エピソード1(脚本)
〇屋敷の大広間
たいき「なんか、秀吉に向かって「これで殿のご運が開けましたな」のセリフを吐いた人とは思えないよな」
黒田官兵衛「それは、なんでござりましょう?」
ゆうま「ああ、この官兵衛さんは、そのセリフを吐いてないバージョンの人生だわ」
黒田官兵衛「えっ?秀吉が生きていたバージョンでは、私はそのようなセリフを吐き、後の世まで伝わっていると?」
たいき「ああ!軍師官兵衛ってドラマになって、イケメンの役者がお前さんを演じたんだよ」
黒田官兵衛「そうなのですか?私が軍師?半兵衛殿ではなく?」
半兵衛は竹中半兵衛。美濃斎藤氏に仕えていた後、秀吉に仕える。若くして病に倒れた。
黒田官兵衛「あの・・・私は、どのような人生を送っていましたか?」
ゆうま「聞かない方がいいと思うけどな~」
黒田官兵衛「いえ、どんなに悪い人生であっても、聞かせて下さいまし」
たいき「信長が討たれて、秀吉が光秀を討ち、まあ、信長の臣下も討って天下を取るだろ?」
ゆうま「その後、官兵衛には野心ありと、秀吉が疑心暗鬼になって、福岡に遠ざけられるんだよ」
黒田官兵衛「なるほど。それでも私の名が450年後まで残っているというのはなんででしょう?」
たいき「秀吉を戦略面で支えたのは、黒田官兵衛だという評価だからだろうけど」
ゆうま「こっちのバージョンでは黒田官兵衛の評価というのはどうなの?」
黒田官兵衛「ええ・・・天下を取ったはいいが、あとは息子の長政に任せて、病気がち。大した功績もない影の薄い1代目(笑)」
ゆうま「病気がちというのは、タイムトラベルして、当時の政治は長政に指示を出しているだけだったから?」
黒田官兵衛「はい。どの時代の当主にも、指示だけ出して、実際の手を下す暇はございません」
ゆうま「もっと周りからの承認が欲しい?俺は凄い事をやったんだぜ!って認めてもらいたい?」
黒田官兵衛「・・・全くないと言えば嘘になります。ただ、この事を分かってくださるのは、あなた方お2人しか」
たいき「俺は、すっげえ認めるよ!賞状あげちゃうよ!よくできましたって」
ゆうま「人生ももう最期に差し掛かって、自分のやった事を正当に評価されない事への不満のようなものがあるんだね」
黒田官兵衛「全く・・・私という人間は欲深い事です」
ゆうま「自分の人生に悔いはある?」
黒田官兵衛「それは、無いですね」
ゆうま「よかったよ。自己犠牲の上に、あの日本が成り立ったものではなくて」
黒田官兵衛「ただ・・・孤独でした。誰かと供に作り上げるのではなく、ただ独りで模索しているのが」
ゆうま「失敗して、事件の前に戻った事もあるのでしょう?」
黒田官兵衛「はい」
たいき「そうか。失敗する前に戻ってやり直せば、粛清しなくてもいいもんな」
黒田官兵衛「はい」
ゆうま「やっぱり、あなたの熱意、努力、並大抵の事ではないと思います」
黒田官兵衛「嬉しゅうございます。では、秀吉はなきままに?」
ゆうま「はい」
黒田官兵衛「私からお聞きしたい事が」
ゆうま「どうぞ」
黒田官兵衛「私が歴史を操作した事で、大きく歴史は変わりました。内乱も戦争もない事で、人口が増加しています」
黒田官兵衛「朝廷も自然消滅致しました。私は、あなた達は生まれてこないものと思っていたのです」
ゆうま「ああ~」
たいき「まあ~。俺らは出雲大社の神職の家だから」
ゆうま「もしかしたら、日本で一番ぶれない家系かもしれないね」
黒田官兵衛「ああ~、なるほど。それで、お2人揃って・・・ご兄弟ですか?」
たいき「いや、いとこだね。同い年のいとこ」
黒田官兵衛「そうでしたか。いや、危のうございました(笑)」
ゆうまはカバンからノートを出して、何か書き、官兵衛に見せた
黒田官兵衛「はい。それがよろしゅうござりましょう」
たいき「じゃ、俺らはそろそろ帰るか」
黒田官兵衛「おい!お客さまのお帰りじゃ!」
2人は丁重にお見送りされて外へ出た
〇森の中
たいき「オッサン!」
山伏「(舌打ち)ご無事で何よりです。どちらへ参りましょうか?」
ゆうま「現代の京都へ」
山伏「はい、じゃ、現代の京都ですね。行きますよ」
〇地球
黒田官兵衛が気になってこちらも拝読しました。なるほど〜、言ってないバージョンなんですね。「言わぬが花、知らぬが仏」という言葉が浮かびました。このバージョンの官兵衛のボヤキを聞いてあげる二人がいてくれてよかった。
ゆうまとたいきの、あのセリフを言ってないバージョンの官兵衛さんへ、【事実をしらないほうがいいよ】と言っている場面が、まさにIFの歴史物語の締めくくりを感じられてよかったです。
歴史の事実は本当なのかそれとも歪曲されたものなのか。それが後世に正確に伝わるものとして史跡が物語る。過去にタイムトラベルできれば確認したい。