期限:推しをキャスティングするか、推しが恋愛ネタで炎上するまで

はるたみあお

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〇田舎の一人部屋
長谷部香奈(田舎だからってイベント通いもしない、 CDも積まない、祭壇も作らないような細客(微課金ファン)で、)
長谷部香奈(ファンレターも出さない、コメントもしない)
長谷部香奈(ファンとして茅ヶ崎さんの為に何もしてないくせに、『ファン様』としての文句だけは一人前で)
長谷部香奈(本当に我ながら嫌な奴だな・・・)
長谷部香奈(今やらなきゃこの先もきっと言い訳ばかり。『嫌な奴』のまま変われない、から)
  香奈はベッドから起き上がり、暗闇の中でも見えているように寝室の床に散らばった紙類や服を踏むことなく歩いていく。

〇散らかった居間
  スリープ状態を解除したパソコンの光に照らされ、香奈は眩しそうに目を細める。
長谷部香奈(出来るだけ〆切の近いもので、純文学よりはライトノベル系のもの・・・・・・)
  暗闇の中でカーソルを滑らせる。
  次々と流れていくコンクール情報────その中の一つで香奈は手を止めた。
長谷部香奈「これ、良さそう」
長谷部香奈「〆切は・・・明日、いや、もう0時過ぎてるから今日の23:59?」
長谷部香奈「流石にぎりぎりすぎ・・・・・・」
長谷部香奈「いや、1000から3000文字だから大体原稿用紙2~8枚・・・・・・」
長谷部香奈「それなら、いける・・・?」
長谷部香奈「後は、サイトの傾向を見たり指定アプリに慣れたりする時間だけあれば・・・・・・」
  顎に手を添えてぶつぶつと口に出しては、投稿されている作品を次々クリックしていく。

〇散らかった居間
長谷部香奈「はあ~駄目だ、分からん!」
  夜の濃さが段々と薄まってくるのが分かる。
  香奈は大きく伸びをして体をばきばきと鳴らした。
長谷部香奈「メイン層がランキングを見ると10代~20代男性の気もするけど、コンテストによっては女性の様な気もする・・・・・・」
長谷部香奈「茅ヶ崎さんの良さを活かす為に女性向けに絞ったとしても、年齢層が20代前半までなのかアラサーなのかで違うし・・・・・・」
長谷部香奈「完全に煮詰まった・・・」
長谷部香奈「・・・・・・流石に徹夜登校はまずいから仮眠とるか」
長谷部香奈「・・・ちょっとだけ・・・・・・」

〇散らかった居間
長谷部香奈「ただいまー・・・」
長谷部香奈「テスト期間とはいえ、こんなに明るいうちに帰ってきてしまった・・・謎の背徳感・・・」
長谷部香奈「今年初めての年休使用・・・・・・」
長谷部香奈「よし!やるか。 目標は人の多そうな時間のアップ!」

〇散らかった居間
長谷部香奈「う、全然思い通りに表現出来ない・・・」
長谷部香奈(読点が付けられないのも三点リーダーじゃないのも気になる・・・・・・じゃなくて!)
長谷部香奈(また言い訳して自分に逃げ道作ってどうするの)
長谷部香奈(間とか場面を上手く表現出来ないのは私の実力不足!)
  両手で頬を軽く叩き気合いを入れ直すと、パソコンの右下に表示された時間に目をやる。
長谷部香奈「まずい、後6時間・・・」
長谷部香奈「シュウのキャラソンループ再生でゾーンに入れば、いける・・・!」

〇散らかった居間
長谷部香奈「ペンネームとアイコンは・・・昔使ってたので良いか」
長谷部香奈「SNS──やってた方が良いんだろうけど、それは追々」
長谷部香奈「『いつか推しに一目会いたい駆け出しライター』」
長谷部香奈「『コメントでもらったお題、リクエストに沿ったショートショートを書きます』」
長谷部香奈「『期限:推しをキャスティングするか、推しが恋愛ネタで炎上するまで』」
  項目を埋め『公開』を選択するも、決定にカーソルを合わせて香奈はためらいを見せた。
長谷部香奈(完成、だけどこれを押したら世界に公開されてしまう・・・〆切過ぎたら非公開も編集も出来ないリスク・・・)
長谷部香奈(批判コメばっかりついたり、逆にコメントが0件のままだったりしたらどうしよう)
長谷部香奈(緊張してきた・・・胃が痛い・・・)
脳内のもう一人の自分「茅ヶ崎さんにファンレター出すのとどっちが楽よ?」
長谷部香奈「茅ヶ崎さんに手紙送るとか緊張で吐く・・・・・・」
脳内のもう一人の自分「本人談だとファンレターは全部読んでるし、年1回お礼状がくるらしいよ? その方が『ワンチャン』あるかもよ?」
長谷部香奈「気持ち悪いことを書く自信しかないから、茅ヶ崎さんに手紙を送る方が1億倍無理です・・・」
脳内のもう一人の自分「『もらったお題で(茅ヶ崎さんが声を当てそうなキャラを登場させつつ)ショートショートを書く』時点でわりと気持ち悪いけどね?」
長谷部香奈「うっ、」
脳内のもう一人の自分「『推しを(自作品で)キャスティングするか、推しが恋愛ネタで炎上するまで』書き続けるとか、」
脳内のもう一人の自分「千夜一夜物語と見せ掛けてクソ重ラブレター」
長谷部香奈「う・・・・・・」
長谷部香奈「ご、ご本人様に直接送らないので見逃してください・・・」
脳内のもう一人の自分「ほら、もう心は決まってるんでしょ」
脳内のもう一人の自分「なら、どうにでもなれ!」
長谷部香奈「──あ、押しちゃった・・・・・・」

〇黒
  ────つづく

次のエピソード:秘密(1)

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