秘密(1)(脚本)
〇散らかった居間
数日後────
香奈は険しい顔でパソコンを眺めていた。
長谷部香奈「は~・・・他のコンクールは予選落ち」
長谷部香奈「コメントもなし・・・」
長谷部香奈「そう上手くはいかないよね」
長谷部香奈「・・・・・・まあ、やめないけど」
長谷部香奈「・・・・・・・・・・・・」
長谷部香奈「じゃあ、次、こんな作品はどう?」
香奈の指がキーボードの上をすべる。
長谷部香奈「テーマ:『秘密』」
長谷部香奈「ジャンル:恋愛、ホラー」
長谷部香奈「タイトル:かんぺきなこいびと」
長谷部香奈「一言:あなたは『真実』に気付くことが出来ますか?」
〇川に架かる橋
タケル(定時で上がったし、準備もバッチリ)
タケル(ヒナちゃん喜ぶだろうなぁ・・・)
〇玄関内
タケル「ただいまー」
靴箱の上にプレゼントを一旦置く。
ヒナ「おかえりターくん!」
勢い良く飛び込んでくるヒナちゃんの体を抱き締める。
薄くて折れてしまいそうな体は、幸福感と美味しそうな匂いを運んでくる。
タケル「・・・・・・今日はシチュー?」
ヒナ「うん、そうだよ!」
ヒナ「今温めてるから、早く着替えて来て?」
タケル「ありがとう、ヒナちゃん」
タケル「じゃあ、先にこれを」
ヒナ「!」
ヒナ「わあ~!」
ヒナ「大きい!かわいい!」
ヒナ「ありがとうターくん!」
〇ダイニング
ヒナ「はい、ミーちゃん」
テーブルの上には料理が入った皿と空の皿が並べられている。
ヒナ「おかわりもありますよ」
タケル「はは、ヒナちゃん気に入ってる?」
ヒナ「だって、ターくんいつも遅くて寂しいんだもん」
頬をふくらませて拗ねる顔も可愛らしい。
ヒナ「・・・うっ、けほけほ・・・・・・」
タケル「ヒナちゃん大丈夫?」
左手でヒナちゃんの背中を擦ってやる。
タケル「・・・いつも寂しくさせてごめんな」
落ち着く様にゆっくりゆっくり撫でる。
ヒナ「ううん・・・ヒナがこんなだから・・・」
ヒナ「ターくんはいつもヒナのために頑張ってくれてるんだもんね」
ヒナ「ワガママ言ってごめんなさい」
タケル「我が儘なんかじゃないよ」
タケル「俺はヒナちゃんに沢山好きでいてもらえて嬉しいよ」
ヒナ「・・・ターくん・・・」
ヒナ「好き!」
〇ダイニング
ヒナ「今日はターくんの好きなシチューだよ」
ヒナ「本のレシピにね、『秘密のかくし味』入れたの!」
ヒナ「ごちそうさまの時に答え合わせしよ!」
タケル「隠し味?なんだろう・・・」
タケル「いただきます!」
ヒナ「はい、召し上がれ」
ヒナ「・・・ど?おいしい・・・?」
タケル「・・・うん!美味しいよ」
ヒナ「よかったー!」
ヒナ「ヒナとターくんの”思い出のメニュー”だもんね」
〇アパートの台所
タケル「ひ、ヒナちゃん!煙出てる!」
ヒナ「んー?」
〇アパートの台所
タケル「ひ、ヒナちゃん!切る時は手元見て!」
ヒナ「んー?」
〇アパートの台所
タケル「ひ、ヒナちゃん!全部入れたらしょっぱいから!」
ヒナ「んー?」
〇ダイニング
タケル(本当に、色々あったなぁ・・・)
タケル「あ、そういえばこれ」
タケル「いつもありがとう、ヒナちゃん」
ヒナ「プレゼント?開けて良い?」
タケル「うん、開けてみて」
ヒナ「あっ、本だ!」
ヒナ「ありがとうターくん!」
ヒナ「すっごく嬉しい!」
ヒナ「これでまたターくんに新しい料理作れるよ」
タケル「ははっ、楽しみだな」
シチューをまた掬って口に運ぶ。
ゴリッ────
タケル「ん゛・・・・・・!」
ヒナ「ターくん大丈夫?!」
ヒナ「ターくん!!」
〇黒
つづく────