魔獣(脚本)
〇住宅街の道
〇線路沿いの道
男「はぁ、はぁ・・・・・・もう、ここまでくれば大丈夫か?」
男「たく、なんで俺がこんな目に―」
男「な・・・・・・!」
謎の男「くっ、くっ、くっ」
謎の男「おや、おや。どうしたのです?なぜ逃げるのです?」
男「ひぃっ。お、お前」
男「なっ、なんだよ!ちょっとミスっただけじゃねえかぁ!」
謎の男「おや、ちょっとですか」
謎の男「私はあなたの殺人願望を満たすため、完璧なプランを差し上げたのですよ?」
男「そ、それは」
謎の男「なのに失敗したのは、単なるあなたの力不足ではないですか」
男「・・・・・・」
謎の男「はぁ・・・・・・」
謎の男「もういいです。あなたが使えないのはよく分かった」
男「はっ!待て!待ってくれ!」
魔獣「くっ、くっ、くっ」
男「や、やめろ・・・・・・」
男「うっ」
〇大企業のオフィスビル
〇研究施設の廊下
隊員「事件発生!ここから約数キロの街に、魔獣が出現!」
隊員2「被害者一名、すでに死亡していると思われます」
隊員「報告ご苦労。ただちに出撃する」
隊員2「は!」
〇高層階の部屋
???「・・・・・・どうしたの?」
???「また、魔獣が現れたそうですが・・・・・・」
???「そうみたいだね。私もたった今、確認を終えたところだよ」
???「まあ、何体でたところで我々の部隊にすぐ叩かれるだろうからあまり心配することでもないけどね」
???「で、ですが──」
???「ん?」
???「最近、魔獣の出現頻度が異常です。いくら部隊が強くても、いずれ──」
???「大丈夫だよ」
???「それに、私には未来が見えている。もうすぐ、強力な味方が手に入る、というね」
???「そ、それは一体・・・・・・」
???「あはは」
〇店の入口
〇シックなカフェ
──昨日の騒動があった翌朝──
──それと同じ町のちいさな喫茶店──
タクト「ありがとうございました!」
マスター「おお、タクト。今日もご苦労さん!」
タクト「マスターこそ!」
マスター「君は偉いなあ!君ぐらいの年の子だったら、まだ学校で勉強してるのに。働くのつらくないかい?」
タクト「いえいえ。まだこのくらいじゃ、両親は満足してくれませんよ」
マスター「まったく、君の親はよほど立派なんだな。こんな子を育て上げるなんて」
タクト「・・・・・・ええ」
タクト「僕の自慢の両親ですよ!!」
マスター「うむ。さて、そろそろ昼だ。業務はバイトにやらせるから、その間に何か食べてこい」
タクト「わかりました」
マスター「ま、すぐ戻って来いよ」
〇公園通り
喫茶店から出て、昼食を探しに行った
タクト「さて、何食べようかな」
タクト「ん?」
謎の男「はあ、はあ、あいつら・・・・・・」
タクト「あれ?大丈夫ですか?」
謎の男「ああ?なんですか一体」
タクト「なんですか一体、じゃないですよ!すごいけがじゃないですか!」
謎の男「やめなさい!触るな!」
タクト「やっぱり・・・・・・」
タクト「病院に行きましょう。肩かしますから」
タクト(まあ、仕事には遅れるかもだけど、これだったら、マスターも許してくれるよね)
そうして、僕はこの人を近くの病院に案内することにした
「やめなさい!私は──」
「大人しくついてきてください!」
怪しい男「・・・・・・」
〇SHIBUYA109
──ブーン!!──
隊員「追跡中の魔獣を感知しました」
隊員「これよりその方角に向かいます」
???「ごくろう」
???「魔獣め、待っていろよ」
〇総合病院
──病院──
〇病院の診察室
なんとか病院に着いた
医者「はい!治療おわり!」
タクト「どうですか?」
医者「うん。確かに傷は深いけど、ちゃんと処方された薬を飲んで、安静にしてくれたら問題ないよ」
タクト「よかったー」
謎の男「・・・・・・」
〇病院の廊下
タクト「よかったですね!」
謎の男「・・・・・・あなたは」
タクト「ん?」
謎の男「あなたはなぜ、こんなことを?」
謎の男「お互いを見知っているわけでもない、ましてやさっき会ったばかりの──」
タクト「え?そりゃ、目の前に苦しんでる人がいたら、助けますよ」
謎の男「なに?」
タクト「不幸な人をほったらかしにしておくって、なんか、嫌じゃないですか」
タクト「あなたみたいな変わった人でも、つらいときはみんなつらい」
タクト「僕も、けっこうつらい時期があったから。そういう人見ると、おせっかいでも、体が動いちゃうんですよね!!」
謎の男「はあ」
タクト「僕は、困ってる人の力になれたらなって、いっつもそう思ってるんです」
謎の男「・・・・・・」
謎の男「・・・・・・」
何かが折れる音がした
タクト「ん?どうかしました?」
謎の男「困っている人の力になりたい、ですって?」
謎の男「この偽善者が!!」
タクト「痛っ!」
謎の男「あなたみたいな人間が、一番不愉快だ!」
タクト「へ?」
謎の男「ああ・・・」
魔獣「あの人間どもに殺されかけた屈辱を、今あなたではらしてやる!」
「きゃー、きゃー」
怪物をみた人たちが、一斉に逃げまどいはじめた
〇総合病院
逃げ惑う人々をよけつつ、僕はなんとか病院の外まで怪物を連れ出した
タクト「うわ!」
魔獣「ええい、ちょこまかと!!」
タクト「なんなんだよお前!」
魔獣「私は魔獣。人間の醜い心とその肉体を餌にして生きている生命体です」
タクト「はあ?」
魔獣「そう、この世界には醜い人間があふれています。欲望のためならほかの犠牲をいとわない、みたいなね」
魔獣「私はそういう人間が大好きなのです・・・・・・だが!!」
タクト「くっ」
魔獣「あなたみたいな人間は見ているだけで虫唾が走る」
魔獣「きれいごと、理想論、勝手な持論を布教するようなやつがねえ!」
タクト「うわ!」
魔獣に追い詰められてしまった
魔獣「くっ、くっ、くっ・・・・・・終わりです」
タクト「うっ・・・」
魔獣「哀れで自惚れた偽善者さん?さようなら」
タクト「・・・・・・お父さん、お母さん、助けて」
魔獣「きえー!」
「うわー!」
〇総合病院
──雨が降り出した──
タクト「はあ、はあ、」
魔獣「・・・・・・なに!?」
その時、僕は魔獣の攻撃を素手で受け止めていた
魔獣「な、なぜだ!」
タクト「え?なんだ、これ?」
魔獣「うわー!?」
僕の体は勝手に動き、魔獣を攻撃した
魔獣「あり得ない。ただの人間が私にはむかえるはずがない!!」
タクト「か、体が、言うことを聞かない」
何かに促されるように、僕は右の手のひらを魔獣に向けた
魔獣「待て、何をする!?」
魔獣「う、うわー!!」
・・・・・・
魔獣は消え去った
〇総合病院
あたりは急に静かになった
タクト「・・・・・・」
タクト「僕は、一体・・・」
タクト「え!?」
???「・・・・・・」
???「倒し損ねた魔獣を追ってきたが、まさか別種の魔獣に出会うとはな」
タクト「へ!?」
知らぬ間に自分の体が自分の知らない能力が宿っていたらすごく怖いですよね。
夢や理想なら強い力が欲しいなぁとか思うことはありますが…。
最後のシーンが印象的で、タクトくんは魔獣だったの!?
とびっくりしました。
偽善者でなくて、本当に優しい人はいるんですが、育った環境が大きいかと思います。
タクトくんの謎に興味深いです。
最後の場面を読んで、タクトははじめから人間でなかったのか、もしくはどのタイミングで人間じゃなくなったのかなと疑問がでてきて振り返りました。