自演、乙。(脚本)
〇お化け屋敷
〇お化け屋敷
「今夜のターゲットはココか」
〇書斎
泊名作(とまりめいさく)「ヒィィ!停電!? 酷い天気だな」
泊名作(とまりめいさく)「お手伝いさんも帰ったし、家には私1人」
泊名作(とまりめいさく)「エエッ!? どこかで窓ガラスが割れたのか?」
泊名作(とまりめいさく)「参ったなあ!」
泊名作(とまりめいさく)「今からじゃ業者も来てくれないし、自分で修繕するしか・・・」
泊名作(とまりめいさく)「誰か居るのか!?」
ジ✚エンド「誰かに恨まれる覚えはないか?」
泊名作(とまりめいさく)「暗くてよく視えないが、強盗・・・!?」
泊名作(とまりめいさく)「お、威嚇すのは止せ! 金か?金ならやるから、待ってろ!!」
ジ✚エンド「誰かに恨まれる覚えはないか?」
泊名作(とまりめいさく)「ああ・・・あるよ! 思い当たることだらけに決まっているだろ?」
泊名作(とまりめいさく)「脚本家なんて、人の作品パクッて蹴落としてナンボなんだよ!」
泊名作(とまりめいさく)「パクッた弟子の仕返しか!?」
泊名作(とまりめいさく)「そいつの報酬の2倍・・・いや3倍やるから!」
泊名作(とまりめいさく)「な、落ち着けって・・・同じ人間だ。 話せば分かるよな?」
〇書斎
泊名作「バケモノ!!!!」
ジ✚エンド「同じ人間でも、分かり合えない時もあるよな」
〇血しぶき
ジ✚エンド「ジ✚エンド」
〇書斎
ジ✚エンド「今日のターゲットは脚本家だったのか」
ジ✚エンド「ん?この脚本の表紙は・・・!」
ジ✚エンド「『ママギュ♡』だと!? そんな、まさかッ!!」
ジ✚エンド「俺の昼の仕事の、脚本家だったのかー!!」
〇テレビスタジオ
太陽ゲンキ「みんなあ、オッハヨ~! アクロバットが得意な、体操のおにいさんゲンキだよ!!」
太陽ゲンキ「今日も、ゲンキに負けないゲンゲン☆ゲンキに、みんなで歌って踊ろうねえ〜!」
太陽ゲンキ「いっくよー! ゲンゲン☆ゲンキングダンス!」
〇書斎
ジ✚エンド「マズイ、非常にマズイ!」
ジ✚エンド「この半端な原稿、来月分の脚本だ! とーしよう。俺、来月から無職?」
ジ✚エンド「とりあえず、ゲンキに戻ろう」
説明しよう!
怪人ジ✚エンドは、昼と夜で怪人と人間に入れ替わるが、
スポーツドリンクを飲むことで、意識的に入れ替わることもできるのだ!
〇書斎
〇書斎
太陽ゲンキ「ウウッ。 こうなったら、」
太陽ゲンキ「俺が脚本の続きを書く!」
太陽ゲンキ「俺だって、体操のおにいさんを3年やっているんだ。 大体のパターンは書けるさ!」
こうして俺は自分の職場を守るため、体操のおにいさん兼怪人兼ゴーストライターの茨の道を歩むことになった。
〇テレビスタジオ
アリアおねえさん「みんなあ〜元気ぃ?」
アリアおねえさん「アリアおねえさんも♪」
ソノタ「ソノタも♪」
モロモロ「モロモロも♪」
アリアおねえさん「ゲンゲン☆ゲンキ〜!」
〇おしゃれなリビングダイニング
園児「最近の『ママギュ♡』つまんない」
ママ「ワンパターンすぎるのよね。 毎回同じことばっかりで、再放送観てるみたい」
園児「早く幼稚園行こーよ、ママ」
〇小さい会議室
太陽ゲンキ「『ママギュ♡』の視聴率が、ダダ下がりですか!?」
プロデューサー「このままでは、番組打ち切りも危ういだろう。 覚悟しておいてくれ」
太陽ゲンキ「待ってください、プロデューサー! 俺たち頑張りますよ、諦めないでください」
プロデューサー「君たちが、悪いわけではないんだ。 メインの脚本家が最近、調子が悪くてね」
プロデューサー「長年ウチで書いてもらっていて、プライドの高い大御所だから、誰も文句は言えないんだ」
太陽ゲンキ(俺のせいで、『ママギュ♡』が終わる・・・)
〇黒
俺が怪人になったのは、
体操の名門大学に通っていた頃の話だ。
〇近未来の手術室
太陽ゲンキ「離せ! 足の腱の怪我の手術って聞いていたのに、何なんだここは!?」
ドクターファウスト「それは失礼したね。 改めて提案させてくれ」
ドクターファウスト「我がアークナイツ社は、君の身体能力を高く評価しておる」
ドクターファウスト「足の怪我を完全に治すと同時に、もっとその身体能力を高くする方法があるのだが」
太陽ゲンキ「そ、そんな方法あるのか!」
太陽ゲンキ「今ちょうど、怪我してチームのみんなに遅れをとっているし、」
太陽ゲンキ「やってみようかな・・・」
ドクターファウスト「ヒャヒャ。 その貪欲さ、いいねえ」
ドクターファウスト「では、契約書にサインしてもらおう」
幼い頃からの体操バカだった俺は、安易にドクターの改造計画を受け入れてしまったんだ。
〇近未来の手術室
ジ✚エンド「なっ、何だこの姿形は!!」
ジ✚エンド「しかも、パワーが異常すぎる! これじゃあ、私生活にも影響があるじゃないか!?」
ジ✚エンド「ドクター、テメェ・・・騙したな!」
ドクターファウスト「ウググ・・・首を絞めるのはよせ・・・」
ジ✚エンド「かっ、身体が動かない! 苦しい、息ができなっ・・・」
ドクターファウスト「ふう。 魔法の契約書にサインさせておいて良かったわい」
ドクターファウスト「だが、微調整はしてやろう。 その代わり、秘密結社の依頼も請け負ってもらう」
ドクターファウスト「君の改造は、君の選択なのだからな!」
〇大教室
唯花(ゆいか)「ねえゲンキ、私たち付きあって1年だよ?」
唯花(ゆいか)「そろそろお泊まりさせてくれないの?」
太陽ゲンキ「ゴメン。 夜は無理だよ」
太陽ゲンキ(毎夜、暗殺の仕事があるんだ)
唯花(ゆいか)「まさか、二股かけてる? 私以外の女と夜に会うから、私は駄目ってこと!?」
恋愛をするのは諦めた。
〇廃墟の倉庫
その分、鬱憤を晴らすかのように暗殺をこなした。
中身は人間なのに、姿が変わるとココロまで怪人になったように暗殺に没頭した。
こうやって俺は、葛藤を抱えながらも
自分の境遇を乗り越えてきた
〇黒
だが、今回ばかりは
乗り越えられる気がしない。
それならいっそ──
俺が主人公になる脚本を書いて、
最終回にしよう。
〇荒廃したセンター街
ジ✚エンド「みんなー!オッハヨー! ゲンキ?」
ジ✚エンド「俺はジ✚エンド! 恨まれたヤツは最後、俺の拳がKILLするぜ!」
ジ✚エンド「今日からゲンキおにいさんと日替わりで、ジ✚エンド体操するからよろしくな!」
ジ✚エンド「エーンドエンド、ハッハッハー! まずは、僧帽筋を軽く動かしてから、脊柱起立筋を反らし、腹筋に力を込めてくれ!」
ジ✚エンド「そのまま車にダイビンクボディアタック!」
ジ✚エンド「できたかな? お次は大腿四頭筋に力を入れて〜 ハッハッハー!」
ソノタ「ニャニャ!?」
ジ✚エンド「ソノタにタイキックだ!」
ジ✚エンド「上手に蹴れたかな? 君もジ✚エンド目指して、強くて楽しい怪人になろうぜ!」
〇シックなリビング
園児「今日の『ママギュ♡』スゴく面白い!!」
ママ「た、確かに、意表を突く体操のおにいさんが現れたわね・・・リアルだわ。 ずいぶん制作費ブッ込んできたわね!」
園児「ママ・・・」
園児「僕も、怪人になる! ハッハッハー!!」
ママ「今年のクリスマスのプレゼントはジ✚エンドで決まりね!」
ママ「もうグッズ販売しているかもしれないから、TV局にメールで早めに問い合わせておかなきゃ!」
〇開けた景色の屋上
太陽ゲンキ「昨日はジ✚エンド、今日は俺のアクロバット体操と、趣向を変えてみたけど、」
太陽ゲンキ「『ママギュ♡』はどうなっちゃうのかな・・・」
アリアおねえさん「ゲンキくん、おっつー! 最近の『ママギュ♡』はハードだねえ」
アリアおねえさん「スポドリ飲む?」
太陽ゲンキ「ありがとう。 今はちょっと・・・後で飲むね!」
アリアおねえさん「まさかジ✚エンドにお姫様抱っこされて、ビルの間を空中散歩するなんて、夢にも思わなかったわ」
太陽ゲンキ「ゴメン」
アリアおねえさん「何でゲンキくんが謝るのぉ? 脚本家のせいでしょ!」
アリアおねえさん「私は楽しんでいるよ!」
アリアおねえさん「でも、あのジ✚エンドって何者なのかな? スゴイ筋肉ムキムキだし、人間離れしているというか・・・」
アリアおねえさん「ゲンキくんが連れてきてくれたんだよね?」
太陽ゲンキ「じ、実は俺の大学の先輩なんだ!」
太陽ゲンキ「五輪目差していたアスリートで、本人の意向で名前は言えないけど、聞いたら出てくれるって言うからさ!」
アリアおねえさん「あっ・・・どおりで!」
アリアおねえさん「今度私に、彼を紹介してほしいな。 実は・・・好きになっちゃったんだ♥」
アリアおねえさん「ダメ?」
太陽ゲンキ「えーと・・・」
プロデューサー「良かった、まだ二人とも居たのか! 番組が大変なことになったんだよ!」
太陽ゲンキ「まさか、もう打ち切りですか?」
プロデューサー「その逆なんだ! 君が連れて来たジ✚エンドが世間でバズったんだ!」
プロデューサー「関連商品や他の局への出演など、問い合わせが殺到していてね」
プロデューサー「サーバーはダウンするわ、電話回線も混乱するわ、嬉しいお祭り騒ぎだ!」
プロデューサー「『ママギュ♡』はリアルタイム視聴率が爆上がりして、朝枠で脅威の40%!」
プロデューサー「もちろん、続行だよ。おめでとう!」
その日から人生が一変した。
〇岩山
ジ✚エンド「誰かに恨まれる覚えはないか?」
ジ✚エンド「ハーハッハ!ジ✚エンド参上!!」
観客「ジ✚エンドさま最高! ライブチケット、当選して良かった!!」
忍者怪人「おのれジ✚エンド! 目にもの見せてくれる」
忍者怪人「素早い!俺の剣を躱すのか」
ジ✚エンド「大腿四頭筋にパワーをチャージ!」
ジ✚エンド「ジ✚エンド☆マッスル・ウェポン!」
忍者怪人「同じ怪人なのに、格差社会!」
〇テレビスタジオ
プロデューサー「お疲れ様、ゲンキ! スポドリ飲む?」
太陽ゲンキ「今は腹いっぱいなんで、後でいただきます!」
太陽ゲンキ(最近、チョコチョコ入れ替わるから、腹がタプンタプンなんだよね)
プロデューサー「ジ✚エンドに伝えてもらいたいんだけど、 『ママギュ♡』30周年の記念回に、キャスト全員で出演してほしいんだよ!」
プロデューサー「みんな忙しいからスケジュール合わせるの大変だろうけど、頼むよ!」
プロデューサー「これから名作先生にも執筆依頼しなきゃならないし、あー忙しい!」
太陽ゲンキ(俺とジ✚エンドが一緒にって・・・無理だよ! どうしたらいいんだ?)
〇黒
これまで俺がやってきた
悪行のしっぺ返しなのか?
俺とジ✚エンドを同時に
出演させる方法
──俺はこれしか思いつかなかった。
〇荒野
アリアおねえさん「レボリューション助けて! ジ✚エンドに攫われたわ!!」
ジ✚エンド「ハーハッハ! アリアおねえさんを筋肉量500kgの、醜い怪人に改造してくれる!!」
怪人レボリューション「お前の悪行はここまでだ! おねえさんを返せ!!」
〇岩山
プロデューサー「どうしたんだ? いつもならジ✚エンドが主役なのに、新しいヒーローが出てくるなんて!」
プロデューサー「まあ、これはこれで新しい展開だから、記念回としては成立するが・・・」
〇荒野
ドクターファウスト「ジ✚エンドめ・・・最後の願いだというから、怪人レボリューションを貸してやったが、どういうつもりだ?」
ジ✚エンド「俺は秘密結社アークナイツの暗殺者! 毎夜、指令された人間たちを秘密裏に処刑してきた!!」
ジ✚エンド「レボリューションよ、お前に俺が倒せるものか!」
怪人レボリューション「小癪な!」
怪人レボリューション「俺だって、お前より先に改造されて強大なパワーを手に入れている!」
怪人レボリューション「同じ怪人なのに、ブレイクしたお前に負けるわけには行かない!」
怪人レボリューション「受けてみろ! 一撃必殺! 『レボリューショナリー⇔フレイム!!』」
怪人レボリューション「ハアアアッ!」
怪人レボリューション「アイツ、避けようともしない!?」
怪人レボリューション「まさかッ・・・」
〇白
ジ✚エンド「グフッ!」
俺とジ✚エンドが同時に出演する方法──
ジ✚エンドが倒された後に、
変身が解けた俺が、現れるという筋書きさ。
太陽ゲンキ(全世界が俺の敵になるだろうな)
俺の最期の輝き
──チビッコたち観てくれたかな。
アリアおねえさん「ゲンキくんがジ✚エンドだったの!?」
太陽ゲンキ(ああ、これで全て終わった・・・ もう、疲れたから眠らせてくれ・・・)
アリアおねえさん「最ッ高なんだけど!? 早く言ってくれたら良かったのにィ♥」
太陽ゲンキ「ん? 周りの反応がオカシイぞ」
怪人レボリューション「あの? アリアおねえさ〜ん、俺が助けたんですけど!?」
〇荒野
ジ✚エンド「誰かに恨まれる覚えはないか?」
なんと、ジ✚エンドの正体が俺だったことで、日本列島を巻き込む大バズりが勃発。
海外にもコアな怪人ファンが増えて、
俺は一気に時の人になった。
ジ✚エンド「ジ✚エンド印のスポドリもよろしくね!」
ドクターファウスト「暗殺より、タレントマネジメントのほうがガッポリ儲かるわい! アークナイツは芸能事務所に変更!!」
アリアおねえさん「憧れのジ✚エンド様と結婚できるなんて、幸せすぎるっ!」
アリアおねえさん「ジ✚エンドもゲンキも大好きだよッ♥」
〇空
諦めなきゃ、どんな人生も
良い終わりを描けるのかもな。
チビッコたちよ、これからも
ジ✚エンドの活躍を応援してくれよな!
自✚エンド
めっちゃ面白かったです!😆✨️✨️
うちで安易につけた怪人名が被ってたのが恐縮ですが💦自演とかかって良いですね!ゲンキくんが脳みそ筋肉で変に小賢しくないのも魅力的💕
ハッピーなエンディングが爽快でした。
遅れましたが読まさせていただきました!
最初、殺し屋稼業の影のある話だと思いきや話は急転、
見ていて楽しくなる素敵な怪人の話でしたね☺️
予選通過になる納得の面白さでした!おめでとうございます!
『うら○ちお兄さん』風の設定で、よりによって脚本家殺っちゃうという、ぶっ飛びスタートダッシュでそのままゴールインする、突き抜けた内容でした(^_^;)
それにしても脚本家さん、何してターゲットにされたの?