りか・・・)」
日々の疲れやストレスにより
彼自身のトラウマが蘇り
身体が眠ったまま頭だけが起きる。
そして皮肉も彼は金縛りに
慣れていた
黒田絶(クロダ ゼツ)「(まずは指先から少しづつ動かす)」
その瞬間だった・・・
スタスタスタ・・・
遠くからこの部屋に
誰かが歩いてきているようだ
黒田絶(クロダ ゼツ)「(こんな時間に歩く奴なんているか?)」
黒田絶(クロダ ゼツ)「(俺には関係が無い)」
黒田絶(クロダ ゼツ)「(そうだ大丈夫...関係が無いはずだ)」
足音がだんだんと大きくなり
ふと急に止まる。
・・・それから何秒かして
黒田絶(クロダ ゼツ)「(俺の部屋の前で止まった?)」
ドンドン!ドンドン!
ガチャガチャ!ガチャガチャ!
黒田絶(クロダ ゼツ)「(嘘だろ!!!誰だ!こんな時に!)」
ドンドン!ドンドン!ガチャガチャ!
ピンポーン!
ピンポーン!
ピンポピンポピンポーン!
彼の心拍数が上がっていく
黒田絶(クロダ ゼツ)「(幻聴だ!何も起きてないんだ!)」
黒田絶(クロダ ゼツ)「(大丈夫・・・大丈夫・・・)」
カチャ・・・
ビィィィン・・・
ドアが開いた
???「お邪魔しまーーす!」
甲高い声が部屋中に響く
絶の心臓は更に加速する
黒田絶(クロダ ゼツ)「だれへすは?はいっへほらいへ」
黒田絶(クロダ ゼツ)「(ちくしょう!呂律が回らねぇ!)」
???「大丈夫だよ今は何もしないから」
???「それに無理に喋らなくてもいいよ 頭の中読めるからね」
黒田絶(クロダ ゼツ)「(そうだ夢だこれは夢だ)」
???「はぁ〜やれやれ まぁでもこんな美少女が現れたら そりゃ夢だと勘違いしてしょうがないか」
黒田絶(クロダ ゼツ)「(何いってんだコイツ) (大体こっちは目が開かねぇんだよ)」
???「あ!そうか! 私の金縛りにあってるんだった! いーけない」
黒田絶(クロダ ゼツ)「(コイツ!)」
その瞬間
黒田絶(クロダ ゼツ)「(目が開いた!)」
リリス「はろー」
黒田絶(クロダ ゼツ)「(かわいい・・・)」
リリス「そりゃそうさ美少女だもん まったくもう照れるから見ても 思うなよ〜でもありがとね」
黒田絶(クロダ ゼツ)「(じゃない!何なんだこいつは!)」
リリス「私?私かい?おいおい 忘れちゃったのかい?」
リリス「10年前君が中学生の頃 君の願いを聞き助けた悪魔さ 名前はリリスちゃんだよ!」
黒田絶(クロダ ゼツ)「(!?)」
リリス「君は覚えているはずだ 寧ろ忘れられないのだろう? だから大人になっても苦しんでいる」
黒田絶(クロダ ゼツ)「(・・・・・・・・・・・・)」
リリス「だがまだ君から貰っていないものがある 今日はそれを取り立てに来た」
黒田絶(クロダ ゼツ)「(だとしたら無効だ。)」
リリス「ほぅ」
黒田絶(クロダ ゼツ)「(結局俺は誰も殺しちゃいない)」
リリス「確かに君の言うとおりだ だがもっともそれは 君が殺人を望んでいたらの話だ」
黒田絶(クロダ ゼツ)「(なんだと)」
リリス「君が本当に望んでいたのは 事態の解決だよ」
リリス「そして私はしっかりと聞いていたし 全部見ていた」
リリス「そして私は君の背中をそっと押したんだ」
リリス「我ながら見事なプランだったよ 教師を脅すなんてね」
黒田絶(クロダ ゼツ)「(あれは俺の意思だった...はず)」
リリス「そう思うかい? まぁでも確かに8割は君の意思かもね」
リリス「子供が先生に告げ口するのとは訳が違う なんせ君が私に頼んだ事をそのまま 教師に向けて君に言ってもらったんだ」
リリス「それで助けず君が事を起こしたら 君は生きているから言いたい放題。 教師は世間から問題の追求を 受ける事になる」
黒田絶(クロダ ゼツ)「(・・・・・・・・・・・・)」
リリス「我々は神と違って過程を重視する。 顧客がどうすれば幸せになれるのか パターンを組んで対応する」
リリス「だが払うものは払ってもらう あの時から10年か... 利子は凄まじいぞ」
黒田絶(クロダ ゼツ)「(何を払えってんだ)」
リリス「まぁ勿論お金じゃない 我々にとっては無価値だ」
〇本棚のある部屋
世界が真っ赤に染まった
黒田絶(クロダ ゼツ)「(何をした!)」
リリス「ここは現実世界と重なっている ブラッドワールドという次元さ」
リリス「ここに存在出来るのは我々や魂だけ」
リリス「それでだ」
リリス「君には借りをかえしてもらう 無論拒否権はない」
黒田絶(クロダ ゼツ)「!?」
リリス「いやね~ 最近ウチらのシマを荒らす 馬鹿がいるからシバきたいのよ」
リリス「でもそいつら一般ピーポーを サガっていう怪人にして もうやりたいほうだい!」
リリス「ウチらじゃ簡単に手が出せないのよ そうゆうルールなの」
黒田絶(クロダ ゼツ)「(俺だって無関係)」
リリス「さっきの話聞いてた? 無関係じゃないよね?」
黒田絶(クロダ ゼツ)「(あ・・・・・・・・・)」
リリス「納得した?良かった~ 馬鹿共と違ってうち等はちゃんと ルールは守るから大丈夫だよ」
リリス「まぁいいやじゃあ始めるね」
黒田絶(クロダ ゼツ)「(ちょ待っ)」
リリス「待たない」
黒田絶(クロダ ゼツ)「(うおおおおおおおおお)」
黒田絶「(なんだこの感覚...気持ちがグルァ)」
オオカミサガ(ゼツ)「グルアアアアガルル」
リリス「はい!変身完了! 良くできました! 賢いワンちゃんですね~」
リリス「じゃあいってらっしゃい」
オオカミサガ(ゼツ)「アオォオオオオオオン」
リリス「頑張ってね 私のSSRクン」
〇雑踏
クワガタサガ「俺を認めなかった糞どもめ 皆まとめて不幸になるがいい」
クワガタサガ「ぐおおおお何しやがる!」
オオカミサガ(ゼツ)「ガルル」
クワガタサガ「くそ何だコイツ農薬クセェ まぁいいお前同業者だろ?」
オオカミサガ(ゼツ)「アオォォォン」
クワガタサガ「コイツ会話が出来ないのか?」
「ーーーーー問答無用って事さーーーーー」
クワガタサガ「誰だ!」
リリス「フハハハ貴様らに名乗る名は無いのだよ」
リリス「よくもまぁウチらシマで 派手にやってくれたね オトシマエ付けて貰うよ」
クワガタサガ「て...テメェ悪魔じゃねぇーか 話が違うぞ! 俺達人間に手は出せない筈だ」
リリス「ガタガタうるさいよ 何度も同じ説明するの疲れるんだよね やっちゃえSSRクン」
オオカミサガ(ゼツ)「アォオオオオオオン」
クワガタサガ「くそったれ来るなら来やがれ!」
2体のサガの激しい攻防は続いた
そして遂に
クワガタサガ「貰ったぜ!」
オオカミサガ(ゼツ)「グルアアアア」
ゼツは吹き飛んだ
リリス「あらら派手に吹っ飛んだねぇ」
クワガタサガ「へ・・・ギリギリだったぜ」
リリス「おやおやクワガタクンどうしたの?」
クワガタサガ「何が...ガハッ...何だこれ血? 急に気持ち悪く...おえええ」
リリス「ヤダーーー 汚ーーーい」
リリス「どうやら毒が回ったようだね 彼のオーラは毒そのものと言ってもいい そして刀身にそれを宿らせている」
クワガタサガ「何ぃ」
リリス「君は何度も切られた 例えカスリ傷程度だとしても それで十分なんだよ」
リリス「まぁもっとも」
オオカミサガ(ゼツ)「グラァ」
リリス「そんなものがなくとも 君はどのみち真っ二つだ」
クワガタサガ「馬・・・鹿・・・な」
リリス「おっといけない マイナスエネルギー吸収!!」
マイナスエネルギーとは
人のネガティブな感情が起こす
負の力であり悪魔にとっては
大事な資源である。
オオカミサガ(ゼツ)「グルル」
リリス「さてと帰ろうか」
〇本棚のある部屋
ポロロロロン
ポロロロロン
スマホのアラームが鳴り響く
黒田絶(クロダ ゼツ)「うーん」
いつもの手付きでスマホを止める
黒田絶(クロダ ゼツ)「あー変な夢だったな」
黒田絶(クロダ ゼツ)「あれ?」
テーブルには
ご飯と鮭の塩焼き味噌汁そしてお茶が
二人分出ていた
黒田絶(クロダ ゼツ)「どうゆうことだ?」
リリス「あらおはよう! ご飯出来てるわよ」
黒田絶(クロダ ゼツ)「ちょっと待て」
リリス「え?何?」
黒田絶(クロダ ゼツ)「何?じゃない何でいるんだ」
リリス「そりゃね まだまだ借金があるからね 回収しなきゃ」
リリス「あ!ちなみにお金で言うとね あなたが返すべき借金は1億位よ 昨日のやつは5000円位かな?長いね」
黒田絶(クロダ ゼツ)「は?」
黒田絶(クロダ ゼツ)「じゃあまた夜中金縛りにあって 赤い世界に行って化物と戦うのか? 1億稼ぐまで?」
リリス「そうゆうこと あ!whipが始まっちゃうテレビ付けて」
リリス「いつまでそうしてんの? ご飯冷めるよ」
黒田絶(クロダ ゼツ)「嘘だろ・・・」
リリス「うーん我ながら美味しい そうそう今日の夕食は ハンバーグにしようと思うの?どう?」
黒田絶(クロダ ゼツ)「もう何でもいいよ」
彼らの長い戦いはこれからもきっと
どこかで続くだろう
ーー完──
理由はどうあれ、美少女がご飯を作ってくれる毎日が手に入ったのなら、そう悪くはない!?
中学生時代の忌まわしき思い出のため、今頃になって悪魔が出現するなんて思いもよらなかっでしょう。悪魔にお願いをするとろくなことはありません。
過去の借りをとりたてにくるにしてももう少し早く来て〜と叫びたくなってしまいました。膨らみに膨らんだ利子を返し終えるのはいつになることやら~。涙