明日の道は誰も知らない

ゆきんこ

第十話 宇宙へ翔べ(脚本)

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〇研究所の中枢
充(あたる)「スゴイ設備ですね!冴木さん」
充(あたる)「この研究所を維持するカネは、どこから支払われているんですか?」
牧野(まきの)「殺人未遂で裁判待ち中の、辞職したばかりの元刑事に心配されることは何もありませんね」
牧野(まきの)「ココに入れないつもりだったけど、君の元上司に連絡したら、煮るなり焼くなり、好きにして良いと言われたんです」
牧野(まきの)「国から圧力でもかかったのかな?」
充(あたる)「お前・・・冴木じゃないのか?」
牧野(まきの)「君も最先端科学の礎を築きたいですよね?」

〇ダクト内
樹(いつき)「よし、最初に居た部屋だ!」

〇近未来の開発室
樹(いつき)「このカプセルのどれかに・・・」
樹(いつき)「居た! 蒼斗、優心起きろ!!」
樹(いつき)「開かない・・・ このカプセル、どうやったら開くんだよ!」
樹(いつき)「カチ・・・?」
冴木(さえき)「おやまあ。 そんなに早く月に行きたかったの?」
冴木(さえき)「今のは、発射始動スイッチなんだ。 手錠を取るから 君も早くカプセルに入りたまえ♪」
冴木(さえき)「今更、1人でお留守番は嫌だよねえ」
樹(いつき)「!?マジかよ」
冴木(さえき)「カプセルに入ったら、臍に中にあるチューブの先端を差し込みなさい」
冴木(さえき)「それから徐々に、カプセルが羊水に似た成分の水溶液で満たされる。 でも呼吸も出来るし、話もできるよ」
冴木(さえき)「月が見えたら感想を聞かせてくれたまえ。ブラックボックスに録音されるから、呟くくらいでいいよ」

〇地下実験室
樹(いつき)「結局何もできないまま、大人たちの思惑どおりか・・・」
樹(いつき)「うっ、本当に水が上がってきた!」
樹(いつき)「言われたとおりにするしか、ない!」

〇水の中
樹「溺れる・・・」
樹「まだ、死にたくない・・・」
樹「恋もしていないし、1人焼肉だって・・・あと、バイトもしてみたかった・・・」
「・・・樹・・・!」
蒼斗「死にたくないなら、足掻こうぜ!」
優心「そうだよ。諦めるなって!」
樹(いつき)「この声は・・・!」
樹(いつき)「蒼斗と優心!? 目が覚めたのか!」

〇地下の部屋
三郎(さぶろう)「何でお前がここに居るんだよ!」
充(あたる)「お互い様だな。 言いたいことは山ほどあるが、とりあえず協力してココを出ようぜ」
充(あたる)「お前の大好きなトー裏キッズが、 宇宙の塵になる前にな」
三郎(さぶろう)「ッシャー!!!!任せろ!!」

〇謎の部屋の扉

〇研究所の中
冴木(さえき)「何事だい?」
牧野(まきの)「所長、スミマセン! 捕らえたヤクザと刑事が扉を破壊して脱出しました!!」
冴木(さえき)「あの厚み7センチはある金属の扉を?」
冴木(さえき)「もう一度捕まえて、徹底的に筋肉量を調べてみよう♪」
三郎(さぶろう)「残念ながら、もう二度と捕まる気はねえよ」
充(あたる)「捕まるのはお前たちの方だ!」
冴木(さえき)「ん〜。 ヤクザとイカレ刑事に説教されたくないんだよね」
冴木(さえき)「みんな、ヤッちゃって〜」

〇近未来の開発室
名倉(なぐら)「冴木と牧野が居ない今しかない!」
名倉(なぐら)「よし、カプセル解除だ!」
樹(いつき)「プハァ! ん?酸素の方が吸いづらいかも・・・」
蒼斗(あおと)「本当だ・・・まあ直に慣れるさ。 名倉さん、約束を守ってくれてありがとう!」
名倉(なぐら)「私はただ、然るべき人間が有人宇宙旅客機に乗るべきだという考えなだけさ」
名倉(なぐら)「私のような、自然科学に精通した人間がな!」
優心(ゆうしん)「いつの間に話しをつけていたんだよ!?」
樹(いつき)「蒼斗! また俺たちに黙って裏工作しやがって・・・オマエ、最高だな!!」
蒼斗(あおと)「エアーに入る前に、お互いの利益を確認しただけさ。 ヤクザの保証なんか、信用出来ないからな」
名倉(なぐら)「ちゃーんとお前たちの代わりに月からデータを取ってきてやるから、安心して脱出してくれ!」
名倉(なぐら)「冴木たちは、粗暴な客人の相手で忙しいから、今がチャンスだ!」

〇研究施設の廊下(曲がり角)
樹(いつき)「ここを曲がれば、裏口から出られる!」
樹(いつき)「ウッ!」
心(こころ)「アナタたちが明日、月に行くっていうから見送りに来たのに」
心(こころ)「何処に行くつもり? ねえ、優心」
優心(ゆうしん)「母さん・・・」
樹(いつき)「優心のお母さん? 何でここに!?」
心(こころ)「世話の焼ける──出来損ないがッ!!」
  一瞬、何が起こったのか解らなかった。
  優心の細い身体が、マシンガンの勢いで後ろにふっ飛んで・・・
  それで・・・

〇近未来施設の廊下
充(あたる)「何だ今の銃声はッ!?」
三郎(さぶろう)「ボ・・・ボスぅ!?」
三郎(さぶろう)「歌舞伎町のボスが、何故ここに!?」
心(こころ)「うちのじゃじゃ馬にお仕置きをしようと思ってね。冴木所長には悪いけど、被験者を1人減らしてしまったわ」
心(こころ)「三郎、アナタが代わりにロケット乗りなさいよ」
  優心の母さん=歌舞伎町のボスが背中を向けた瞬間、俺は腹の底からつき上がる猛烈な何かを抑えられなくなった。
樹(いつき)「・・・・・・!!」

〇近未来施設の廊下
  ただ、悲しくて・・・悲しくて・・・
  頭の中がゴチャゴチャになって・・・

〇黒
  夢を、見た。
  夢の中で、俺はあのカプセルに入れられた。
  そうして、冴木が耳元で
  『グッド・ラック』と囁いたのを
  ぼんやりと聞いたんだ。

〇宇宙空間
樹(いつき)「え? まだ夢の中なの?」
蒼斗(あおと)「夢じゃないよ。 現実に宇宙に来ちまった」
蒼斗(あおと)「大気圏を抜けるときのGでも起きなかったなんて、ラッキーだったな!」
樹(いつき)「ゆ、優心はどうなったんだ!?」
優心(ゆうしん)「僕も、居るよ」
樹(いつき)「嘘だろ!?」
樹(いつき)「マシンガンで撃たれたのに?」
優心(ゆうしん)「ゴム弾だったんだ。 衝撃は半端無くて、ぶっ飛んだけどね アバラ骨くらいは折れたかもしれない」
優心(ゆうしん)「もしかしたら、僕を被験者にしないための、母さんなりの優しさだったのかもしれないけど」
優心(ゆうしん)「いつもやり方がメチャクチャだから、僕は受け入れられない」
優心(ゆうしん)「それにしても──樹が母さんをボコボコにしてくれて、スッとしたよ」
優心(ゆうしん)「もう僕は、母さんに認められなくても構わない」
優心(ゆうしん)「だって、君たちがそばに居てくれるから」
蒼斗(あおと)「俺も実は、この旅で死ぬつもりだったんだが」
蒼斗(あおと)「お前らを助けるためには、俺も生きていかなきゃならないことに、気がついたよ」
蒼斗(あおと)「オッ、 窓の外見てみろよ」

〇宇宙ステーション
樹(いつき)「う、宇宙ステーション?」
蒼斗(あおと)「それから、こっちは」

〇地球
  蒼斗に促されて反対側の窓の外を見た俺は、よくTVで観たことのある地球をこの目でリアルに見た。

〇宇宙空間
樹(いつき)「スゲー。 もう、死んでもいいかも」
蒼斗(あおと)「まあな。 一応、これは再利用型の有人宇宙旅客機だから、上手く行けば生きて帰れる」
蒼斗(あおと)「もう、どっちでもいいか?」
優心(ゆうしん)「僕は死にたくない! 恋も一人焼肉も、フツーのバイトもしてみたいんだ!」
樹(いつき)「激しく同意するぜ! 俺も、そう思っていたんだ!!」
蒼斗(あおと)「俺ももし、帰れたら──また受験しようかな。 医大」
樹(いつき)「ところで、優心のフツーのバイトって何だよ?」
優心(ゆうしん)「執事カフェ!」
  神さまが本当に居るなら
  どうか、
  俺たちのちっぽけでささやかな願いを聞いてください。

〇落下する隕石
  無事に帰ることができたら──

〇朝日
  見たことの無い明日があるような気がしているんだ。

〇黒
  10年後 東京 新宿

〇入り組んだ路地裏
トー裏キッズ「で、そうハウラが言ってたんだよ」
警察官「おーい、トー裏でも制服は目立つから補導対象だぜ」
警察官「一回着替えてから来てくれ」
トー裏キッズ「なんだよ、サツなんか怖くねーからな!」
トー裏キッズ「待てよ、コイツ・・・!!」
トー裏キッズ「トー裏上がりの樹だ!」
トー裏キッズ「あの、試作ロケットH2000に乗って帰ってきた樹!? 有名人じゃん!」
樹(いつき)「着替えてきてくれれば、たむろするのは咎めないからね」
トー裏キッズ「ハアイ♡ カワイイのに着替えてくるから、また来てね!」
樹(いつき)「ったく、若いコは現金だな」
樹(いつき)「あれ」
優心(ゆうしん)「樹、久しぶりだな! 元気か?」
樹(いつき)「ついこの間、蒼斗が医大の学長になったお祝いして集まったばかりだろ」
優心(ゆうしん)「声が大きいよ」
優心(ゆうしん)「歌舞伎町のボスと刑事の密月がバレたら、困るのは樹だろ?」
樹(いつき)「俺は気にしないよ」
樹(いつき)「何処に居ても、何をやっていても」
樹(いつき)「俺たちは、トー裏上がりで宇宙旅客機の生存者だったココロの友だからよ」
優心(ゆうしん)「そうだね・・・ありがとう」
三郎(さぶろう)「俺も忘れないでくれよな」
樹(いつき)「三郎はロケット乗ってないだろ!」
  相変わらず俺らはトー裏に集まってしまう。
  それが、何の意味があるのか意味はないのか、役に立つのか役に立たないのか
蒼斗(あおと)「みんな、やっぱりココに居たのか! 大変だ!!」
蒼斗(あおと)「俺の病院に、差出人不明の宅配便が届いたんだ。 その中身が──」

〇黒
  1つだけ分かったことは、
  明日の道は、どこかに続くかもしれないってこと
  The End

〇黒
  最後に・・・こちらは、タップライターのレコンさんから頂いたファンアートです😍
  初めてファンアートというものに触れ、どうして良いか分から、ただニヤニヤしていました。
  作品に入れて良いと知った時にはかなりの時間が経過していました・・・。
  ←失礼しました!
  レコンさん、ありがとうございました(*^^*)

コメント

  • 最初から最後まで息もつかせない展開に引き込まれて、私も一気読みしてしまいました!
    3人、特に樹と優心の距離感、表現が難しいですが美しいと感じました。そこに三郎や充、各地のボスも絡んで、二転三転する人間模様や、それぞれの立場が面白かったです。
    ハッピーエンドになって良かったと思える、3人の冒険でした。

  • めっちゃ良い終わり方でした😆
    無事帰還できて良かった👏
    これからもトー裏で色んな物語がありそうですね~🎵道は続く🤗素敵な物語をありがとうございます😀👍

  • 遅くなりましたが、完結お疲れ様でした!
    充さんのクズっぷりに内心爆笑しながら読ませていただきました😂

    トー裏キッズの幸せな明日が垣間見えて良かったなぁと思います👍

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