炎の怪人「炎ペラー」

猫将棋

炎の怪人「炎ペラー」(脚本)

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〇公園のベンチ
営業マン「あ、もしもし──」
営業マン「あ、どうもお世話になっておりますぅ」
営業マン「わたくし不動産投資──」
  プツ、ツー、ツー、ツー
営業マン「チッ」
野良猫「にゃ~♪」
営業マン「あぁ?」
営業マン「なんだよこのクソ猫!」
営業マン「あっち行けよ!」
野良猫「ニャ!」
営業マン「あ、もしもし~?」
営業マン「あ、どうもお世話になっておりますぅ~」
営業マン「わたくし不動産投資──」
  この世はオワってる

〇入り組んだ路地裏
ガラの悪い男「で?」
ガラの悪い男「いくらで買う?」
サラリーマン風の男「いくらでも」
ガラの悪い男「ヒュ~♪ オッサンやるぅ~!」
  この世「も」か・・・

〇電脳空間
  ここは仮想空間──
  「メタバース」

〇桜並木
  どこもかしこも──
  現世かと見紛うほどのクオリティで──

〇渋谷のスクランブル交差点
  人々は実際にそこで働き─
  生活をし──

〇部屋のベッド
  時にはそこで──
  結婚したりもした

〇公園の砂場
男の子「えへッ」
女の子「うふふ」
男の子「えへへッ」
女の子「うふふふふ」
成金野郎「おうらどけぇクソガキども!」
成金野郎「ここのスペースは俺が買う」
成金野郎「いま買う」
成金野郎「はい買ったぁ~」
成金野郎「俺の土地ぃ~」
通りすがりのお姉さん「せっかく子供が遊んでたのに・・・」
通りすがりのお姉さん「あんたサイテーね」
成金野郎「あぁ~ん?」
成金野郎「子供っつったって中身はどうせ「大きいお友達」だろ?」
通りすがりのお姉さん「仮にそうでも──」
通りすがりのお姉さん「この世界のルールでは──」
成金野郎「あーハイハイ分かった分かった」
成金野郎「おう、それにしてもねえちゃん」
成金野郎「なかなかイイ身体してるねぇ」
成金野郎「いくらぁ?」
通りすがりのお姉さん「はぁ?」
成金野郎「いくらぁ? 買うよぉ?」
成金野郎「お姉さんとのひ・と・ば・ん♪」
成金野郎「あ、おいおいちょっと待てよぉ」
成金野郎「ここは仮想現実だぜ? もっと楽しく──」

〇手

〇公園の砂場
  「きゃ、キャー!!!!!」
  「で、出たぁ!!!!」
  「炎の怪人『炎ペラー』だ!!!!」
炎の怪人「炎ペラー」「ご丁寧に紹介をどうも」
炎の怪人「炎ペラー」「そうです」
炎の怪人「炎ペラー」「私がこの物語の主人公の──」
  「出たな炎ペラー!」
  「今日こそ貴様を倒してやる!」
炎の怪人「炎ペラー」「やれやれ」
炎の怪人「炎ペラー」「せっかちなお方の多いこと」
  「我こそは──」
レッド「XRレンジャー! レッド!」
ブルー「VRレンジャー! ブルー!」
グリーン「MRレンジャー、グリーン」
イエロー「ARレンジャ~♪ イエロ~♪」
ピンク「SRレンジャー! ピンク!」
レッド「五人合わせて──」
「仮想戦隊!」
「メタレンジャー!」
  やれやれ
  お約束に付き合ってあげますか
炎の怪人「炎ペラー」「出ましたねメタレンジャー」
炎の怪人「炎ペラー」「毎度ご苦労なことで」
レッド「炎ペラー!」
レッド「貴様の悪行の数々!」
レッド「断じて許すことはできん!」
レッド「今日こそ貴様の息の根を止めてやる!」

〇サイバー空間
  ここ──
  メタバースの世界では──

〇電脳空間
  「視覚」「聴覚」「触覚」
  この三つが現実世界とリンクしていて──

〇格闘技リング
  互いに殴り合えば──
  現実世界と同様「普通に」痛かった

〇手

〇公園の砂場
レッド「くっ!」
レッド「さすがは炎ペラー!」
レッド「あの炎をかいくぐるのは容易ではない!」
ブルー「レッド!」
ブルー「これ以上ここで戦うのは危険だ!」
ピンク「そうね。狭い公園だから──」
ピンク「民間人にも被害が及ぶわ」
レッド「くっ!」
レッド「ここは一旦、退却だ!」
炎の怪人「炎ペラー」「ふっふっふっ」

〇黒
  『炎ペラー再び!』
  『罪も無い民間人を削除!』
  『メタレンジャー敗れる!』

〇SNSの画面
  「メタレンジャー弱すぎじゃねw」
  「違うよ。炎ペラーが強すぎなの」
  「でもさぁ、どうして炎ペラーは民間人を殺すんだろう?」
  「オイオイw 実際に殺してるわけじゃないだろw」
  「そうそう。仮想空間から削除(デリート)してるだけ」

〇王宮の広間
レッド「おのれ炎ペラー」
レッド「またしても・・・」
グリーン「ぼ、僕たち五人でも勝てないなんて・・・」
ピンク「いいえ、きっと勝てるわ」
ピンク「何か方法があるはずよ」
イエロー「そんなことよりお腹空いた~♪」
ブルー「うーむ・・・」
ブルー「やつの弱点・・・」
イエロー「ねぇなんか食べる物は~?」
イエロー「冷蔵庫なんも無いんだも~ん」
イエロー「冷蔵庫の裏まで覗いたんだよぉ?」
グリーン「冷蔵庫の、裏?」
グリーン「裏かぁ・・・」
ブルー「どうした?」
ブルー「何か引っ掛かるのか?」
グリーン「い、いや──」
グリーン「炎ペラーにも何か──」
グリーン「「裏」がないのかなって──」
レッド「裏?」
グリーン「うん・・・」
グリーン「炎ペラーだって、所詮は──」
グリーン「現実世界の誰かが「操作」してるってことでしょう?」
グリーン「だから、操作している本人自体に──」
グリーン「何か「裏」とか「弱点」があれば──」
ピンク「なるほど・・・」
ピンク「なぜ炎ペラーが現れるに至ったのか──」
ピンク「その誕生秘話を探るってわけね?」
イエロー「そんなことより食べ物はっ!?」

〇謁見の間
  ここは怪人の棲み処──
  炎ペラーの邸宅である
  ゆらゆらと燭台の炎が揺れる中──
炎の怪人「炎ペラー」「・・・・・・」
  炎ペラーはこの時──
  虚無の空間に一人、佇みながら──
  在りし日の記憶を思い返していた・・・

〇葬儀場
少女(妹)「しくしく・・・」
少年(兄)「バカ、泣くな」
少女(妹)「だって、お母ちゃんが・・・」
少年(兄)「仕方がないだろ、死んじゃったもんは」
少年(兄)「今日から兄ちゃんがお前を守ってやるから」
少女(妹)「・・・うん」

〇SNSの画面
  「あの転校生──」
  「両親いないらしいよ」
  「マジ? なんで?」
  「父親は蒸発して──」
  「母親は小さい時に死んだらしい」
  「そっかー」
  「だからあんなに性格暗いんだ」

〇美術室
  「アイツなに描いてんの?」
  「自分のアニキだって」
  「マジ? キモッ」
  「あいつ親いねぇから、実のアニキに育てられたんだって」
  「それで恩返しに、兄貴の肖像画を描いてるんだと」
  「マジか。なんかその発想がキモいねw」
女学生(妹)「・・・・・・」

〇安アパートの台所
青年(兄)「もうじきメシ出来るからな」
女学生(妹)「・・・ありがとう」
青年(兄)「今日はお前の好きな──」
女学生(妹)「ねぇねぇ、お兄ちゃん」
青年(兄)「あん?」
女学生(妹)「あたしって、キモい?」
青年(兄)「はぁ? なんだよ急に」
女学生(妹)「キモい?」
青年(兄)「バカ、そんなわけないだろ?」
女学生(妹)「・・・・・・」

〇美術室
  「へぇ~」
  「これがアイツの兄貴の肖像画かぁ」
  「本当にこんなイケメンなのかぁ?」
  「絶対に盛ってるだろw」
  「自分のアニキ補正w」
  「なんかウザいねw」
  「あっ、バカ!」
  「いいんだよこんな絵」
  「あ~あ、オレ知らねぇぞw」

〇教室
  「てかさぁ──」
  「アンタってなんでそんなに暗いのぉ?」
  「アンタがいるだけで教室まで暗くなるんだけどぉ」
女学生(妹)「・・・・・・」
  「ほらそういうトコ」
  「何かしゃべってくれる?」
  「それとも大好きなお兄ちゃんがいないと何もしゃべれない?」
  「きゃはは」「キモッ」

〇体育館の中
  「ほら体育の時間終わったんだからさぁ」
  「早くボール全部拾ってきなよ!」
  「それともアンタがボールになる?」
女学生(妹)「ちょ、ちょっと!」
女学生(妹)「やめて!」
  「はい人間ボールいっきまーす!」
女学生(妹)「キャ、キャーー!!!!」

〇屋上の入口
女学生(妹)「・・・・・・」
女学生(妹)「・・・・・・」

〇学校の屋上
女学生(妹)「・・・・・・」
女学生(妹)「・・・・・・」

〇黒
  「で──」

〇王宮の広間
ブルー「炎ペラーについて何か分かったのか?」
グリーン「それが、ちょっと、気になることが──」
イエロー「なになに~?」
イエロー「炎ペラーの大好物とか~?」
グリーン「ち、違うよ」
グリーン「炎ペラーが起こす事件には──」
グリーン「ある共通点があったんだ」
ピンク「共通点?」
グリーン「あぁ」
グリーン「ヤツが現れる時は、必ず──」
グリーン「近くで誰かが「弱い者イジメ」に遭ってるんだ」
ピンク「弱い者イジメ?」
ブルー「オイオイ」
ブルー「それじゃまるでアイツが「イイやつ」みてぇじゃねぇか」
レッド「いや、だからといって──」
レッド「民間人を勝手に削除していい理由にはならない」
レッド「グリーン」
レッド「続けてくれ」
グリーン「うん。それで、ヤツの出没地域についても調べてみたんだけど──」
グリーン「ヤツはどうやら「学校」の周辺に現れることが多いみたいなんだ」
ピンク「学校、ねぇ」
イエロー「ねぇねぇそれって──」
イエロー「学校が好きってこと?」
ブルー「別にそうとは限らねぇだろ」
ブルー「逆に学校に恨みがあるのかもしれねぇぜ」
レッド「そうだな」
レッド「いずれにせよ「学校」に強い興味があるのは確かだろう」
ピンク「そうね。メタバースの世界では──」
ピンク「『現実世界で出来なかったことを実現したい』」
ピンク「そういうモチベーションでやっている人も多いから──」
グリーン「うん。だから、そう思って──」
グリーン「炎ペラーが出没した時期から遡って──」
グリーン「現実世界で「学校」にまつわる事件なんかを色々ピックアップしてみたんだ」
イエロー「てかグリーンってさぁ──」
イエロー「なんだかんだ一番優秀だよね」
グリーン「べ、別に僕は・・・」
イエロー「地味だけど」
グリーン「・・・・・・」

〇学校の校舎
不良「おうらカネ出せよカネ」
不良「仮想通貨いっぱい持ってんだろ?」
女学生「い、いえ・・・」
不良「じゃどうする?」
不良「別のことして払う?」
女学生「べ、別のこと?」
不良「オイオイそれくらい分かるだろ?」
不良「こういう──」
女学生「キャッ!」
女学生「やめてください!」
女学生「やめて──」

〇血しぶき

〇学校の校舎
  「きゃ、キャー!!!!」
炎の怪人「炎ペラー」「これはこれはお嬢さん、大変失礼を──」
炎の怪人「炎ペラー」「お見苦しいものをお見せしました」
女学生「────?」
  「出たな! 炎ペラー!」
炎の怪人「炎ペラー」「ふふっ、その声は──」
「仮想戦隊!」
「メタレンジャー!」
  「これはこれはメタレンジャー」
  「懲りずにまた──」
レッド「炎ペラー! 今日こそ貴様を倒してやる!」
  「たまには別のセリフを聞きたいですねぇ」
レッド「ならば聞かせてやる!」
レッド「炎ペラー!」
レッド「もういい加減、悪事はやめるんだ!」
ブルー「そうだ!」
ブルー「そんなことをしても、亡くなった妹さんの魂は浮かばれないぞ!」
  「────!?」
  「・・・・・・」
炎の怪人「炎ペラー」「一体、なんの話です?」

〇学校の校舎
  「炎ペラー!」
  「お前は幼い頃、父親に蒸発され──」
  「幼い時に、母親も病気で失った」

〇救急車の中
  「そして学生の頃──」
  「愛する妹さんまでも──」

〇病院の廊下
  「お前は妹さんの遺書を見て──」
  「ようやく妹さんが長年──」
  「イジメに苦しんできたことを知った」
  「きっと妹さんは──」
  「お前の前ではいつも、元気で明るく振る舞っていたのだろう」
  「お兄ちゃんに心配をかけまいと──」

〇学校の屋上
  「かくしてお前は──」
  「復讐の鬼になった」
  「そして現実世界で──」
  「学校爆破未遂事件や──」
  「未成年連続暴行事件など──」
  「幾つかの事件を起こすに至った」

〇教室の外
  「ところが──」
  「それでも世界は何も変わらなかった」

〇教室
  「学校では当然のようにイジメが横行し──」
  「今日も誰かが不登校になったり──」

〇渋谷のスクランブル交差点
  「世間でも──」
  「どこどこの誰がイジメを苦に──」
  「なんて嫌なニュースばかりが連日のように流れた」

〇電脳空間
  「そこで──」
  「お前は考えた」

〇学校の校舎
レッド「もう「この世」は救えない」
レッド「ならば「こちら」の世界を救おうと!」
レッド「これがお前の──」
レッド「炎の怪人・炎ペラーの誕生秘話というわけだ!」
炎の怪人「炎ペラー」「・・・・・・」
炎の怪人「炎ペラー」「ごちゃごちゃと何を言うかと思えば──」
炎の怪人「炎ペラー」「そんなことを調べたところで──」
炎の怪人「炎ペラー」「あなた方は私に勝てるのですか?」
レッド「くっ!」
レッド「や、やめろ炎ペラー!」
レッド「そんなことをしても世の中は良くならない!」
ピンク「そうよ! 決して暴力では──」
レッド「くっ!」
ブルー「この世界の秩序は俺たちが守る!」
ブルー「だからお前はもう──」
  「秩序?」
  「秩序で人が守れますか?」
ピンク「「この世」にだってルールがあるの」
ピンク「ルールがある以上、それを守って──」
  「ルール?」
  「ルールなんて守るほうがバカを見る世の中でしょう」
レッド「くっ!」
レッド「炎ペラー!」
レッド「どんな理由があろうと、暴力はいけない!」
レッド「どんなに身勝手なユーザーであろうと──」
レッド「お前が勝手に削除していい、いわれはないんだ!」
レッド「炎ペラー!」
レッド「お前は「モンスター」だ!」
レッド「お前の炎は、正義の炎ではない!」
レッド「お前が燃やしているのは所詮──」
レッド「「復讐の炎」に過ぎないんだ!」
レッド「そんな悪の炎に未来は照らせん!」
炎の怪人「炎ペラー」「・・・・・・」
炎の怪人「炎ペラー」「モンスター」
炎の怪人「炎ペラー」「・・・いい響きだ」
炎の怪人「炎ペラー」「・・・・・・」
炎の怪人「炎ペラー」「興が削がれました」
炎の怪人「炎ペラー」「ここは一旦、引きましょう」
炎の怪人「炎ペラー」「でも、これだけは覚えておいて下さい」
炎の怪人「炎ペラー」「一体、誰が本物のモンスターなのか・・・」
炎の怪人「炎ペラー」「何が現実で、何が真実なのか・・・」
炎の怪人「炎ペラー」「あなた方にもきっと分かる時が来るでしょう」
炎の怪人「炎ペラー」「この世に悪は必要だと・・・」

〇サイバー空間
  メタレンジャーとの決戦の後──
  炎ペラーはこの世からログアウトした

〇電脳空間
  しかしまた、いずれ現れるであろう
  再び「悪」が必要になった時に──

コメント

  • 悲しい過去を背負う人物が鬼や怪人に姿を変える話は昔からどこにでもありましたが、仮想現実が身近にある今となっては、こういった話も現実になっていくのだなと思いました。

  • 楽しいストーリーでさいごまで楽しく読ませて頂きました。怪人が本当の社会でいたらどんな事態が巻き起こるのでしょう、、いい方向に変わるかもしれないですね。

  • この世はもはや良識だけでは社会に立ち向かっていけないという傾向がありますよね。仮想空間でもやはり人間が交わえばおのずと同じような現象が起こるということで、炎ペラーのように真の痛みをしる怪人は必要だと思いました。

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