夢と希望のカタマリ

もと

届けなきゃ、この思い(脚本)

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〇更衣室
村田「・・・明日の撮影で最後だな」
村田「歴代のどんなレジェンド怪人よりも カッコよく動いて魅せてやるからな?」
村田「頼むぞ、相棒!」
村田「なんて・・・ハハッ、何言ってんだか! また明日な、お疲れ!」
ヒドー(・・・)
ヒドー(村田さん・・・お疲れさまです!)

〇更衣室
ヒドー(・・・嬉しい)
ヒドー(明日、私は爆発する 弾着も目一杯乗せて本当にボロボロにして 退場させるって知ってる)
ヒドー(私を着たまま台本読んでたから 見えちゃったし、打ち合わせも聞いてた 全部知ってる)
ヒドー(・・・覚悟は出来てる もう私のスーツは限界だわ・・・)
ヒドー(スーツを改造しながら四作連続、 四回も村田さんと怪人になれたんだもん ・・・幸せだった)
ヒドー(こんな光栄なコトって無いと思う 姿も色も変わったけど、このヒドーという キャラクターで終わるなら・・・)
ヒドー(・・・村田さんと終われるなら怖くない)
ヒドー(・・・)
ヒドー(・・・うそ)
ヒドー(・・・嘘ね)
ヒドー(・・・怖い、すごく怖い・・・)
ヒドー(・・・捨てられる・・・廃棄って どんな感じなのかな・・・)
ヒドー(・・・)

〇岩山の崖

〇岩山の崖
ソウタ「村田さん、おはようございまーす!」
村田「うっす、おはようございます! ・・・あ、そうか」
ソウタ「そうっすよ、先に顔出し変身っすよ」
村田「怪我すんなよ? 大事な体なんだから」
ソウタ「はい! えっと・・・あの! 一年間、ありがとうございました!」
村田「なになに急じゃん、やめろよ」
ソウタ「いや、村田さんには今言っておかないと 言えなくなりそうなんで!」
村田「ああ、うん」
ソウタ「右も左も分からないし、運動神経も悪くて 敬語も喋れなくて、何も出来なかった僕を 見捨てないでくれて・・・」
ソウタ「ありがとうございました! 僕、村田さんのこと一生忘れません! ありがとうございます!」
村田「ああ・・・ ホント最初は酷かったな、ソウタは・・・ でももう次のドラマ撮ってるんだろ?」
村田「俺は何も・・・全部ソウタの努力の結果と 実力なんだから頑張れよ?」
ソウタ「はい!」
村田「まあ、俺の事じゃなくて・・・ ブルーとヒドーを忘れないでやって欲しい」
ソウタ「はい、それはもちろん!」
村田「一度ヒーローになった役者は死ぬまで ヒーローだ」
村田「大人にも子供にも、 今見てる子供達がいつか大人になった時も カッコいいヒーローで在り続けろ」
ソウタ「はい!」
村田「ヒドーという宿敵を倒し、自分の未来を 自分で切り開いたブルーで在り続けるんだ」
ソウタ「はい!」
村田「俺も、ソウタとなら悔いは無いよ」
ソウタ「え?」
村田「俺はスーツアクターを引退する」
ヒドー(村田さん?!)
ソウタ「え?! なんで、だってまだ・・・ なんでですか?!」
村田「体力の限界ってヤツかな それに今回のブルーとヒドーの話は 最後にふさわしい、本当に良かった」
村田「ソウタも良かった、最高の宿敵だった だから本当に悔いは無いんだよ」
ソウタ「・・・村田さん・・・限界なんて・・・ 限界なんて! 突破する為にあるんすよ!」
村田「ハハッ、やっぱりそういう感じか、 ソウタは良いね、本当に・・・うん まあ、スーツアクターは限界だ」
村田「だけどアクションが出来る俳優としては ・・・まだやれる」
ヒドー(・・・そういう事なのね!)
ソウタ「という事は? どういう事っすか?」
村田「俳優としてはソウタの後輩になるんだよ でもな? 俺はハリウッド狙ってるから そこんとこヨロシク」
ソウタ「ああ! そういう事! ・・・え、ガチじゃないっすか!」
村田「そういう事! ああ、まだ他に言うなよ? イイ感じの時に俺が自分で言うからさ」
ソウタ「すげー! マジで頑張って下さい! 超応援します!」
村田「おう、ありがとさん ああレッドが来てるぞ、行くか!」
ソウタ「はい!」
ヒドー(・・・村田さん・・・)

〇岩山の崖
ヒドー(私と引退する事を選んでくれた・・・)
ヒドー(・・・怖がってる場合じゃない!)
ヒドー(私も頑張るわ! 最高の花道を、最高の最後を・・・)
ヒドー(・・・)
ヒドー(・・・伝えたい・・・)
ヒドー(村田さんのお陰で私の怪人人生が 本当に幸せだったこと・・・)
ヒドー(村田さんのアクションが気持ち良くて 何度もひとつになれたこと)
ヒドー(時間があれば私の内側のお手入れをして とても大切にされたこと)
ヒドー(・・・とにかく全部幸せだったこと!)
ヒドー(楽しかったこと!)
ヒドー(辛かったこと!)
ヒドー(水落ちも一緒に乗り越えたこと!)
ヒドー(全部、伝えてから消えたい!)
ヒドー「村田さん!」

〇岩山の崖
村田「・・・ん? なんだ今の?」
ヒドー「村田さん大変! 私、喋れるわ!」
村田「・・・」
ヒドー「どうしましょう?!」
村田「・・・頭の中に声が響く・・・ 酸欠? 熱中症か?」
ヒドー「違うんです! 私、ヒドーです!」
村田「・・・ん?」
ヒドー「あ、脱ぎます? その方が話しやすいかもです!」
ヒドー「村田さん、初めまして! 初めてじゃありませんが初めまして! 私、ヒドーです!」
村田「はい?」
ヒドー「あの、願いが叶ったといいますか 村田さんとお話ししたいって思ったら こうなっちゃいました!」
村田「はい?」
ヒドー「四作連続で私を着て下さって、 本当にありがとうございました! とても幸せでした!」
ワルー「村田さーん、どうしたんですか? 人、呼びます?」
村田「いや、大丈夫だ、ちょっと休憩というか 暑くて、大丈夫だから・・・うん・・・」
ワルー「そうですか、もう集合しますよ? 着るの手伝いますか?」
村田「いや、すぐ行く、本当に大丈夫だから」
ワルー「了解でーす」
村田「・・・」
村田「・・・ヒドーなのか? 本当に?」
ヒドー「はい!」
村田「お、おう・・・」
ヒドー「あの、もしよろしければ・・・少しだけ お時間いいですか? 伝えたい事が沢山あるんです!」
村田「お、おう・・・いやもう集合が・・・」
村田「・・・いや、ゆっくりしなければ! 時間を稼ごう、考えなければ!」
ヒドー「え? あ、ありがとうございます! あの、なんとなくですが・・・」
ヒドー「私、ヒドーの技を使えそうなんです!」
村田「はい?」
ヒドー「光よ、影よ、時よ! 止まれ回れ、回れよ止まれ! 地獄のロンド! タイムリッパーインザスカイ!」
村田「おお?!」

〇幻想2
ヒドー「やっぱり出来ました! そんな予感がしてたんですよ!」
村田「・・・設定上、ここはヒドーの深層心理、心の中という事だったか?」
ヒドー「はい! 後からCGでゴリゴリの闇を 作るって言ってましたね!」
村田「ヒドーは・・・君の心はこんなに穏やかで 優しい人なのか?」
ヒドー「えっと、穏やかで優しいかは分かりません ヒトかどうかも・・・ あ、人ではないです、怪人ですね」
ヒドー「でも、私は一番最初に造形された時、 ハンコウ・タンドックとして生まれてから 心はひとつです」
ヒドー「次の作品で別の怪人の姿になっても ずっと心は私のままでした」
ヒドー「・・・ずっと村田さんと一緒にいました」
ヒドー「だから・・・あの、多分というか、 これしか考えられないんですけど・・・」
ヒドー「村田さんが私に命を吹き込んで くれたんだと思います!」
村田「俺が?」
ヒドー「はい! いつも大切に扱ってくれて、 カッコよく動いてくれて、 本当に嬉しかったです!」
ヒドー「それだけじゃありません! 階段百段落ちの時にはドキドキしたし、 子供を誘拐した時は楽しかったです!」
ヒドー「私に感情と命を与えてくれたのは 村田さんだと思います! いえ、間違いなく村田さんなんです!」
ヒドー「だから、最後まで一緒に居られるのは とても嬉しくて幸せです」
ヒドー「それに村田さんの・・・新しい旅立ちに 私を選んで下さって・・・」
村田「・・・全部聞いていたのか ヒドー、君は本当に一緒に・・・ ずっとそこに居たんだな」
ヒドー「はい! 私、カッコよく散ります! 今まで本当にありがとうござ・・・」
村田「待ってくれ!」
ヒドー「はい?」
村田「ダメだ、ヒドーは処ぶ・・・引退する予定だ」
ヒドー「はい、仕方ありません! 最後にお話できて良かったです! 覚悟は出来ました!」
村田「ダメだ! そんなのダメに決まってる!」
ヒドー「・・・え?」
村田「君は今、生きているじゃないか!」
ヒドー「・・・」
村田「ヒドー、みんなに話そう!」
ヒドー「そんなこと! 私なんかが存在しちゃったら皆さんを 困らせるだけだと思います・・・」
村田「何を言ってるんだ!」
村田「みんな喜ぶに決まってるだろ!」
ヒドー「・・・喜ぶ?」
村田「ああ、もちろんだ! 俺達が夢や希望を信じなくてどうする? 何の為のヒーローだ? 怪人なんだ?」
村田「こんな凄い事が目の前で起きてるんだ! それを信じず認めないヤツがいたら 俺がブッ飛ばしてやる!」
村田「だから俺に任せてくれ! 特撮に関わっている人間がこの状況を 信じないはずが無いだろ!」
ヒドー「・・・」
ヒドー「・・・はい!」
村田「よし!」
村田「・・・」
村田「・・・処分や廃棄なんて聞かせてしまって 怖かっただろう? ごめんな? だからもう泣かないでくれ?」
村田「ヒドーはヒドーらしく生きられる様に みんなで考えよう!」
ヒドー「・・・はい!」

〇岩山の崖
ソウタ「スゴくないっすか?」
ワルー「スゴいっすよね」
ソウタ「ワクワクがドキドキでムネっす」
ワルー「心臓がモゲそうっす」
ソウタ「早く喋ってみたい・・・」
ワルー「あ、必殺技きますよ?」
ワルー「・・・」
ワルー「ヤバ」
ソウタ「スゴくスゴい・・・本物のヒドーだ!」
ワルー「これ、ガチ世界征服できません?」
ソウタ「カッコいい・・・!」
ワルー「まあカッコいいですけどね・・・」
村田「よしよし、良かった!」
ヒドー「村田さん!」
村田「どうした?!」
ヒドー「契約書です! 会社が私と契約してくれるそうです!」
村田「ハハッ! なんだ、そうだったか! よし! そういう会社だと思ってた!」
ヒドー「ありがとうございます! 私、怪人のままで居て良いみたいです! 捨てられません!」
村田「良かったな! ここに居る全員、やっぱり 夢と希望の塊なんだよ!」
ヒドー「・・・村田さんは?」
村田「・・・うん」
ヒドー「私は村田さんと一緒に居たいです!」
ヒドー「アクションも村田さんが私の中に 入ってくれてたから出来てたんです! 私だけじゃ何も出来ません!」
村田「やってみないと分からないじゃないか?」
ヒドー「分かります! 私はあんなキレイに落下できません! カッコよく水しぶきも上げられません!」
ヒドー「回し蹴りだって、ほら、私だけじゃ ここまでしか脚が上がりません! だから・・・はい?」
村田「・・・いや、笑ってごめん 怪人が一生懸命な姿って良いなと思って」
ヒドー「ええ?」
村田「見た目が怖くて、視界も悪いし不器用、 触ったらアチコチ刺さるし、可動域も狭い」
村田「でも怪人が頑張る回は妙に人気がある」
ヒドー「えっと・・・」
村田「だから事故の無い様に基礎から アクションを覚えないと危ないよな? なんたって子供が見てるんだから」
ヒドー「・・・」
ヒドー「・・・あ! はい! お願いします!」
村田「俺は厳しいよ?」
ヒドー「付いていきます! 師匠!」
村田「ついでに俺もアクション指導で契約して 貰っておこうかな」
ヒドー「私も一緒にお願いしに行きます!」
村田「今ヒドーにお願いなんて言われちゃったら 偉い人も断れないだろうよ」
ヒドー「それを狙ってます!」
村田「悪役らしい良い立ち回りだな!」
ヒドー「ありがとうございます!」

〇岩山の崖
  はい消火!
  ヒドーちゃん大丈夫?!
ヒドー「はい! 治しました!」
ヒドー「私、頑丈! すっごく生きてる!」

〇幻想2
ヒドー「・・・後はヒーローが素顔で名乗って ボスを倒すわ」
ヒドー「でも私は生きてて良いのね・・・」
ヒドー「村田さんと、みんなと一緒に次の作品に 行ける! なんか巨大化でも何でも出来る気がする!」
ヒドー「いっそ目指すわ、特撮作品全出演を! 私、怪人頑張る!」
  おわり

コメント

  • ヒドーさんかわいいですね!
    村田さんもいい人で…だからこそ心惹かれるんでしょうね。
    ずっと大切にしていたら魂が宿るとはいいますが、こんなかたちで幸せになれるなんて。
    心温まりました。

  • 怪人がテーマなだけに、つい悲劇的なストーリーを思い描いてしまいがちですが、このストーリーは心が温まります。
    作品に作者の優しい人柄がにじみ出ているようでした。

  • 読めば読むほどとヒドーが愛おしくなりますね!物には心が宿ることがある、でもこんな健気で可愛い心が宿るとは。廃棄による悲しい別れを予感していただけに、嬉しい展開とラストでした!

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