魔王様、異世界へご帰還(強制)

ユースケ

趣味の悪い遊び(脚本)

魔王様、異世界へご帰還(強制)

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〇山並み
大間 柾「こ、ここは? 山・・・山頂か?」
小林 誠司「ご無事ですか柾さま!?」
大間 柾「あ、ああ・・・問題ない。お前も無事だったか。 誠司、ここはまさか──」
小林 誠司「ええ、感じます。 ここは間違いなく、フロストアーク・・・我らの故郷です。」
大間 柾「ワ、ワンチャン群馬とか奥多摩とかないか?」
小林 誠司「ありません。残念ですが――」
小林 誠司「魔素の量が物語っています。」
大間 柾「・・・・・・・・・・・・」
大間 柾「花丸ぅぅ!!」
角田 花丸「ぎぇええええ!?」
大間 柾「どういうつもりなんだコラァ!」
女神「およしなさい。まお――」
  ――バキンッ!
大間 柾「お前は引っ込んでろ!!!!」
魔物ザコ「きしゃああああああ!」
大間 柾「うるせぇ!」
  ズドォォォオンン!
魔物ザコ「ぷぎゅううううううう・・・」
  ――ドサッ
大間 柾「ぬう・・・モンスターが出るってことは奥多摩じゃないな。 群馬ならワンチャン出そうだが・・・」
小林 誠司「柾さま。現実逃避はそのくらいにして、とりあえず町におりませんか? あそこに灯を目指しましょう。」

〇荒廃した街
  灯を頼りに町へ向かう。
  しかし、そこで見たのは意外な光景だった。
大間 柾「また、随分と・・・灯が見えていたという事は、ここに人はいるのか?」
小林 誠司「気配はしますね。 どうやら様子を窺っているようです。」
大間 柾「魔族と人間の戦争が終わって2年は経っているはずだ。なのに、この有り様とは――」
小林 誠司「人族の王は何をしているのでしょうか?」
大間 柾「ふん。どうでもいいな。 それより、この辺りで野宿か? 早速ベッドが恋しくなったぞ。」
小林 誠司「日本のベッドは質がいいですからね。 セール品でも十分ですし、布団だけでも熟睡できますから・・・」
大間 柾「慣れとは怖いものだな。」
小林 誠司「柾さま。これからいかがいたしますか?」
大間 柾「当然、日本へ帰る。 それだけだ。それ以外の事は考える必要など無い。」
小林 誠司「御心のままに・・・」
転生者「貴様! こんなところで何をしている!」
大間 柾「なんだ?」
転生者「その服装・・・!?」
転生者「ちっ、死ねぇぇ!」
大間 柾「ぬぉぉお!?」
  突如、男は剣を抜き放ち、柾へ躊躇いなく振り下ろした。
大間 柾「なんだコイツ!? いきなり攻撃してきやがった!」
小林 誠司「柾さま! 大丈夫ですか!?」
小林 誠司「貴様・・・何をしたか分かっているのか?」
小林 誠司「この方に攻撃したという事がどういうことか・・・貴様に教えてやろう!」
女神「気を付けてください! この人は転生者です!」
大間 柾「ぬお!? お前いつの間に・・・つか転生者? なんだそれは?」
小林 誠司「ええい! 色々聞きたいが、こちらの方が優先──力を使わせてもらう!」
小林 誠司「久々の魔法だが・・・魔導の極みへ至った私の力は衰えておらぬぞ!」
  誠司の手に、凝縮された黒い玉が現れる。
  そこに込められた魔力は、町など余裕で吹き飛ばすほどの物だった。
大間 柾「誠司! 廃村とは言え吹っ飛ばすなよ!?」
小林 誠司「心得ております! 私とて、日本や世界の娯楽を享受した身。地球の発想には驚かされると同時に──」
小林 誠司「実に様々なアイディアの宝庫でありました! ゆえに私の実力があれば、新たなる魔法の創造など容易いものです!」
  誠司の手平から発せられた魔力は空中に浮き、そして黒い触手を猛烈なスピードで伸ばした。
転生者「なっ!? うぉぉぉ!?」
  触手を避けようとした男だったが、ほんの少しだけ触れらた瞬間、空中へ弾き飛ばされた。
転生者「ぐわぁああああああああああああああ!?」
  男は、一気に空高くへ舞い上がり、そのまま明後日の方向へ飛んでいった。
小林 誠司「戦う必要などない。 相手を追い払う事を物理的にやってしまえばいい。それが一番手っ取り早い。」
大間 柾「流石に、あの速度と距離を飛んで行ったら死ぬだろうけど・・・」
大間 柾「だが、よくやったぞ誠司。」
小林 誠司「ありがとうございます。」
角田 花丸「ちなみにあの発想、どこからでそ?」
小林 誠司「フォースの力だが?」
小林 誠司「念力で即座に壁などに叩きつけ無力化。実に効率的。 それを応用しただけだ。派手さなどいらんのだ。」
角田 花丸「あ~」
  2人の会話をよそに、柾は自称女神へ向き直った。
大間 柾「で? 転生者・・・なんだそれは? 我々のような部類とは違うんだな?」
女神「はい。実は貴方が地球へ行った後の事です。この世界を管理する神々の間で──」
女神「異世界転生ブームが起きたんです!!!!」
大間 柾「・・・・・・・・・・・・・・・・は?」
大間 柾「異世界、転生、ブーム? なんだそりゃ?」
女神「死んだ地球の人間を転生させるんです。」
女神「神々は自分の転生者に活躍してもらおうとして、色々なスキルや色々なステータスを・・・つまり、チート能力を与え出したんです」
大間 柾「ちょっと何言ってるか分からない。」
女神「私達は勇者とか色々な役職を与えて、異世界へ転生させて、それに相応しい能力を授けました。」
女神「最初は良かったです。ラブストーリーかましたり、出世して国を発展させたり、人を救ったりとか、悪い権力者をざまぁしてたり」
大間 柾「・・・ざまぁ?」
女神「はい。ざまぁです。」
女神「ただ、転生者を量産しすぎてしまった為に、逆に今度は絶対悪がいなくなってしまった為に、自ら悪を作り出してしまい──」
女神「しかも、人間の悪であったはずの魔王も、いつの間にか倒されちゃってるし。」
大間 柾「うっせぇな! 悪かったななんか負けちまってさ!」
女神「結果的に転生者はその力でハーレムやら、国家拡大やら、現代価値観押し付けやら、やりたい放題なんです。」
大間 柾「じゃあ、なにか? さっきのアイツも? でも、なんで俺を攻撃してきた?」
女神「転生者が他にいると自分のやりたい事がしにくいからじゃないですか? 知りませんけど?」
大間 柾「雑な返答だなオイ!」
女神「転生者による転生者狩りとか、最近そういう過激派まで増えてます。」
女神「お願いです魔王! 闇の象徴である貴方に、増え過ぎた転生者(ひかり)を討伐してほしいのです!」
大間 柾「その理屈はおかしいだろうが!?」
大間 柾「つか、光?が増えたなら別に問題ないだろ? それは人族の問題であって、こっちに問題じゃない!」
大間 柾「第一、責任は神が取れよ!? なんで転生者をそんなに量産したんだ!?」
女神「遊びです」
大間 柾「・・・・・・・・・・・・え?」
女神「人生半ばで死んだ人とかを異世界に転生させてチートスキル与えて、その行く末と結末を見守る神々の遊びです。」
大間 柾「悪趣味すぎる!」
女神「お願いします! 魔王よ! その魔の力は転生者に対抗できる力になり得ます! この世界の命運は貴方にかかっているのです!」
  ──ズドォォン!
女神「みぎゃあああああああああ!?」
  ──どさ
大間 柾「この駄女神が・・・どうしてくれようか?」
角田 花丸「魔王様! 故郷を救う時ですぞ!」
小林 誠司「お前ちょっと一旦黙れ」
  そんなこんなで強制帰還させられた魔王とその一行だった。

次のエピソード:とりあえずやってやる

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